続々と値上げが発表される小麦が原材料のパスタやラーメン、うどんなど。私たちの家計に、今後影響を与えるのではと心配されます。なぜこんなにも値上げが続いているのでしょうか?経済アナリストの増井麻里子さんに聞きます。

輸入小麦が200810月に次ぐ高値へ

各メーカーや飲食店が値上げを発表する背景には、「輸入小麦の大幅値上げ」が関係しています。

 

日本はほとんどを輸入小麦に頼っていて、重量ベースの自給率はわずか15%程度です。国産の大部分を占めるのが北海道ですが、それでも日本は外国に比べ広大な土地が少なく、 気候条件からも、海外の安い小麦に対して競争力をつけるのは困難です。

小麦

小麦は国家貿易として計画的に輸入されていて、半年ごとに政府売渡価格が決められます。今回、39日に発表された20224月期の価格は、直近6カ月(20219月第2週~20223月第1週)の平均買付価格をもとに算出されたものです。72,530円/トンと、前回の202110月期から17.3%引き上げられました。前回は19.0%引き上げられています。

小麦の輸入価格が高まった3 つの要因

 そもそもなぜ輸入小麦が値上がりしたのか。原因として大きく3つのことが挙げられます。

1.  アメリカ産、カナダ産小麦を、中国が盛んに買いつけ

日本は輸入小麦の多くを、アメリカとカナダから買いつけています。しかし中国がこれらの国から多くの小麦を購入するようになり、日本が購入できる小麦の量が減少。さらに家畜の飼料であるトウモロコシが高騰したことで、飼料の代替えとして小麦の需要が増え、価格が値上がりしました。

2.  日本向け小麦の産地が高温・乾燥により不作に

日本向けの小麦を作っている北米の地域で、高温・乾燥によって小麦が不作に。昨年夏以降も続き、国際価格が上昇しました。アメリカ、カナダ、オーストラリアの日本向け産地における品質の低下もあり、日本が求める高品質小麦の調達価格帯が上昇したことも原因です。

3.  ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢による供給懸念

国際連合食糧農業機関(FAO)によれば、2019年の小麦生産量は1位中国、2位インド、3位ロシア、4位アメリカ、5位フランス、6位カナダ、7位ウクライナとなっています。ロシアの輸出規制、ウクライナ情勢の供給懸念も、小麦の国際価格の上昇につながっています。

 

これらの要素が重なったことで、輸入小麦が値上げされました。

飼料の値上がりが深刻化

202110月の輸入価格の引き上げ以降、値上げに踏み切るメーカーや飲食店が出てきました。ただし、小売価格に占める原料小麦代金の割合はそれほど大きくありません。

 

麦粉は、たんぱく質が多い順に、強力粉(食パン)、準強力粉 (ラーメン、餃子の皮)、中力粉(うどん)、薄力粉(ケーキ、和菓子、てんぷら粉、ビスケットに分類されます。カナダ産は強力粉、アメリカ産は強力粉、準強力粉、薄力粉、オーストラリア産は中力粉に使われています。農林水産省によれば、原料小麦代金の割合は、食パンが8%、外食のうどん・ラーメンが1%、カップ麺が2%、小麦粉が29%と試算されています。

 

今回の値上げは、食パン1斤あたり3円程度、外食のうどん・ラーメン1杯あたり1円程度、小麦粉1kgあたり12円程度の影響になると試算されています。

 

国際価格の予想で困難なのが天候です。豊作であれば価格は落ち着くかもしれません。トウモロコシの不作が収まれば、飼料としての需要が減る可能性もありますが、これも同様に予想が難しいのです。ただ、ウクライナはトウモロコシの主要生産国でもあり、飼料の値上がりは深刻化しそうです。

 

ロシアによるウクライナ侵攻が長期化や円安定着の観測が高まっているため、国際価格は当面高止まりしそうです。国家貿易のため、輸入小麦が値下がりすれば、食品メーカーは比較的値下げに動く傾向があります。しかし、価格転嫁にはタイムラグがあるため、小麦を使った商品の価格が元の値段に戻るには時間がかかりそうです

 

PROFILE 増井麻里子さん

経済アナリスト増井麻里子
経済アナリスト/経営コンサルタント。証券会社で株式調査等に従事し、ヘッジファンドでのクオンツアナリストを経て、ムーディーズでは大手企業の信用力分析、国際協力銀行では国際経済調査を担当。独立後、経済に関する講演・執筆実績多数。

取材・文/酒井明子