年々増えている子どもの花粉症。大人と違って、気づきにくいのがやっかいです。子どもの花粉症を素早く見分けるコツや、治療・対策法をハピコワクリニック五反田院長の岸本久美子先生に聞きました。
2歳児も!? 花粉症の若年齢化が進んでいる
── 花粉症に悩む子どもが増えているそうですね。子どもの花粉症はどうして起こるのでしょうか?
岸本先生:
花粉症に限らず、アレルギーの症状を訴える子どもの患者さんが増えています。原因はその人の体質や住環境、食生活などさまざまな要因があると考えられています。
アレルギー体質は遺伝的な要因も関係しているので、両親のどちらかに花粉症の方がいれば発症の確率は高まります。
また、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、小児ぜんそくのある子どももかかりやすい傾向にあると考えられています。
若年齢化も進んでいて、小学生の頃から発症する子が多かったのですが、最近は2〜3歳で花粉症にかかる子どもも珍しくありません。
「顔をしかめる」「耳が痛い」も花粉症のサイン
── 小さな子どもは症状を自分で訴えられないので、花粉症だと気づけるか心配です。判断するポイントはありますか?
岸本先生:
お子さんをふだんから観察して、小さなサインを見逃さないようにしましょう。子どもの花粉症では、鼻づまりや目のかゆみが出やすいのが特徴です。そのため、
- 目や鼻をしきりにこする
- 顔をしかめる
- 鼻をすする、鼻血を出す
- いびきをかく
- 口呼吸をする
- 耳の中が痛くて触る
といったしぐさが見られることがあります。
また、症状が続くと、睡眠不足や集中力の低下、情緒不安定といった日常生活への影響が出ることもあります。
風邪の症状と見分けがつきにくく、さらに今年は新型コロナウイルスの感染もあるため、さらに判断が悩ましいことと思います。
鼻や目などの直接的な症状に限らず、花粉の多い時期に異変を感じたら、花粉症を疑って医師に相談してみましょう。
子どもが過ごしやすいよう薬の選択肢も増えている
── 子どもの花粉症は、どのように対策をすれば良いのでしょうか?
岸本先生:
基本的に大人と同じで、毎日の生活で花粉を肌に触れさせない、体内に侵入させないことが大切です。小さなお子さんほど自分で意識して対策をとるのが難しいため、保護者のサポートが必要ですね。
例えば、外へ遊びに出かけるときはマスク・眼鏡の着用、ナイロン製のウインドブレーカーを着せる、帰宅したら玄関前で衣類についた花粉を払う、手洗い、うがいや洗顔をさせるなどです。
決められた時間に薬を飲ませることや、生活リズムを整えることも忘れないでください。
── 子ども用の花粉症の薬にはどのようなものがあるのでしょうか?
岸本先生:
医療機関では、抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬といった内服薬と、症状に応じて点眼薬や点鼻薬を処方します。
薬の選択肢も増えていて、1日1回の服用で済むものや、シロップタイプのものなどさまざま。希望があれば伝えてみましょう。
眠気が強くて薬を変えたい場合などもご相談ください。
── 薬を毎日飲むことを嫌がるお子さんもいるようです。治療を続けられるコツはありますか?
岸本先生:
治療をすれば花粉シーズンでも普段どおりの生活が送れることを、お子さんに話してあげてください。
症状が悪化すると強い薬が必要になりますし、つらい症状のまま我慢して過ごすほうが、お子さんにとって何より負担になると思います。
どうしても飲み薬を嫌がるようであれば、点眼薬や点鼻薬だけと割りきるのも手です。治療の選択肢はいろいろあるので、医師と相談しながら方法を探ってみてください。
「舌下免疫療法」なら体質改善も
── 他にも、親子で前向きに治療に取り組める方法があれば、教えてください。
岸本先生:
5歳以上であれば「舌下免疫療法」を受けるのもおすすめです。
アレルゲン免疫療法のひとつで、アレルゲンを体内に投与して少しずつ慣らすことで、アレルギー反応を起こさないようにする治療です。
一般的な内服薬などは「出てきた症状をおさえる」のに対して、舌下免疫療法は「アレルギー反応そのものをおさえる」ことが期待できます。
現在は、スギ花粉への治療に採用され、保険適応にもなっています。
── 鼻づまりやくしゃみそのものが起こらなくなるのは、メリットが大きいですね。
岸本先生:
治療としては、ご自宅で毎日1分間、舌の下に薬剤を置いて飲み込むことと、2〜4週間おきの通院を3〜5年続ける必要があります。
治療期間が長期にわたるのがネックですが、今後の人生で薬を飲み続けることと比べれば、負担は少ないとも考えられます。
毎日の服用や定期的な通院も、保護者が管理できる年齢のうちに取り組むほうが継続しやすいと思います。ぜひ検討してみてください。
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大人でもつらい花粉症。症状をおさえて、勉強や遊びに思い切り取り組めるようにサポートしてあげたいですよね。治療を毎日続けることは大変ですが、お子さんのペースに合わせて、無理なくできる対策から始めていきましょう。
PROFILE 岸本久美子先生
取材・構成/大浦綾子