いま小学校入学前のお子さんを育てているママ・パパは、職場の先輩などから「小学校がいちばんお金がかからない」「子供が小学生のうちが貯めどきだよ」などと聞いたことはありませんか?

 

現在小学生のお子さんがいる人も「今後、中学・高校ではもっと出費が増えるのかな」と気になっているのではないでしょうか。

 

そこで今回は、保育園から大学までどのような出費がどのくらいあるのかを比較し、それぞれの世代のママ・パパの体験談も参考に「小学校はお金がかからない」という説が本当なのかどうかを検証してみました。

 

なお、今回は、義務教育は国公立の小中学校に通うケースで比較しています。私立の小学校受験や中学校受験をする場合は、ときには数百万円単位のお金が必要になってくるため、一概に「貯めどき」とは言えません。

保育園・幼稚園と小学校の出費を比較すると

現在、保育園に通う0~2歳の子には保育料が必要ですが、2019年からは幼児教育・保育無償化制度によって3〜5歳のすべての子が利用する保育園・認定こども園・幼稚園の利用料が無料になっています。

 

無償化の月額には上限があり、給食費や通園バス・延長保育代などは従来通り必要ですが、それでもかなり負担が軽減されたと感じる人も多いのではないかと思います。

 

一方、小学校には保育料に相当する費用はありませんが、学用品や行事費などは必要です。

 

「年間いくらくらいお金がかかるの?」と気になる人もいるのではないでしょうか。

文部科学省の調査によると、公立小学校での年間学習費はおよそ32万円という結果が出ています。

 

32万円には、校外学習などの行事費や、鍵盤ハーモニカなどの副教材、給食費なども含まれています。

 

これ以外に、学童保育・習い事・スポ少(スポーツ少年団)などに行っていればその費用がかかってきますが、園児時代とくらべて何倍もの負担になることはないと考えて良いでしょう。

小学校と中学校ではどっちがお金がかかる?

公立の小中学校はいずれも義務教育であり、授業料や教科書代は基本的にかかりません。

 

給食も、小学校では100%近く、中学校でも90%前後で実施されており、かかるお金にはあまり差がないといえます。

 

一方、小学校では制服(標準服)があるのは一部にとどまり、毎年のようにサイズが変わる小学生は季節ごとの衣服の買い替え費用がかかります。

 

中学校では基本的には3年間同じ制服を着るので、通学用の洋服代は小学校時代より抑えられるかもしれません。

 

とはいえ、部活のジャージやユニフォーム・道具代については

 

「ひととおり制服やカバンなどを揃えてホッとした入学後に、部活のウェアや道具の購入費で数万円かかったのは痛かったです」(Nさん・中1のママ)

 

という声も。

 

ただ、最初こそ費用がかかりますが、中学校で部活に入るタイミングでスポ少や習い事をやめる(卒業する)子も多いため、月々の出費はあまり変わらないケースも多いでしょう。

 

かわって中学校でグッと重くなるのが学習塾の費用です。

 

公立小学校から公立中学校に入るときには受験はありませんが、高校受験をする場合、多くの子が塾に通うことになり、その費用が増えてきます。

 

また、公立高校の併願校で私立高校に合格した場合、公立の発表まで入学手続きを待ってもらうために、数万円から数十万円の払い込みが必要なこともあります。

 

つまり、中学校では、高校受験関連で小学校時代と比べて数十万~100万円以上のお金がかかる可能性あり、と考えておくと良いですね。

高校では無償化が拡大

全国の中学校のうち90%以上が公立校ですが、高校では私立が26%となり、私立の学校に通う子が増えてきます。

 

文部科学省の調査では、公立高校の教育費が年間約46万円に対して、私立高校では約97万円、私立の第1学年では入学金を加えて約116万円と負担額がもっとも多くなっています。

 

ただ、高校も「高等学校等就学支援金制度」による無償化が進んでおり、2020年からは私立高校にも範囲が広がり、ある程度所得のある世帯でも支援を受けやすくなっています。

