最近耳にするようになった「フェムテック」ということば。生理や更年期など女性の健康上の問題を新しい技術で解決する商品やサービスのことを指しますが、読者アンケートでは、「フェムテック」という言葉を知っている人はわずか3割強にとどまりました。

 

そんななかでも生理に対する悩みを解決するアイテムへの関心は高く、大人の女性はもちろん、ティーンで吸水ショーツを使う子もふえているよう。実際に吸水ショーツを使用している中学生や、ジュニア用吸水ショーツを開発したメーカーにお話を聞き、「思春期とフェムテックの関係」について考えます。

中学生もその吸水力に驚いた!

そもそも、生理に対する知識や意識は、家庭ごとにまちまち。学校においても、学校や教師の性教育に対する考え方によって対応の差が大きいことが課題になっています。

 

たとえば、生理日やPMS(生理前症候群)の状況を親子でシェアし、必要に応じて子どもに漢方を飲ませるなど、こまやかにケアする母親もいるいっぽう、親子間での意思疎通が十分でない場合、子どもに吸水ショーツなどを新しいアイテムを用意しても積極的にトライしようとしない子も。

 

正しい性の知識をもつことで選択肢がふえ、それが心身の課題解決につながる…その可能性について、もっと社会的に理解されることが必要だと言えるでしょう。

 

今回話を聞いた中学生のKちゃん(14歳)は、母親と生理のことを気がねなく話せるようで、すでに吸水ショーツを長く使い続けていると言います。

 

「私はすごく経血量が多いのですが、2日目や3日目でも受け止めてくれるのでラクですね。制服につかないかと気にすることもありません。ただ、正直言うと…洗うのが面倒なときはあります。洗濯が追いつかなかったときはナプキンを併用することも。学校でのナプキンの取りかえも、女子同士でナプキン交換をオープンにしていて、そこまでストレスではないので」

 

初めての吸水ショーツを身につけたときは、「こんなに吸収するんだ!」とかなり驚いたそう。もし周りにおすすめするとしたら?との問いには、「ずっと座ってなきゃいけないとき…たとえば、部活やテストなどのときには便利だと思います」と中学生らしい答えが返ってきました。

フェムテックが「思春期特有のしんどさ」を救うきっかけに

2020年6月に行ったクラウドファンディングで1億円以上を集め、話題になった「Bé-A〈ベア〉」。チャレンジの途中からジュニア用ショーツへの要望が多く、支援金の一部ですぐにジュニア用の開発に着手したと言います。

 

ベア 吸水ショーツ
ファッション性の高さにも定評がある「ベア」のジュニア用吸水ショーツ

ジュニア用の特徴は「裏地をグレーにしていること」。これは、「体の変化によって心身ともに不安定な思春期の女の子が、吸水位置や量を目で確認しやすいように」という配慮からだそう。

 

購入者からも多くの反響が寄せられ、「休み時間が短くナプキンをこまめに取り替えられないし、音も気になっていたけれど、その心配がなくなった。勉強やスポーツに集中できる」「慣れていないナプキンの装着がうまくできなくてショーツやシーツを汚してしまうことがあったが、それもなくなった」など、子どもならではの悩みが解消されたという声も多く届いていると言います。

 

ベア 吸水ショーツ
「ベア」のジュニア用吸水ショーツを裏返した状態。左が前側、右が後側

「(汚れた部分を手で)洗うところがちょっと面倒」(前出のKちゃん)と取り扱いの面での課題は残るものの、吸水ショーツを使うことで自分自身の体ときちんと向き合える面はありそう。長い目で見ればメリットにつながると言えそうです。

フェムテック以前の性教育…打破するユニークな取り組みも

初潮が低年齢化する昨今、子どもの心身のケアの難しさについて悩む親が増えています。そもそも「生理はなぜ起きるのか」という点から理解できていない子、説明できない親も多く、フェムテック以前の性教育の遅れを指摘する声も日に日に高まっています。

 

その状況のなか、工夫を凝らした性教育本の出版やイベント活動も広がりを見せています。たとえば、性教育ワークショップグループ「SEIJUKU」では、小さな子から思春期の10代とその親を対象に、「赤ちゃんはどうやってできるのか」を解説した紙芝居の読み聞かせワークショップを開催。母親同士で生理の悩みについて、ざっくばらんに語るセッションも定期的に行っています。

 

性教育向け紙芝居 上映の様子
「SEIJIKU」による性教育向け紙芝居ワークショップの様子

前出の「ベア」では、学校や家庭で性についての話ができていないという現状を踏まえ、「まずは自分をよく知ること、そしてたくさんの選択肢のなかから、より自分らしく、心地よく生きていくための方法やアイテムを見つけるサポートができれば」との思いから、初潮前後の親子を対象にしたセミナーを定期的に開催。上手に付き合っていく方法や知識を学べる機会を増やしています。

 

社会的にも、以前に比べて「生理」という言葉を口に出しやすくなり、フェムテックが盛り上がることによって、悩みを表に出しやすくなってきたと言えるでしょう。

 

フェムテックを上手に取り入れることもそうですが、まずは性について、家族で話しやすい関係性をつくることが大切なのかもしれません。

取材・文/久保直子 画像提供/ベア、SEIJUKU