大切なメールを見逃してしまったり、迷惑メールなのかどうかを判断するために時間を割いてしまったりと、まさに迷惑千万な迷惑メール。
NTTドコモは今年2月15日〜3月18日、迷惑メールの実例を展示するWebサイト「迷惑メール展」を公開しました。「通販」「クレジットカード・銀行」「携帯キャリア」といったジャンルごとに、巧妙化している迷惑メールの文面と手口、対処法を掲載しています。
今回はITジャーナリストの立場から、迷惑メールの歴史や種類、対処法を紹介します。
最初は広告ツールだった
そもそも、迷惑メールと呼ばれるものはいつ頃からあるのでしょうか。
それはインターネットが一般にも開放された1990年代後半と言われています。PCでネットに繋ぐことが普及するにつれ、広告ツールとして有効だと考えた業者が大量にメールを送りつけるようになりました。
メールは国境もたやすく超えるため、世界中から迷惑メールが送られるように。やがて、一括して大量に送信できるプログラムも開発され、私たちは迷惑メールに悩まされるようになったのです。
迷惑メールは携帯電話にも届くようになりました。携帯電話会社が対策しても迷惑メールが減ることはなく、今では携帯電話会社のメールアドレスを使う人は減ってしまいました。スマホの時代になりましたが、メールが使われ続けている現状では、相変わらず迷惑メールがなくなることはありません。
アドレス流出も迷惑メールが来る原因
迷惑メールが届く原因は、いくつか考えられます。まず、「わかりやすいメールアドレス」であること。メールアドレスの「@」以下に表示されるドメインは、企業名やプロバイダー名で推測できます。「@」以前には任意の文字列を設定しますが、そこでよくある単語や名称を使っていると、迷惑メール業者に予想されてしまうのです。文字列の組み合わせはプログラムで容易に作れるため、総当たりすることも難しくありません。
また、「メールアドレスを登録したサービスや企業からの流出」が原因という場合もあります。大企業が個人情報の流出を起こすと大きなニュースになりますが、小さな企業などからの流出はあちこちで起きていると考えられます。また、メールアドレスを売買する業者もいますので、一度メールアドレスを知られたら、データの一部として世界中に配布されてしまいます。
さらに、「ブログやSNSに公開している」、「ウイルスに感染した」、「怪しいアンケートに記入してしまった」など、様々な原因が考えられます。
複雑化する迷惑メールの種類
当初は広告ツールだった迷惑メールですが、最近の迷惑メールには様々なパターンがあります。
特に注意しなければならない迷惑メールは、「フィッシングメール」と呼ばれる、企業になりすまして個人情報を盗もうとするメールです。
企業を装ってアカウント情報を確認するように述べ、フィッシングサイトへのリンクへ誘導します。フィッシングサイトでは、IDやパスワード、クレジットカード番号などの個人情報を入力させて盗み取ります。
コンビニの決済サービス、交通系ICカード、フリマアプリなど、迷惑メール業者はあらゆる企業を名乗って近づいてきます。利用しているサービスからメールが来ると、本当に企業から来たメールなのか、迷惑メールなのか悩んでしまいますね。
また、ウイルスが添付されたメールが来ることもあります。添付ファイルを開くとウイルスに感染し、遠隔操作で迷惑メールを送る踏み台にさせられたり、PCのデータを盗まれてしまいます。
「マッチングアプリで見ました」と嘘をついてマッチングサイトに登録させようとしたり、海外ブランドを安く売るなどと宣伝してくる迷惑メールもあります。「短期間で高収入!」などの副業に勧誘するメール、「料金が未納です」と請求してくる架空請求メールなど、人の心につけこむような迷惑メールが多く存在します。
迷惑メールを受信しないようにするには
一度迷惑メールが来るようになると、迷惑メールを完全に受け取らないようにすることは難しいのですが、対策を取ることはできます。
PCの場合は、メールソフトやセキュリティソフトのフィルタリング機能を使って迷惑メールをフォルダに分けましょう。メールソフトは、迷惑メールを送ってくるメールアドレスやキーワードを登録することで、目にしないで済むようになります。セキュリティソフトの場合は、企業が最新の迷惑メール情報を得て振り分けてくれるので、管理が楽になります。
また、プロバイダーが迷惑メール対策サービスを提供している場合もあります。受信する前に防いでくれるため、安心です。
どうしても根本的に対策したい場合は、メールアドレスを新規に作りましょう。長めのメールアドレスにしたり、知り合いとのやり取りだけに絞っていれば、時間の問題かもしれませんが、迷惑メールを防ぐことができます。
迷惑メールは開封せずに削除を
そして、迷惑メールを受け取ってしまったら、注意しておきたいポイントが2つあります。
・メールに記載されたURLに移動しない
フィッシング詐欺によくある手口なのですが、メールに記載されたフィッシングサイトから個人情報を盗まれることがあります。もし自分が利用しているサービスを名乗っていて、詐欺かどうか確認したい場合は、メールからはアクセスせず、サービスの公式サイトを検索してログインしましょう。そこに緊急のお知らせがなければ、フィッシングメールだと判断できます。
・添付ファイルを開かない
添付ファイルがそれらしいファイル名だったとしても、決して開いてはいけません。PCにウイルスがインストールされてしまいます。PCのセキュリティ機能やセキュリティソフトを導入すると、ウイルスを受信した段階で削除してくれることもあるので、一度検討してみてください。
迷惑メールには、日本語が怪しい、送信しているメールアドレスがやたら長い、緊急などの文言でせかしてくるといった特徴がありますが、見破ることが難しいケースもあります。
迷惑メールを受け取っただけでは何も起きないので、焦ることはありません。決してメールを開いたり、返信したりせず、そのまま削除するようにしましょう。
文/鈴木朋子