4歳の息子がいるパート勤務のななさん(46歳)。夫(37歳)は海外赴任の中、自分の母親(76歳)と同居することに。大人になってから、改めて自分の親と一緒に暮らすメリットとデメリット。同居生活で良好な関係を築くために心がけていることなどを聞きました。
年相応の物忘れをする実母を見て不安に
2021年8月から実母と同居を始めたななさん。きっかけは、実母がひとり暮らしをする話が出たことでした。若い頃に離婚した実母。自営業を営んでおり、これまでは飲食店兼住居で暮らしていました。
それが、高齢を理由にお店をたたむことになり、アパートでのひとり暮らしを検討していました。
しかし、これまではお店の切り盛りでお客さんもいて賑やかに過ごしていたなか、完全にひとりで暮らすとなると、ななさんには一抹の不安が…。
「母は元気で自立していますが、年相応の物忘れがありました。ガスの消し忘れなど、大丈夫かな?と気になるところも…。
その半年前から夫が5年間の海外赴任に。私は4歳の息子とのふたり暮らしを始め、ワンオペ育児の責任の重さとしんどさを感じていました」
最初は冗談で「部屋が空いているから、来てもいいよ」と言っていましたが、離れて暮らす兄も心配して同居を勧めるように。
夫とも相談し、ひとまず海外赴任中は同居することになりました。
実母との同居生活で身に染みたありがたみ
実母、息子と3世代同居を始めたななさん。一緒に暮らすと家事分担ができるため、とても楽になりました。
「母はもともと料理上手。最初はもう料理はしたくないと言っていましたが、息子の習い事のある日は夕食を作ってくれます。
私は仕事帰りの遅い時間に食事の準備をする必要がなくなり、とても助かっています」
料理があまり得意ではないななさんに対し、実母は肉も魚もバランスよく使って調理。
しかも、子どもの味覚に合わせず、自分が食べたいものをおいしく作ります。おかげで息子も少しずつ大人向けの食事に慣れていくように。
「たとえば母は、アクセントをつけるため、サンドイッチのパンにマスタードを塗り、ツナマヨにオニオンスライスを入れます。子どもには刺激が強いかと思いきや、意外にも息子もよく食べるんですね。
また、息子は魚嫌いだと思いこんでいましたが、母が作る魚料理は喜びます。おかげで好き嫌いが減りました」
お風呂掃除、洗濯の大半はななさんが担当。でも、実母は手の空いているときは洗濯物を干したり、サッと畳んでくれて助かるそう。
「ストレスも減りました。これまでは必ず息子を連れて行動しなくてはいけませんでしたが、母と息子でお留守番ができるように。
息子も出かけたくもないのに無理に私の行動に合わせる必要がなくなり、家族にとってもよかったと思います」
実母だから“生活でもめる”ポイントもわかる
もともと仲のいい親子だったななさんと実母。一緒に暮らし始めても、基本的にはストレスはありません。とはいえ、同居開始時は気を遣う部分も少なくありませんでした。
「最初は母の目を意識しましたね。ふだんはサボりがちなところを、“きちんと洗い物や片づけをしなくちゃ”と、いい子モードに。
そんな気遣いに疲れて、ひとりになりたいと思ったときもあります。でも、だんだん私のダラけっぷりもバレてきています」
同居当初は食事も一緒にしていました。しかし、起床時間も違うので、朝食は各自で用意。昼食は一緒のときもあればお互いが適当に済ますなど、少しずつ同居生活のペースをつかめるように。
ときにはモメることも。以前、ななさんが慣れないズボン作りに挑戦したことがありました。
自分なりに調べて段取りを決めていたにも関わらず、裁縫が得意な実母が頼んでもいないのに、あれこれアドバイスをしてきて、疲れてしまったそう。
「長い付き合いなので、母の言い方がときどききつくなることも、意見を押しつけてくる場合もあるのも理解しています。
性格をわかったうえで同居しているし、お互い平和主義ではあるので、ケンカになることはそれほどありません」
生活に“口を出さない”ことが同居生活の秘けつ
一般的に、実の親子が大人になってから同居すると遠慮がないため、より険悪な関係になるケースもあるようです。
たとえば、祖父母が孫に対する教育や生活習慣に口を出し、ケンカになる話を耳にすることも…。でも、ななさん親子にはそういった問題は起こっていません。
「母と私はお互いのことに立ち入らないスタンス。“共同生活ができればよし”としています。家事もできることはするし、できなければムリはしなくても問題ありません。
母は私の子育てや教育方針に口出ししないし、私も母の交友関係には干渉しません。母は母、私は私と割りきっています」
教育方針などへの手出しはないものの、実母は孫がダメなことをしたらしっかり叱ってくれるそう。けじめがあり、誠実でおおらかな実母を、ななさんはとても尊敬しています。
とはいえ、血がつながっているからこそ、程よい距離感を保つのは難しい部分でもあります。快適な同居生活を送る秘けつは、どんなところにあるのでしょうか。
「わが家は少し特殊かもしれません。私が小学生の頃、両親が離婚して母子家庭で育ちました。その後、母の新しいパートナーと共同生活したことも。
だから、相手に介入しすぎず暮らすのに慣れている気がします。こうした経験のおかげで、現在の同居生活もスムーズなんだと思います」
ななさん(ブログ https://ameblo.jp/smile888happy/)
文/齋田多恵 写真提供/ななさん
※上記は、ななさん個人の経験談・感想です。