私的年金として、老後のために加入している人も多い個人型確定拠出年金「iDeCo」。法改定により今年は5月と10月に変更があり、より多くの人が利用しやすくなります。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢先生に5月と10月からの変更点について教えてもらいました。

50歳からでもiDeCoが利用しやすくなる

20225月からiDeCoに加入できる年齢が拡大されました。今まで加入は60歳未満でしたが、5月からは65歳未満まで加入できるようになりました(国民年金に加入している必要あり)。今まで通り60歳まで加入して、60歳から受け取ることも可能です。

 

これにより、60歳以上で働いている人、勤めていなくても国民保険に任意加入している人は、iDeCo65歳まで積立(拠出)ができるようになります。

 

60歳以降も働く人にとっては積立期間が長くなり、60歳以上でもすぐに受け取る必要のない人は、運用期間を5年間長くすることができるようにもなったのです(4月に受け取り開始年齢も75歳まで拡大)。

 

またiDeCoは加入期間が10年に満たない場合、受け取ることができる年齢が60歳以降になる特徴があります。54歳でスタートした人は63歳から受給が可能になりますが、60歳以降は積み立てもできず待つことしかできない形になっていました。

 

しかし、これからは60歳以降も積み立てを続けられるようになります。もし継続して働いていて、お金は先に残したいと考えるのであれば、積み立てを続けることもできる環境になったのです。なお、60歳以降で新規に加入した人は5年を経過すると受給ができるようになります。

 

積立期間が短く、あまり貯まらないのではと思っていた人にとって、門戸が広がった形です。 

メリットとデメリットを踏まえて加入しよう

そもそもiDeCoとは、「個人型確定拠出年金」と呼ばれる、私的年金制度です。そして、公的年金である老齢基礎年金や老齢厚生年金は、原則65歳から受給できます。

 

自営業者や専業主婦や主夫などは老齢基礎年金しか受給できないため、受給金額も会社員や公務員に比べると少なめ。それを補填するという意味でも、私的年金制度が利用できるのです。

年金

加入は任意で、自営業者は月6万8000円、専業主婦は月2万3000円まで拠出する(積み立てる)ことができます。自分で選んだ投資信託や保険商品などで掛金を運用し、老後に向けて資金を増やします。

 

メリットは税制優遇があるため、掛金のすべてが小規模企業共済等掛金控除の対象になること。そのため当年の所得税と翌年の住民税が減税されます。また運用で得られた利益は非課税、老後に受け取る際も退職所得控除(一括受け取り)、公的年金等控除(分割受け取り)の対象となり、税制優遇が受けられるのです。

 

しかしデメリットもあります。まずiDeCoは給付金受け取り年齢の60歳までは、積み立てたお金を引き出すことができません。さらに口座開設のための初期費用と、口座管理の手数料が毎月かかります。同じ手数料がかかるのであれば、できるだけ多くの金額を預けたいと考える人も。そうすると続けるハードルも上がってしまいます。

 

またつみたてNISAに比べて取り扱い商品が多く、選ぶ商品によって損益が大きく左右されます。これから始める人はiDeCoのガイドサイト「個人型確定拠出年金ナビ」などで、各社の手数料や商品内容などを事前に調べると良いでしょう。

10月からさらに対象者が広がる

ここまで自営業者や専業主婦の話をしてきましたが、iDeCoは会社員や公務員も加入することができます。勤務先の年金制度に応じて月1万2000円〜2万3000円の掛金で加入が可能です。

 

企業のなかには、企業年金と呼ばれる年金制度を導入しているところもあります。目的はiDeCoと同じく公的年金を補完することで、確定給付型(支払われる年金額が一定のルールのもと決まっているもの)と確定拠出型の大きく2種類があります。

 

iDeCoは、公務員や確定給付型の年金制度がある会社に勤めている人は月1万2000円、確定拠出年金のみの会社に勤めている人は月2万円、会社に企業年金の制度がない人は月2万3000円の拠出が可能です。

 

2016年の法改正で誰でもiDeCoに加入できると聞き、会社の年金制度を調べたところ、会社の制度が手厚くて加入ができなかったという経験をお持ちの方もいるかもしれません。

 

これは、iDeCoに加入するには、会社が掛けてくれる金額に規約で上限を定めなければいけないというルールがあったことも1つの原因でした。上限を定めなければ、より手厚い金額を企業が従業員のために拠出することができます。そのため規約の定めがない大手企業などでは自分の判断でiDeCoに加入できないことがありました。

 

ただ、上限の定めはないものの、企業が従業員に対して拠出してくれる金額は、勤務年数が長くなると額が増え、若手社員ではまだ金額が多くないというケースもあります。そのため、会社が実際に拠出してくれている金額が上限に達していない場合は、自分でiDeCoに加入して、将来の備えを手厚くできるようになります。

 

この改正が今年の10月なので、2016年頃にiDeCoを検討したけれど加入できなかった、という経験がある人などは、今年の10月以降、再度、確認や検討をされると良いと思います。

 

PROFILE 風呂内亜矢さん

ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子