現在日本の小学校に通う8歳のSayaちゃんは、ロールス・ロイス社が主催するデザインコンペで日本人最優秀賞、世界大会優秀賞をわずか6歳で受賞。そのアートは美しい色彩と大胆な構図で世界から注目されています。

 

2歳〜5歳半まで暮らしていたロンドンから帰国後、小学1年生になると同時にコロナが流行。入学式や授業もなく、たっぷりあったステイホームの時間を利用して絵を描き始め、Instagramにアップしたことから一気にそのアートに注目が集まりました。

 

絵画教室に通った経験もないというSayaちゃん。どのような育児をすればSayaちゃんのような子に育つのでしょう?お母さまのMayaさんにお話を伺いました。

早いうちから「多様性」に触れておくことが大切

── Mayaさんが子育てをするうえで大事にしていることはありますか?

 

Mayaさん:

男の子だから乗り物が好き、女の子はスカートを履く、日本人は黒い髪、肌は肌色のクレヨンを使う…そんな先入観や固定概念をいっさい植えつけないようにしてきました。

 

2歳〜5歳半まで住んでいたロンドンでは、LGBTQの友人やいろいろな肌・髪・目の色をした友人がいたことで、それを当たり前のことだと認識し、美しいことだと直感で学べたことは大きかったですね。あとは子どもたちに口を出しすぎないことです。

ロンドン在住時代のSayaちゃん(右から2番目)

── 小さい頃から自然と多様性に触れられることは大きいですね。お子さんたちへの意識的な声かけや、惜しみなく与えているものはありますか?

 

Mayaさん:

子どもたちが「頑張ったよ!」と報告してくれるときは超オーバーリアクションを取りながら褒めるようにしています。椅子から転げ落ちながら「ママより上手になっちゃったね!」と、まるで女優魂を発揮するかのような(笑)。

 

さすがに13歳の反抗期真っただ中の息子には効かないかと思いきや、実は嬉しそう。「よく頑張ったね」「すごいね」と意味合いは同じでも、親が体全体を使ってオーバーに驚く姿はかなりインパクトがあり、子どもたちも楽しんでくれています。

 

あとは惜しみなく「I Love You」を伝え続け、毎日たくさんハグをします。

 

── 楽しそうなご家族の様子が想像できます(笑)。お子さんもそんなママのリアクションが見たいから「次も頑張ろう」という気持ちになるのでしょうね。子育てがうまくいかないと感じたときはどんなふうに乗り越えますか?

 

Mayaさん:

「自分も7歳の頃はこうだった」「思春期だった頃は大人に反発していた」など、自分自身のその当時の記憶や感覚を思い出すようにすると、子どもたちへの許容範囲が広がります。

 

例えば、娘は絵の具がたくさんついている筆を洗ったあとの水が大好き。水を眺めてはかき回し、さらに他の色を混ぜたりしながら楽しんでいます。大人としては早く片づけたいところですが、もし自分が7歳だったらきっと同じことをしてワクワクしていたと思います。

 

絵の具をたくさん手につけてみたり、指で絵を描いてみたり、「汚れるからやめなさい」というのは簡単なことですし、正論ですが、子どもだからこそワクワクすること、時間を費やしたいことがあるはず。私も子どもの頃にやっていたのでわかります。

 

狭い秘密基地のようなところで読書をしたり、工作をしたり、スープに浮かぶ油を箸で突いて広がり方をずーっと見ていたり…。118cmの目線には私と違う世界が広がっていて、好奇心と想像力が無限に広がっています。

 

親の物差しだけで子どもを見ていると理解できないことも多いですが、そういうときは心のタイムマシンに乗って時間をさかのぼる。すると「まあいいか」という便利な言葉で、寛容に慣れる気がするんです。

やりたいことは決して限定しない!

── Sayaちゃんにこれから挑戦してほしいことなどはありますか?

 

Mayaさん:

周りから「次のコンクールの入賞を期待している」という声をいただきますが、もうあまり出品しないと思います。コンクールのほとんどは原画が返却されないことが多いんです。私や娘にとって大切な原画を失うくらいなら名誉はいらない、と思っていて。

 

「絵を買いたい」と言っていただけることもありますが、売ることはありません。Sayaはひとりのアーティストであると同時に私の小さな娘。子どもの絵はプライスレスです。それよりはSayaの作品をデジタル化してより多くの人に知ってもらいたいですし、昔から続けているチャリティに全面的に協力したいと考えています。

 

また本人は、今はお絵かきより、なわとびを頑張りたいそう。それはそれで良いと思います。8歳の女の子が当たり前にやりたいことを制限させることなく、あくまでも楽しく、趣味の延長として、これからも自由なお絵描きを見守り続けたいと思います。

 

 

才能にあふれた8歳の少女は、絵だけに限らず、今やりたいことを全力で打ち込んでいるようでした。

 

親が「これをやらせてみよう」と躍起になるより、子どもがやりたいことをとことん見守るほうが、子どもは意外な才能を開花させるのかもしれません。

取材・文/望月琴海 画像提供/Mayaさん