子供はさまざまな病気にかかりますが、ときには入院が必要になることもあります。

 

また先天性の疾患や障害があり、どこかの時点で手術しなくてはならない場合も。

 

小さな子は保護者、特に母親の付き添いを求められることが多くありますが、急な入院付き添いにあたっては戸惑うこともいっぱい。コロナ禍で、以前よりも制約が多くなり、ますます困っている人が増えています。

 

今回は、実際にお子さんの入院に付き添ったママたちから、どんな点が一番大変だったのか体験談を聞かせてもらいました。

仕事の長期休みで平謝り…

子供の入院期間はさまざまですが、厚生労働省のデータによれば、ある年の14歳以下の入院日数は平均で7.4日でした。

 

7日であれば、週末をはさんでも5日間は仕事を休まなくてはならないうえ、退院してすぐ保育園に戻れるとも限りません。

 

「息子が1歳3か月のとき、尿路感染症で高熱が出て1週間の入院。夫が2日、私が3日休んで乗り切りました。急なことだったので引き継ぎするヒマもなく、メールで各関係者に依頼や指示を送り…同僚は快くカバーしてくれましたが、後で聞くと相当残業したとのことで平謝りでした」

 

と話すHさん(会社員)。

 

「さいわい、最後の2日間は熱も下がって元気だったのでよかったですが、もし複数の子供がいたら夫婦とも5日ずつ休むところですよね。すでに発熱などで有給も使い切っていたので、欠勤で賞与額にまで響くところでした」

ワンオペ付き添いで3日間シャワーなし

乳幼児の入院には、病院によって完全看護(付き添い不可)のところもあれば、逆に保護者の付き添いなしでは入院できないところ、夜だけは付き添いがいるところなど、色々なパターンがあります。

 

昨年2歳のお子さんが喘息発作で入院したMさん(販売職)は、お子さんの3日間の入院のあいだ24時間付き添ったそうです。

 

「完全看護にもできたのですが、そちらを選ぶと今度は感染防止のため退院まで一切会えなくなります。娘はちょうどイヤイヤ期も重なっていて、他の患者さんに迷惑をかけては…と思い、付き添いを選びました」

 

しかしいったん付き添いを始めると、今度は病院から出たり家族と交代したりできなくなったといいます。

 

「病棟のシャワー室は借りられるのですが…トイレの3分間でもタイミングが悪いと娘がベッドに立ち上がって大泣きしているのが廊下まで聞こえてくるんです。夫と交代できるならともかく、1人じゃシャワーなんてとても無理で、3日間お風呂なしで過ごしました」

 

以前は付き添い交代できた病院でも、コロナ禍で当時と対応が変わっているケースもあるので、入院をすすめられたら必ず付き添いはどうなるのか再確認しておきましょう。

親は食事なし&買いにも行けない!?

入院している子供の食事は必ずあるけれど、付き添いの保護者の食事に関しては、料金を支払えば用意してくれる病院とそうでない病院があります。

 

RSウイルス感染症で1歳のお子さんが1週間入院したTさん(公務員)は病院では食事を頼むことができず、院内の売店へ買いに行くしかなかったのですが、

 

「体調が悪く子供もぐっすり眠れないので、なかなか買いに行くのも難しく、決まった時間に食事することができませんでした。子供の食べ残しを食べるのも禁止。気付けば最初の食事が夕方になる日も…」

 

メールでTさんの様子を知ったママ友が、入院3日目に受付にお弁当やお菓子の差し入れを届けてくれたといいます。

 

「本当にありがたくて、涙がでました」

 

ただ、病院によっては食品の差し入れや、病室での付き添い保護者の飲食を禁止している場合もあります。

 

「息子は寝ていると思ってもすぐ目覚めて何度も点滴を抜いてしまいそうになったので、ほとんど側を離れられず…もし保護者は別室で食事する決まりだったらほとんど何も食べられなかったかもしれません」(Tさん)

どこで寝ればいいの?問題

付き添いの保護者が寝る場所は、レンタルの折りたたみ式ベッドまたは子供と同じベッドの中になります。

 

Uさん(会社員)は昨年10月に生後9か月のお子さんが入院。

 

