春の旬である、たけのこ。そこで、余談です。「たけのこといえば思い浮かぶお菓子は?」と聞かれたら、ほぼすべての人が答えるのが「たけのこの里」ではないでしょうか。たけのこの里の兄弟的存在である「きのこの山」との論争は、発売から43年を迎える今もなお、SNSなどで話題となっています。どっちが人気で何が違うの?株式会社 明治の広報ご担当・日髙さんにお話を聞きました。

きのたけ論争、勃発!?

たけのこの里を語るときに外せないのが、兄弟的存在であるきのこの山です。この兄弟関係は、発売当時以来ずっといいライバル関係を築いていたといいます。が…。両商品の人気に伴い、巷でも「私はきのこ派!」「私はたけのこ派!」という声がちらほら聞こえはじめました。そして、明治に「総選挙を行ってほしい!」といった声が届いたといいます。SNSがそこまでまだ盛んになっていなかった当時に反響がダイレクトに伝わったというのは、ある意味すごい。

 

そこで、きのこ党とたけのこ党が人気を競うきのこ・たけのこ総選挙キャンペーン、通称「きのたけ総選挙」の第1回目が2001年に実施されました。その後、きのこの山・たけのこの里にまつわる他のキャンペーンがいろいろと開催されましたが、「もう一度『きのたけ総選挙』を!」というリクエストが強く、2018年に第2回目、2019年に第3回目が開催されました。SNSの普及に伴い、第2回目以降は投票数は格段に増えたそうです。

総選挙の結果は…たけのこの里が2勝1敗

2001年の結果は、きのこが約45万票で、たけのこが約55万票。45%対55%でたけのこの里が勝利をおさめました。

 

2018年の結果は、「きのこ党」「たけのこ党」に加え、どっちも推すという「どっちも党」を追加。僅差でたけのこの里が勝利をおさめました。

 

2019年の結果は、「きのこの山を巻き返そう!」ということで、自身もきのこ派という松本潤さんが巻き返し企画をした効果もあり、きのこの山が勝利をおさめました。

 

たけのこの里がやや優勢ですが、ほぼ変わらないともいえる二者の人気。戦いはまだまだ続きそうです…!

社内でも人気はまっぷたつ!

その人気は、社内でもほぼ二分されるとか。明治の役員陣の間でも、見事にキレイに分かれるそうです。そしてこの日の取材でも、広報の日髙さんとライターである私はたけのこ派、カメラマンはきのこ派。やっぱり、この比率なんですね…!

2020年には、都道府県別の調査を実施

その翌年の2020年には、少し違ったアプローチのキャンペーンをやろうということになり、きのこ派orたけのこ派をはじめ、ユニークな設問が満載のアンケートを実施しました。そのアンケートを都道府県別に集計し、参加した数を各都道府県の人口比率で相対的に算出。このときの結果も、圧倒的にたけのこ派の都道府県が多かったのですが、福島県だけが、きのこ派の勝利をおさめたそうです。

実は、使っているチョコが違う!

ザクザククラッカーのきのこの山と、ホロホロクッキーのたけのこの里。違う個性をもつ二者ですが、実はこのクラッカーとクッキーに合わせて使っているチョコレートも違うのだとか。

 

パッケージの裏に記載されている通り、たけのこの里は、カカオ香るミルクチョコレートとまろやかミルクチョコレートの組み合わせで2層になっています。

 

一方できのこの山もカカオ香るミルクチョコレートとまろやかミルクチョコレートの組み合わせ。ですが、チョコレートの配合が微妙に異なるそうです。そして驚きなのは、チョコレートの産地も異なるとのこと。これも、それぞれのクッキーとクラッカーに合わせて考えられたものだそうです。ここまで細かくおいしさを追求しているなんて…ニクイ!

カロリーが高いのはきのこの山

クッキーのボリュームからたけのこの里のほう満腹感がある?と思いきや、実はきのこの山のほうがチョコレートの量が多いぶんカロリーが高いのだとか。含有量も、きのこの山が74グラムで、たけのこの里が70グラムときのこの山のほうがややボリューミーとなっています。

価格や流通販路は同じ

近くのコンビニや、いつもいくスーパー。どこに行っても絶対に売っているといっても過言ではない、私たちの味方、たけのこの里ときのこの山。たけのこの里のほうが売り上げが多いぶん生産量は多いですが、価格や流通販路は同じだそう。さらに両者ともステーショナリーや雑貨などのグッズも販売されており、これも自分の派閥を買う傾向があるため、たけのこの里が若干人気だそうです。

アメリカではきのこの山が人気!

きのこの山は、「CHOCOROOMS」という名前でアメリカでも売っています。一時はたけのこの里も売っていたのですが、いまは廃盤に。ここには裏話があり、「たけのこ」という食材自体が、アメリカだとなじみがないことにたけのこの里の人気があまり伸びない理由があったようです。


ネーミングをたけのこを思わせる「CHOCOBAMBOO」とするのではなく、「CHOCOCONES」とするなどして奮闘しましたが…。アメリカではきのこの山が圧倒的な人気だったそうです。日本とは異なる文化の違いが、面白いですね。

現在販売されているCHOCOROOMSは、小袋タイプ、スタンディングパウチタイプ、マルチパックタイプの3種類となっています。日本で販売されている箱版はアメリカでは馴染みが薄く、終了したそうです。ですが、アジア圏には日本のパッケージにまま輸出されていますよ。

きのこ派はたけのこの里を食べない!?

人気を二分するお菓子ですが、統計を取ると「きのこの山推し」の人は「きのこの山しか食べない」という傾向にあるのだとか。一方で、「たけのこの里推し」の人は「たまにきのこの山を食べる」という現象があるそう。ここからわかることは、きのこ派の強いきのこ愛。「確かに感じられるチョコレートの感覚がお好みなんでしょうね」と日髙さん。

若い人はきのこ派?

インスタグラムでタグ検索をすると、若干きのこの山のタグの方が多くヒットします。「たけのこの里はデビュー当時からの固定ファンが多いのかもしれません。あの時代はたけのこの里のようにリーズナブルなのにリッチな味わいのお菓子がまだ珍しかったですからね。現代はいろいろなお菓子があります。だからこそたけのこの里のファンのほうが若干年配なのかも?」

 

取材中は、「きのこの山はゲームしながらつまめるから若い人に人気なのかも?」という仮説も出たり。こんな予測を楽しく会話できるって、やっぱりたけのこの里ときのこの山は、いいライバル関係であり、いい兄弟なんです。

「第4回目の総選挙の予定はまだないのですが、またやってみたいという話は社内でもちょこちょこと出ています。総選挙だけでなく今後もいろいろな楽しい企画を考えていく予定なので、楽しみにしていただけるとうれしいです」

 

たけのこの里、きのこの山、どちらもが愛すべき存在だからこそ起こる「きのたけ論争」。ひとつのコミュニケーションのフックとして、これからもSNSやリアルの場で話題となることでしょう。

取材・文/松崎愛香 写真/田尻陽子