必要以上に関わってくる過干渉な人たち。職場やママ友との人間関係で、やることなすこと口を出されたり、管理されたり…と困っていませんか?

 

相手に悪気がない場合でも、受け手側からすれば精神的に疲れてしまうことも…。対処法について、産業医・精神科医として活躍する井上智介先生に聞きました。

過干渉な人の心理とは?

そもそも、人を管理したり、指示をしたりするタイプは、心配性な人が多いですが、職場やママ友などの関係性によって、これらの性質は少し異なってきます。

 

たとえば職場においては、相手が自分の指示通りに動くか、失敗しないかどうかが気になり、確認ばかりしてしまうからこそ、過干渉になりがち。

 

上司や先輩など自分より上の立場にいる人に多く、心配性に加えて、相手のことを信頼できないという心理も大きく影響しています。

 

一方、子育てに関して過干渉な人は、自分の子育てに自信がないタイプが多い傾向があります。

 

親しいママ友をはじめ、周囲に対して干渉することで、自分の子育ての不安を解消したり、承認欲求を満たしたりしているケースは少なくありません。

 

子育てには正解がない。だからこそ、自分のやり方が間違っていないか確認したい、ひいては自分が誰かの役に立っていることを実感したいという心理が働きやすいのです。

「心配性タイプ」には「信頼関係」を築いてかわす

職場でよくいる過干渉な人は、仕事を確実に進められるという点では良い側面もあります。

 

一方で、度重なる確認に巻き込まれて精神的に疲弊してしまうと、元も子もありません。

細かな相談と報告が安心につながる

そもそも相手は、任せた仕事に対し、心配な気持ちで過干渉な行動をしています。対処法としては、細かく言わなくても大丈夫、と安心してもらえるような行動がポイントになります。

 

過干渉な人に信頼してもらうためには、「普段から早いタイミングで相談や報告をする」ことが欠かせません。

もちろんこれらは会議や打ち合わせ時にもできますが、それでも相手からするとたりないケースもあるでしょう。

 

そういう相手と信頼関係を築いていくには、コミュニケーションの回数を増やしていくことが重要です。

 

「この件はどうなっているんだ」といった相手からの介入を防止するためには、些細なことでも逐一相談や報告をする。

 

その結果、相手に「何かあれば、あいつから言ってくるだろう」と思ってもらえると、過干渉は減っていきます。 

相談を持ちかけるタイミングに注意

とはいえ、相談するにもタイミングは重要です。誰しも会議が続いたり、納期に追われて忙しいときは、心に余裕がありません。

 

声をかける際は、相手に余裕がある時間を見計らいましょう。

 

一番失敗が少ないのは、昼休憩に入る前のタイミングではないでしょうか。あるいは、お昼休憩に、一緒にランチを食べに行くのもいいですね。

 

日頃のコミュニケーションの積み重ねは、信頼関係にも大きな影響を与えるものです。

 

また、相手の思わぬ思考に触れて、お互いに苦手意識や先入観から解放されるというケースも少なくありません。

 

こうした信頼関係の構築は、自分の意見が受け入れられやすくなるなどのメリットも生まれます。

「お節介タイプ」には共感しつつも距離をおく

プライベートにおける「お節介な人」には、人間関係で疲弊しないためにも、一定の距離感をとることが大切です。

 

ただし、子ども同士が仲が良かったり、または近所に住んでいて何かと顔を合わせる機会が多かったりすると、なかなか難しいケースがありますよね。

 

そのような場合は、相手の提案に対して一度共感して、自分以外の誰かを理由に断るのが有効です。

 

たとえば、「スイミングをしたほうが子どものためよ!」と強制的に習い事を進めてくる場合は、「本当ですね!」と提案をいったん受け入れる。

 

そのうえで、「家で相談してみたんだけど、夫に反対されちゃって…」「実家の父が教えてくれると言うから、習い事はしづらくて…」などと理由をつけて断るのです。

 

大切なのは、全否定ではなく部分否定をすること。「提案自体は素晴らしいし、私としては賛成なんだけど…」というニュアンスで断れば、相手も悪い気はしないはずです。

 

もちろん、よい提案だと思うことであれば一度やってみるのもいいですね。その結果、うまくいかなかったという報告をするのもひとつの方法です。

「過干渉」は相手の感じ方次第 親子関係では特に注意を

今回お伝えした過干渉な人への対処法は、反面教師として私たちが意識したいことでもあります。

 

仕事上の立場や親子の関係性では、相手が優位な立場であればあるほど、受け手は「過干渉」について指摘ができません。

 

特に親子関係においては、子どものためにと思う行動が、かえって子どもを追い詰めたり、苦しめたりしているケースを実際に多く見てきました。

 

たとえ悪気はなくても、相手がしんどく感じてしまえば、過干渉になってしまいます。そうならないためにも、定期的に自分自身の行動を振り返ることも大切にしたいですね。

 

PROFILE 井上智介

井上智介先生プロフィール
大阪を中心に精神科医・産業医として活動。産業医としては社内の人間関係のトラブルやハラスメントなどで苦しむ従業員に、カウンセリング要素を取り入れた対話重視のケアを行う。精神科医としてはうつ病、適応障害などの疾患の治療に加え、自殺に至る心理、災害や家庭、犯罪などのトラウマケアにも対応する。

取材・構成/水谷映美