「折りたたみ式の簡易ベッドが貸出中で、子供のベッドで寝るしかなかったのですが、身長170㎝の私には狭すぎて…子供の点滴や酸素のチューブもあるし、端から落ちそうで、あっというまに首と腰を痛めてしまいました」

 

Wさん(飲食店勤務)は、昨年1歳のお子さんが入院したときに簡易ベッドを借りましたが、日中はたたんでおくのが決まりでした。

 

「でも夜はずっと不機嫌でぐずっていて、他の患者さんや付き添いの人の迷惑にならないよう、ほとんど立って抱っこしていて。昼間、子供が眠っているタイミングで私も寝たかったけど、子供のベッドに入るのは禁止だったので、結局パイプ椅子で座ったままうたたねするくらいしかできず辛かったです」

 

「看護師さんは、赤ちゃんだから泣きますよね、気にしないでねと言ってくれるけど、昼間にベッドで寝るのはやっぱり許してくれないんですよね」(Wさん)

付き添いできないのも辛い

Eさん(派遣社員)は、1歳9か月のお子さんが入院。しかし病院の方針で完全看護となり付き添いはできなかったといいます。

 

「私も安定期とはいえ妊娠中だったので、胎児の負担や感染のリスクを考えると、付き添わない方が安心だったとは思いますが…」

 

というEさん。

 

「看護師さんもとても忙しいと思うのですが、私がガラス越しに様子を見たときはずいぶん長いこと泣いていたようで見たこともないくらい髪が乱れて、鼻水だらけでした。その時は病院を変えてでも付き添ってあげられたら…と思いました」

きょうだい児のケアも心配

子供が2人以上いる場合、家に残された方の子のお世話で両親ともに仕事を休むことになりますし、2歳くらいまでの子はなぜママが家にいないのか分からず、泣いたりストレスをためたりしてしまいます。

 

ひとり親で実家などにも頼れない場合、さらに事態は深刻に。

 

Sさん(販売職)には、3歳と1歳のお子さんがいます。

 

「私は下の子を妊娠中に離婚してシングルマザーですが、去年1歳の下の子が発熱から肺炎になりかけて入院をすすめられました。出産時は上の子も一緒に入院できる産院を選びましたが、コロナのこともあって、小児科はなかなかそんなところはないんですね」

 

事情により個人的に頼れる相手が本当にいない場合、自治体の児童福祉関係の窓口に相談すると、児童養護施設のショートステイや、空き状況によりファミリーサポート人材の自宅などでお子さんを預かってもらえることもあります。

 

Sさんの自治体はその空きもなかったとのことで、

 

「結局、なんとか自宅で看病しつつ、いざという時は救急に行けるように準備していました。幸い夜中には容態も落ち着き大事には至らなかったですが、もし悪化していたら本当に詰みました」と話します。

留守中の自宅が大惨事

過酷な入院の付き添いをなんとか乗り切りやっと子供と家に帰ってみると、自宅は家事能力の低い夫によってめちゃくちゃに散らかっていて、残りわずかなエネルギーも尽きてしまった…という人も少なくありません。

 

「持って帰ってもらった洗濯物が3日分とも洗面所に放置されていて、子供の着替えがない!と焦りました。仕事が忙しかったというけど、全自動で乾燥までできるのに、なぜ?」(Kさん・教育関係)

 

「10日ぶりに帰ってみたら床があまりにもホコリだらけで…ハイハイ時期の子供をとても下ろせず、玄関でベビーカーに乗せたまま、寝不足でフラフラ、腰はバキバキの身体で床の大掃除をするところから始まりました」(Nさん・会社員)

おわりに

あってほしくないことですが、日頃元気な子でも、時には入院しなくてはならないこともあります。

 

本来なら、すべての病院で病棟保育士さんが病室で保護者の入浴や買い物のあいだ子供をみていてくれたり、付き添いの家族のベッドや食事が確保できたり…といった制度がととのっているのがベストです。

 

しかしまだ対応できている医療機関の方が少ないというのが現状。

 

お子さんが元気なときに、万が一に備えて近所の各病院の対応などを調べておけると良いですね。

文/高谷みえこ
参考/厚生労働省「平成29(2017)年 患者調査の概況 退院患者の平均在院日数等」 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kanja/17/dl/03.pdf