近年、投資をする若年層が増えています。20224月からの高校の学習指導要領にも家庭科の授業などで、投資について学ぶ必要性が触れられています。子どもも大人も投資について知っておく時代に突入したと言えるかもしれません。初心者でもできる投資の始め方とは?ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢先生にお伺いしました。 

誰でも始めやすいのは「つみたてNISA」

投資と言われても、なにから始めればいいのかわからない人も多いと思います。初心者にもわかりやすい選択肢のひとつとして挙げられるのは「つみたてNISA」です。

 

2018年からスタートしたつみたてNISAは、年間上限40万円まで非課税で投資ができる制度です。さらに投資したお金を最長20年間、非課税で運用することができます。

 

もちろん投資は預貯金とは異なり、景気や物価に合わせて額面が変わります。そのため元本が増えることもあれば、減るというリスクも。つみたてNISAも元本保証はありませんが、20年という長い期間で運用するため、短い運用期間よりはリスクが少なくなると考えられます。

 

なぜならば投資においては足元では上がり下がりを繰り返しながら、長期で見たときには成長を期待する先に対してお金を投じるからです(逆に期待をしていない先の投資商品は買ってはいけない)。待てる期間が長いほど、利益が出るタイミングで売却できる可能性が高まります。

投資

また月100円から積立ができるため、「最初から大きな金額を投資するのは不安…」という人でも安心して始められるのもメリットのひとつです。

 

さらにつみたてNISAで購入する投資信託は、日本にある約6000本の商品から金融庁が定めた「手数料が安い、長期での運用ができる」といった条件を満たした銘柄約200本まで絞られています。そのため投資に明るくない人でも、選びやすくなっています。

老後2000万円問題とコロナ禍で投資人口が増加

そもそもなぜ、若年層から投資が注目され始めたのでしょうか?

 

事の発端は、2019年に話題となった「老後2000万円問題」だと考えられます。これにより、老後までに2000万円を準備しなければという認識が広まり、対策の必要性を考え始めた人が増えました。ただ、こうした老後資金不足については、従来から繰り返し指摘はされていました。日々が忙しいと必要性はわかっていてもなかなか取り組めないという人も多かったかと思います。

 

そのような状況のなかで、2020年からコロナ禍がスタート。おうち時間が増えたことで時間に余裕ができた人たちが、真剣に投資について実行に移し始めたのです。実際に2021年はつみたてNISAの加入者が、例年よりも増加しました。

 

また、若年層が気軽に始められる取扱手数料が少額なオンライン証券の拡大や、少額から資産運用が始められるスマホアプリの増加もその一因と言われています。

すぐに使わないお金を投資にまわす

では今後、私たちは老後のためにどのように投資していくのが良いのでしょうか?

 

金融商品には下記の3つの要素があります。

 

  • 流動性…現金化や引き出しなど換金しやすいもの
  • 安全性定期預金や、債券など元本や利子の支払いが確実なもの
  • 収益性株式や投資信託のようにリスクはあるが収益も期待できるもの

 

金融商品ごとに得意、不得意な部分があるため、目的に合わせた商品を選ぶことが大切です。そのため手元のお金をすべて投資するのではなく、使い道を分けて考えることが重要です。

 

  1. 1. すぐに使う生活費36か月分(子どもがいる場合1年分)のお金
  2. 2. 10年間は使わないけれど、10年後確実に進学や自宅購入などで使うお金
  3. 3. 10年以上使わないお金

     

    1は手元に置いておくべきお金で、流動性が高い預貯金などで保有することが向いています。2は安全性が高い商品と相性が良く、財形住宅貯蓄や定期預金、こども保険(学資保険)などの貯蓄機能のある保険なども候補になります。ただ、今は歴史的な低金利の水準で、1の予算と2の予算を明確に分けるのが、やや難しいかもしれません。

     

    そして3にあたる老後資金などは、収益性が高い投資などと相性が良いとされています。つみたてNISA以外にも税制優遇口座(利益に対する税金が非課税になるなどの特徴をもった口座)を利用できる制度があります。年間上限120万円、最長5年間非課税で幅広い株式や投資信託を選択できる「一般NISA」、任意加入の私的年金制度である「iDeCo(個人型確定拠出年金)」などです。

     

    投資と聞くと足りない準備資金を補うものという印象があるかもしれませんが、それは少し違います。投資の結果によっては増えるとは限らず、減ることもあるからです。ただ、すべての性質を得意とする金融商品が存在しないため、長期間使わない可能性がある予算を、流動性や安全性のみに強みがある金融商品で、すべて保有しておくことは不利かもしれません。

     

    投資は、金融商品の得意・不得意を踏まえて、得意とする目的の予算を担当してもらうよう、性格が違う形の商品に換えて保有していく取り組みだと考えると、もう少し肩の力が抜けるかもしれません。

     

    PROFILE 風呂内亜矢さん

    ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
    1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

    取材・文/酒井明子