大人が抱えやすい対人関係の解決策について、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は「両親が共働き子育てを理解してくれない」と悩むワーママの相談にお答えします。

【Q】世代による価値観の違い理解してほしい…

子どもを1歳から保育園に預けて、フルタイムで働いています。私の両親が子育てしていた時代は専業主婦層も多く、「3歳までは親が面倒を見るべき」「保育園ではなく幼稚園に預けて育てるべき」という考えが主流だったようです。母も義母も専業主婦で子育てしていたそうで…。その考えが両家の親に根強く残っていて、フルタイムで働きながら子育てする私たち夫婦を応援してくれません。

 

ことあるごとに父母や義父母は、「子どもを預けてまで働く必要があるの?」と言ってきます。子どもが病気になったり、子どもが反抗的な態度を見せたりすると、「毎日働かないで、できるだけママが面倒見たほうがいいんじゃない?」「フルタイムじゃなくてパートタイムにはできないの?」などと自分たちの価値観を押しつけてきます。

 

あまり言われると、さすがに私にも子育てに対する不安な気持ちが湧いてきてしまいます。なんとか理解して、応援してもらうにはどうしたらよいでしょうか?

3歳児神話には逆質問で意味を聞く

私たちの親は、いわゆる3歳児神話が色濃く残っている世代ですよね。今ではたくさんの研究から3歳児神話は否定されていますが、「私は専業主婦できちんと育てた」という自負から、なかなか受け入れられないシニア世代も多いようです。

 

そもそも私たちの親世代の子育ての環境は、今とは状況が大きく違っていました。地域や家族といった親以外の大人たちが近くにいましたし、専業主婦でもやっていける経済状況でもありました。今とはこうした大前提がそもそも異なります。

 

身近に助けてくれる大人がいない。そんな状況で子どもと2人きりで過ごしていても、親も子も心の健康には良くないこともあります。だから保育園を頼ることは双方にとって必要なのです。

嫁姑

両親がもし「フルタイムではなくパートにして、子どもともっといてあげたら?」と言ってきたら、このように質問してみてはいかがでしょうか。

 

「パートにしたら子どもにどんな変化があるかな?」

「お母さんたちの時代と私たちの時代、どう違うと思う?」

「核家族と大家族って、子育てでどんな違いがあると思う?」

 

この方法が使えるのは、会話(対話)ができる関係性が構築されていることが前提になります。その場合であっても、トゲのないよう、家族会議のつもりで穏やかに聞くことがポイントです。義父母との距離感によっては直球すぎるかもしれませんので、夫が一緒にいる場で夫から質問してもらうとよいでしょう。

カウンセリングの手法を応用してみる

でも現実は聞く耳を持ってくれない人も多いかもしれません。「私の頃は大家族だったけど、それはそれで大変だったのよ〜」という会話になっていきがちです。

 

そこでおすすめしたいのが紙に書き出す方法です。これは心理学のカウンセリングの手法で、「損益分析」と言います。

 

  1. 1. コピー用紙などの紙を4分割する

2. 紙の上半分にフルタイムで働き子育てするメリット/デメリットを箇条書きで書く

3. 紙の下半分に専業主婦で子育てするメリット/デメリットを箇条書きで書く

4. 特に重要なところに赤線を引く

損益分析

必ずしも両親の目の前で書く必要はありません。書いた紙を前に話し合います。または一緒に考えながらみんなの意見を書き出すのもいいでしょう。書いた紙をさりげなくテーブルに置いておくだけでもいいかもしれません。

難しい問題は書き出すことで「悩みやすく」

こうして頭のなかで考えていることを、具体的な言葉にすることは、相手に思いを伝えることにもなりますし、自分の考えを整理することにもつながります。書き出すと問題が少し客観視できるので、前に進めることもあるかもしれません。

 

この問題に限らず、夫婦の問題、子どもとの問題など、もやもやしていることがあったら、書き出してみることをおすすめします。ぼんやりしていたものがはっきり見えて、ある意味、「悩みやすく」なりますよ。

 

PROFILE 八木経弥さん 

八木経弥先生
やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子