いま小さいお子さんを育てているママ・パパの高校時代、社会科の科目といえば、地歴として地理・日本史・世界史、公民として現代社会・倫理・政治経済…だったのではないでしょうか。
実は、高校では今年2022年から新しく「公共」という授業が始まります。
今回は、新科目の「公共」とはどんな内容なのか、なぜ今変更するのか、大学受験への影響は…などについて解説します。
「公共」はいつから始まる?
「公共」は、小・中・高の学習内容をガイドライン化した国の「学習指導要領」に基づき、今年2022年の4月から全国の高校で順次スタートする予定です。
1年生または2年生で必修科目として履修した「公共」の内容をベースに、選択科目の「倫理」または「政治・経済」を学ぶ形になります。
かわりに、公民からは「現代社会」が消えることになります。
なぜ?「公共」ができた背景とこれまでの流れ
時代をさかのぼってみると、「社会科」ができたのは第二次世界大戦後のことでした。
子供たちは歴史や地理などを中心に学習していましたが、時代が進むにつれ、しだいに「知識の詰め込み」「暗記」という側面が強くなってきたため、1980年代には、環境問題やエネルギー問題などの新しい情報も盛り込んだ「現代社会」が生まれました。
しかし現在の新学習指導要領では、アクティブラーニングをベースとした主体的・対話的で深い学びがより求められていて、それを実現するためには、さらに新しいタイプの授業が必要…という理由で今回の科目の見直しが行われたそうです。
もう1つの背景としては、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられ、18歳から選挙権を持つようになったことがあげられます。
現役の高校生が有権者となり投票できる・社会に責任があるということで、これまでのように単に知識を身につけているだけではなく、政治的な事象にも理解と関心を持ち社会の一員として行動できる若者の育成を目的としているそうです。
「公共」はどんな授業内容?
「公共」の授業で扱うテーマは、法・政治・経済の幅広い分野にわたります。
一部の例を挙げてみると…
- 消費者教育
- 金融教育
- 職業選択
- 雇用
- 少子高齢社会
- 社会保障
- 安全保障
- 国際貢献
- 地球環境
- 資源・エネルギー問題
といった、日々のニュースに度々登場するような現代的なテーマが多く含まれています。
「公共」の授業では、上記のような問題について唯一の正解を暗記するという形ではなく、討論・発表・模擬選挙や裁判などを通して、何通りもの答えや幅広い価値観を知り、自分なりの結論を出すのが最終目的です。
教科書に登場する討論のテーマには次のようなものがあります。
- どうすればワーク・ライフ・バランスが実現できるか
- 核兵器の所持や使用について、賛成か反対か
- 安楽死や尊厳死を認めるべきか
大人でも即答できないような内容が多いのではないでしょうか?
小・中学校では、一足早くアクティブ・ラーニングとしてグループで話し合ったり、自分の意見をまとめたり…といった学習方法が定着しつつあります。
そのため、今小学校や中学校に通っているお子さんにとっては、「公共」はそれほど意外な授業形式ではないと感じられるのかもしれません。
これまでのように、教科書の内容を解説、板書する授業ではなくなり、先生は生徒たちの発言を促したり、進行したりといった役割になることも多いでしょう。
また最新の時事問題を取り上げることが増えるため、外部の専門家が講師として入ることが増えるかもしれません。
大学入試ではどんな扱いになるのか
高校の履修科目が変わるということは、当然大学入試の科目にも反映しますよね。
公共は2025(令和7)年度の大学入学共通テストから出題が始まります。
現在公開されているサンプル問題を見ると、やはり知識を問う問題は少なく、長文の資料を読み取って答えを導き出すような「情報処理能力」のテストや、複数の意見や資料を参考に多角的に考察して自分の意見を述べる…といった設問が多いのが特徴です。
共通テストを受けない場合でも、社会で起こるさまざまな問題について幅広い考察力と自分なりの見解を持ち、それを発言できる力は多くの大学、そして企業でも求められていくと予想されるため、これから高校に入学するお子さんは、苦手意識を持たず取り組んでいけると良いですね。
おわりに
いま小学生や中学生のお子さんがいるママ・パパは、新しい高校科目「公共」の内容を知って、
「え、暗記のほうがラクだった」 「どうやって成績をアップさせるのか分からない」
と感じた人もいるかもしれませんね。
しかし、特段難しいことに取り組む必要はなく、ニュースを見たり新聞を読んだりしたときに、社会的に注目が集まっているニュースに対し、
「あなたが国の代表者だったらどうすると思う?」 「わが家でできることって何かあるかな?」
と親子で話し合うことを少しずつやっていくだけでも効果がありそうです。
文/高谷みえこ
参考/文部科学省「高等学校学習指導要領 公民編(平成 30 年告示)解説」 https://www.mext.go.jp/content/20211102-mxt_kyoiku02-100002620_04.pdf