返礼品が魅力のふるさと納税。2020年度の寄付額は過去最高の6725億円にのぼり、ますます注目が集まっています。注意すべきポイントをファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに聞きました。

住民税の控除や返礼品などのメリットが

自分の住んでいる自治体だけではなく、故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度「ふるさと納税」。最近ではポータルサイトが充実したこともあり、寄付したい自治体や欲しい返礼品が探しやすくなり、簡単にふるさと納税を行えるようになりました。

 

ふるさと納税には、「やったほうがいい!」と言われる、次のような理由があります。

 

  • 寄付額の2000円を超えた金額が、その年の所得税から還付、翌年の住民税から控除される(確定申告の場合)。2000円を超えた金額分の税金を先払いしているような形になり、翌年に納める住民税がその分少なくなる。
  • 寄付のお礼として、寄付額の30%以内の返礼品が届くことが多い。年間、実質負担額2000円で、地域の名産品を手軽にもらうことができる。
  • 好きな自治体に寄付ができるため、出身地や縁のある土地に貢献できる。また寄付したお金の使い道を、指定することも。

 

もし1万円の寄付をした場合、今年の所得税の還付、翌年の住民税の控除の対象になるのは8000円です。そのため2000円、損したと思うかもしれません。しかし寄付額(今回は1万円)の30%以内の返礼品が届くため、実質2000円でこの場合は最大3000円分のお礼がもらえるのです。

ふるさと納税

ふるさと納税のポータルサイトが増えたことで、選べる返礼品の数も年々増えています。いちご、松茸など、旬の食べ物は人気が高く、旬の数か月前から募集が始まるので、チェックしてみるといいでしょう。食べ物もいいですが、地域の伝統工芸品に触れる機会としてもおすすめです。

 

また、ふるさと納税を通じて、地震、豪雨、噴火などの被災地復興や動物愛護、歴史的文化財の復興などさまざまな社会問題を解決するお手伝いをすることもできます。はじめから返礼品がない寄付を選ぶことや、返礼品を辞退することも可能です。

還付や控除には上限額があるので注意

ふるさと納税のシステムで、わかるようで意外とわからないのが、「寄付額の2000円を超える部分が、今年の所得税の還付、翌年の住民税の控除になる」という点。もう少し詳しく説明します。

 

例えばある地域に1万円の寄付を行ったとします。その場合、

10000 - 2000円=8000円」

8000円分が控除の対象になります。

 

所得税の税率は所得金額により異なりますが、5%の人の場合、

所得税 8000×5%400

住民税 8000×100%−5%)=7,600(※)

となります。つまり8000円のうち、400円は所得税の還付、残りは住民税からの控除額となるわけです。

 

ただし注意点もあり、「(※)の箇所の金額が住民税(所得割額)の2割まで」などの上限が定められています。それを超えた金額を納税すると、自己負担額が2000円以上になるケースが出てきます。「効率的なふるさと納税は住民税の約2割」と表現されることがあるのはこのためです。

 

上限額を決めるルールは他にもあり、自分で計算するのは大変なので、ふるさと納税ポータルサイトのシミュレーションを使って調べるのがおすすめ。ただ上限額を決める要素となる翌年の住民税額は今年の所得から決まるため、ふるさと納税を行っている今年の時点では確定していません。

 

昨年の所得をベースとした今年の住民税額は給与から天引きされている金額から確認ができ、大ざっぱな目安にはなります。しかし、今年の給与額の増減、住宅ローン、扶養人数、結婚や離婚など生活環境の変化によっても上限額は変わります。ギリギリの金額を狙わず、少なめの寄付にしても十分メリットがあるため、まずは少なめの金額から試してみるのも良いですね。

会社員はワンストップ特例制度が便利

ふるさと納税をすると確定申告が必要です。ただし会社員の場合は、勤め先が年末調整を行い、確定申告をしないことも多いので、「ふるさと納税のために確定申告をするのは面倒」と思う会社員の方は多いと思います。そこで利用したいのがワンストップ特例制度です。

 

ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税で還付されるはずだった金額も含めて、すべて翌年の住民税が減税されるという形で控除を受けることができます。

 

手続きは簡単。寄付する際にワンストップ特例制度を希望し、自治体から届いた書類を、翌年の1月10日までに寄付先の自治体に提出するだけです。これだけで確定申告をしなくても、きちんと住民税の控除が受けられます。

 

ただし、この制度を利用できるのは寄付先が5自治体以内の場合に限ります。6自治体以上になると、自分で確定申告が必要です。また、医療費控除を受ける年など、他の理由で確定申告を行う場合は、会社員であってもワンストップ特例制度は利用できません。

 

専業主婦などで現在収入がなく、納税していない人は、寄付はできますが、還付や控除を受けることができません。その場合は納税をしている配偶者にふるさと納税を利用してもらうといいでしょう。

 

今年の確定申告分からふるさと納税ポータルサイトごとに、寄付金受領証明書をひとつにまとめられる制度がスタートしました。これを利用すれば各自治体から送られてくる紙の寄付金受領証明書がなくても、ポータルサイトで管理・発行をすることが可能に。寄付後の確定申告がより簡単になります。確定申告が必要な人は、利用してみるといいと思います。

 

PROFILE 風呂内亜矢さん

ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子  ※画像はイメージです