コピー機を使う社員

最近、部下の反抗的な言動に悩む上司が増えています。典型的な3つのパターンに対して、さまざまな企業の労務相談を受けてきた社労士の石川弘子さんは「毎日ストレス。これって逆パワハラかも、と悩む前に対策を実行しましょう」と話します。

嘘をつく部下とは「第三者」を同席させる

もっともやっかいなタイプへの対処法から紹介しましょう。それは「根も葉もないウソ」を捏造してくるタイプです。

 

例えば、突然みんなの前で「上司からパワハラされた」「セクハラされた」などと部下が言い出すケース。

 

この場合、自分を守ることを一番に考え、まずその部下とは距離を置きましょう。1対1で関わらないことです。

 

一般的には、部下を叱るときは1対1が良いとされています。しかし、このタイプには逆効果になりかねません。注意するときも第三者に同席してもらいましょう。

 

誰かにやり取りを聞かれている状態では、ウソをついてもすぐにばれます。部下も簡単にウソをつけなくなるはずです。

 

部下とのやりとりを記録するのも有効です。録音するのも手ですが、気が引けるなら、メモするだけでも大丈夫です。

 

「何月何日、部下とこの仕事についてこんな話をした。部下にこんな指示を出した」など、具体的な内容を書き記してください

 

もし部下がウソをついても、「それは違う」と提示できるようにしておきましょう。

 

大きな問題が起こる前に、自身の上司に相談するのも有効です。ウソをつく部下がいて困っていると、話しておきましょう。

 

パワハラ、セクハラ、間違った仕事の指示など、会社での立場が危うくなるようなウソを言われても、「それは違う」と主張しやすくなります。

不当に仕事を拒むタイプには毅然とした対応を

仕事を頼んでも「忙しい」とつねに断ってくるタイプ。上司にとって大きな負担とストレスとなるでしょう。

 

このような場合、 断られてもすぐに引き下がらないでください。

 

上司が部下に仕事を頼めず、ひとりで抱え込み、追い詰められるのはおかしな状況です。毅然とした態度で再度、仕事を頼みましょう。

 

「この仕事はこういう理由でやらないといけない、いつまでにやる必要がある」というように、冷静に状況を説明します。

 

それでもムリだと言うなら、「今、どんな仕事を抱えているのか」聞いてみましょう。正当な理由なく仕事を断っているのなら、部下はそれ以上なにも言えなくなるはずです。

 

もし、「この仕事があるからできない」ということでしたら、どちらを優先すべきかは上司が決めてください。もちろん、場合によっては他の部下に仕事を回したほうが良いこともあるでしょう。

 

重要なのは、正当な理由がないのに「忙しい」とさえ言えば仕事を断れる、と部下に思われないようにすることです。

 

あの上司は気が弱くて何も言わないから、仕事を断りやすい。そう思われないようにするのが大事です。

 

ただし、仕事に影響のないことを頼んで断られても、その場合は争わないことです。例えば、テレワークでの1オン1の打合せで、「顔出しをしたくない」と部下が言ったときです。

 

目的は顔出しではなく、コミュニケーションを取ること。それなら、カメラオフでコミュニケーションをとればいいだけの話です。まともにやりあってストレスを溜める必要はありません。

シニア部下にはマニュアルで対応するのも手

3例目は、増加傾向にあるシニア社員に対する方法です。

 

彼らは上司の言うことを聞かず、自分たちのやり方に固執する場合があります 。それにより、上司はストレスを抱えて悩んでしまうケースが多発しています。

 

シニア社員が上司の指示したことを「やらない」のは、「できない」ことが原因かもしれません。

 

例えば、コピー機の使い方ひとつとっても、若い人はすぐに覚えられます。しかし、年をとると難しいケースもあります。

 

そのつど若い人に聞いていると、煙たがられるようになります。ベテラン社員ほどプライドが傷つけられ、しんどくなっていきます。

 

それならと、聞かなくてもできる古い、自分たちのやり方でやってしまうわけです。

 

このような場合、面倒くさがらずに丁寧にやり方を教えましょう。そのうえで、何度も聞かなくても済むように、誰でもわかるマニュアルを用意するのが効果的です。

 

また、シニア社員に限らず、年上の部下には「尊敬」を忘れないことも大事です。

 

会社での立場が上だからといって、自分のほうが偉いわけではありません。部下のほうが知識や経験は豊富であることを認めて頼るのです。

 

「どうしたら良いと思いますか?」「知恵を貸してください」と声をかけてみてください。

 

年下の上司から頼られて悪い気はしないはずです。良好な人間関係さえ築ければ、力強い味方となってくれるでしょう。

 

部下の反抗的な言動に精神的に追いつめられ、どうしたらいいかわからない。そのような場合は、自分の上司や専門家に相談して解決していく必要があります。

 

一方、ちょっとしたストレスなら捉え方次第でやわらぐケースもあります。神経質にならず、冷静に対処し、個性として受け入れるのも大事です。

監修/石川弘子 取材・構成/前田さよ