 

高校でも中学校と同様、部活に入ればその費用がかかります。

 

現在はコロナの影響で活動を縮小している高校も多いですが、高校では合宿や遠征が増え、交通費や宿泊費で年間数十万円になることも。

 

部活が忙しくてアルバイトできない場合もありますが、校則でバイトが禁止されている高校もあり、そうなるとお小遣いも含めて保護者の負担もかなり大きいものとなります。

大学受験と大学の費用は

そして、お子さんが大学受験する場合には、やはり塾や予備校の費用が多くかかってきます。

 

上記の文部科学省の調査では、高校3年時点での塾の費用は年間で平均20~25万円程度ですが、高校卒業後に1年間予備校に通った場合は年間100~150万円ほどの授業料が必要になります。

 

大学受験では、共通テストが1万8000円(3教科)、2次試験が1万7000円、受験料が1学部につき3~4万円。

 

もし8~10学部を受験したとすると、ざっくり見積もって40万円ほどかかります。

 

また高校と同様、国公立大学志望の場合は、併願校である私立大学に数十万円程度の前納金を納めることがほとんどで、上記の受験料と合わせると50万~100万円近く必要になることも珍しくありません。

 

最後に、大学の4年間の学費をみてみましょう。

 

文系の国公立で年間約60万円、私大で約120万円程度(入学金のぞく)、理系学部ではそこから2~3割ほど高くなります。

 

理工系学部は大学院まで6年間通うことも多いため上記の1.5倍と、高校までと比べ、大学の学費はかなり負担が大きいことが分かります。

 

なお、医・歯・薬学部の学費は大学ごとに異なりますが上記の数倍にも及びます。

 

もちろん、大学に行かなくても自分に合った仕事について活躍している人は大勢います。

 

ただ、大卒以上でないと就職時に受け付けてさえもらえない企業はまだまだ多く、現在未就学児のお子さんが成人する頃にもその条件が一定は残っていると思われます。

 

そのため、本人の意志が固まってくる高校生頃までは、できるだけどのような進路にも対応できるような資金計画を進めておきたいですね。

 

それでも経済的に不安が残る…という場合は奨学金を利用する方法もあります。

 

2022年4月現在、大学の学費に対し、給付型(返済しなくてよい)奨学金の範囲を拡充するという案が出ています。

 

今のところ対象になるのは、世帯年収600万円以下で子供3人以上の世帯および理工農学部など、かなり限定的な内容ですが、既存の奨学金と合わせて情報収集しておきましょう。

 

それとは別に、貸与型(返済が必要な)奨学金も、卒業後すぐではなく一定の年収に達してからでよいという案も検討されています。

 

しかし、いずれも自分たちが対象になるかどうかは不確かなため、「予備校+私立大」など最も出費の多いパターンではいくらになるのかシミュレーションしておくと良いですね。

おわりに

今回は、「小学校が貯めどき!」という説が本当かどうか検証するため、それぞれの年代でかかるお金を比較してみました。

 

「小学校はお金がかからない」という説は、習い事などの有無によっても変わりますが、首都圏などをのぞいて全国的にポピュラーな公立小学校→公立中学というコースであれば、おおむね当たっているのではないかと思います。

 

小学校の時点で教育費がギリギリまたは赤字だと、将来さらに出費がかさむ可能性があるため、できるだけ計画的に予算を組んで余裕を持たせておきたいですね。

文/高谷みえこ

参考/子供の学習費調査:文部科学省 https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/1268091.htm
学校給食実施状況等調査 https://www.mext.go.jp/content/1413836_001_001.pdf
私立学校の振興:文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/main5_a3.htm
高校生等への修学支援:文部科学省 https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/mushouka/index.htm
文部科学省|2020年4月からの「私立高等学校授業料の実質無償化」 https://www.mext.go.jp/content/20200117-mxt_shuugaku01-1418201_1.pdf
令和4年3月30日 教育未来創造会議 | 首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202203/30kyouikumirai.html