モノの持ち方にはタイプがあり、それぞれのタイプに合った片づけ方があります。「捨てない片づけ」を提案する米田まりなさんに、それぞれのタイプに合わせたアドバイスや、片づけタイプの違うパートナーへの接し方について伺いました。

2つのチェックシートから自分の片づけタイプを知る

── 自分に合った片づけ方、ぜひ知りたいです。

 

米田さん:

人は、「モノへの愛情度」と「整理収納意識」によって、4つの「片づけタイプ」に分けられます。2019年9月に東京都および北関東在住600人に対して行った独自調査をベースに、その調査結果の中央値をボーダーラインとして4タイプに分けています。

 

まずはタイプチェックをしてみましょう。A~Eのなかで自分の気持ちにあてはまるものに〇をつけ、点数を足してそれぞれのチェックシートの合計点を出してください。

モノへの愛情度チェックシートにおいて、合計33点以上だった方はモノへの愛情が強く、33点未満だった方はモノへの愛情が弱いといえます。

 

整理収納意識チェックシートにおいて、合計30点以上だった方は収納力が低く、30点未満だった方は収納力が高いといえます。

 

この2つのチェックシートの結果を掛け合わせて、片づけのタイプを知りましょう。

 

■モノへの愛情度33点以上×整理収納意識30点以上

カリスマ収納職人タイプ

モノへの愛情が強く、整理収納意識が高い人です。愛するモノに囲まれながらもスッキリ暮らしたいと考え、収納テクニックやグッズを駆使しています。それほど散らかることはありませんが、物理的にモノが多いため、片づけに時間がかかり、少しサボると散らかってしまうことが。定期的にモノの量と管理方法を見直してみるといいでしょう。

 

■モノへの愛情度33点以上×整理収納意識30点未満

秘密基地住人タイプ

モノへの愛情が強く、整理収納意識が低い人です。多趣味で好みがはっきりしている人が多く、部屋は好きなモノであふれています。一方、モノが散らかりがちで、探し物がすぐに見つからないことも。片づけが得意ではないので、最初にどんな家を目指したいのかを明確にして、マイペースに片づけを進めるのがいいでしょう。

 

■モノへの愛情度33点未満×整理収納意識30点以上

充足生活者タイプ

モノへの愛情が弱く、整理収納意識が高い人です。モノを持つ基準は「使うか使わないか」で、掃除がしやすい機能的な部屋で暮らしています。モノを捨てることに迷いがなく、捨てる片づけに向いています。片づけられない人に対して「非効率」と思ってしまうこともあるので、自分のテリトリー以外への口出しは気をつけましょう。

 

■モノへの愛情度33点未満×整理収納意識30点未満

ゴミ館仙人タイプ

モノへの愛情が弱く、整理収納意識が低い人です。何がどこにあるかわからず、今住んでいる部屋自体が嫌いです。片づけは苦手ですが、モノへの愛情がないので、一気にモノを捨てることに抵抗はありません。そのため、本気で片づければ短期間で見違えるように変わることができます。まずは部屋のなかのゴミを捨てて、モノへの愛を取り戻しましょう。

片づけタイプは時期によって変わることも

── 私はもう少しで「秘密基地住人」になれそうな「ゴミ館仙人」でした。

 

米田さん:

片づけタイプは、時期やライフステージによっても変わります。

 

「ゴミ館仙人」がゴミを捨てたらモノへの愛情がわいて、「秘密基地住人」になるケースは多いです。

 

あとは、「カリスマ収納職人」に子どもができて管理しきれなくなり、「秘密基地住人」っぽくなるのもよくあるパターンですね。

夜中にモノを捨ててしまう充足生活者夫

── 夫に趣味のモノが多く、片づかないという妻側の声もよく聞きます。

 

米田さん:

充足生活者妻が、秘密基地住人夫のモノを「スッキリさせなきゃ!」と使命感を持ってしまうとトラブルになりやすいですね。

 

この場合は、区画整理をしてお互いの陣地を明確にするのがおすすめです。

 

共有部分にはモノを置かないと決めて、相手の陣地に何が置いてあっても文句は言わない。相手がズボラなタイプなら、一時置き用にカゴなどを用意してあげるのも優しさですね。

 

「充足生活者」と「秘密基地住人」は水と油ではありますが、妻側が充足生活者である分には、なんだかんだうまくまわるケースが多いです。

 

それよりも最近私が気になっているのが、夫が「充足生活者」で、妻が「秘密基地住人」や「ゴミ館仙人」のケースです。

 

── と言うと?

 

米田さん:

充足生活者である夫が、片づかない部屋にイライラしたり、帰宅した途端「なんでこんなに散らかっているんだ!」と妻や子どもを責めて、ケンカになることが珍しくないんです。

 

夜中に夫が勝手にモノを捨ててしまい、トラブルになった話も聞いています。

 

なかには、「片づけられないのはロジカルに思考できないから」と相手を責め、モラハラにつながるケースもあります。

 

このパターンの解決策は、片づける曜日を決めて、お互いに共有すること。

 

たとえば水曜と土曜しか片づけないと決めたら、金曜に床に靴下が落ちていても相手を責めない。

 

夫のプライベートスペースを確保することも効果的です。

 

── 「片づけられない=ダメ」と決めつけないことも大事ですね。

 

米田さん:

「ロジカルに判断ができないからモノをためこんでいるんだ」などと相手を責める人がいますが、モノへの愛が強いこととロジカルであることは話が別です。

 

部屋はスッキリしているけれど、ちょっとでもモノがあると気になって集中できないとか、掃除は苦手だけれど、モノにも人にも愛があふれているというのは、その人の特性であって、どちらがいいとは言えません。

 

お互いの特性を知って、歩み寄ることが大切だと思います。

 

 

自分の特性を知ることが、片づけの第一歩。どのタイプにも、いいところと弱いところがあります。パートナーとタイプが違う人は、お互いの特性を理解して、歩み寄るきっかけにできるといいですね。

 

PROFILE 米田まりなさん

整理収納アドバイザー1級。モノを愛してやまない人に向けた「捨てない片づけ」を考案。著書に「集中できないのは部屋のせい(PHP研究所)」「捨てない片づけ(ディスカバー21)」ほか。東京大学経済学部を卒業後、総合商社を経て不動産ディベロッパーで都市開発を行う。一橋大学大学院にて経営学修士取得。

取材・文/林優子 イラスト/はり