SNSですぐに「いいね!」やシェアをしてしまう。フェイクニュースにだまされたことがある。そんな人は、じつは情報に踊らされる「情報弱者(情弱)」かもしれません。そうならないために身につける視点を、“思考の整理家”鈴木進介さんに聞きました。
自分の話が他人から信頼されるには何が必要か?
インターネットなどの情報には、一見するともっともらしいものでも、実は単なる個人的意見だったり、意図的に歪められたものが紛れている場合があります。
例えば、「〜だと思う」という表現であれば、個人の意見だとわかりますが、発信する側が思い込んで「〜だ」と断定表現すると、事実や意見かの判断がつかなくなります。
このように、情報をはき違えて解釈すると、誰かの思惑や自分の誤解で情報が歪んでしまいます。
その歪んだ情報を他人に発信すれば、誤った情報を拡散したことになるのはもちろん、自身の信用を落とすリスクもあります。
情報の取り扱いを誤らないために、注意しておきたい2つの視点があります。
「すごく安い」の基準は人によって違う
まずは「すごく安い」「評価が高い」「いま話題の」といった言葉が使われるケースです。こうした「あいまいな言葉」は、間違っていなくても、主観に基づいている可能性があります。
例えば、知人から「駅前の家電量販店で、空気清浄機がすごく安かったよ!」と聞いて買いに行ったとします。
数千円単位で定価より安いのかと期待していたら、たった500円の割引。安いことには変わりないですが、これは本当に「すごく安い」と言い切れるでしょうか?
「すごく安い」という表現は、個人の価値観によって捉え方が違うため、言った本人の意見が大いに含まれています。
「定価よりも500円安い」あるいは「何円で売られていた」のように、具体的な数字の情報があれば、誤解は防げたはず。わざわざ買いに行く必要はないと判断もできたでしょう。
あいまいな言葉の中には、「事実」と「意見」が混在することがよくあります。
過度に期待しすぎないことや、あいまいな表現を具体的な表現に変換して、このふたつを切り分ける注意が必要です。
合格者数や合格実績をうのみにできない訳
では数字で表現された情報なら問題ないかというと、そうとも限りません。
例えば、「上位校への合格実績No.1!」や「A高校100名合格」と掲載された予備校の広告。
非常に良い実績を出しているように見えますが、実際に何人が受験して何%が合格したのかは分かりません。
同じ100名の合格者でも、分母が200人(合格率50%)の場合と、500人(合格率20%)の場合では、意味合いがまったく変わってきます。
また、多くの生徒が合格しているように見えますが、実際は成績のいい1人が複数校に合格していて、合格者数が多いように見せている場合もあります。
数字自体は本当のことであり、広告が嘘を言っているわけではありません。事実の情報を一部だけ切り取ることで、受け取る側へ与える印象が大きく変わるのです。
人は立場や思惑を背負って話します。事実と意見を切り分けて確認しなければ、本質を見誤るリスクがあります。
それらを見極める絶対的な方法がないのが難点ですが、「それって本当?」と冷静な視点を持つことはできるはずです。
身の回りすべての情報について疑うのは息苦しくなります。
仕事で扱う内容や高額商品の買い物、将来に関わる重要な判断は、必ず情報が事実なのか、その事実が切り取られていないかを確認するように努めてください。
PROFILE 鈴木進介さん
取材・文/大浦綾子