春は引っ越しシーズン。物件は争奪戦になり、引っ越し費用も値上がりします。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんに聞いた賢く引っ越すコツとは──。

引っ越し費用を抑えるなら年2回の閑散期

春は進学や転勤で人々の移動が多く、条件の良い賃貸物件や引っ越し業者が争奪戦に。もし今すぐ引っ越す必要がないのであれば、おすすめしたい時期が2つあります。

 

ひとつ目はGWが終わる5月後半〜8月末です。10月は春に続く転勤シーズン。9月頃から物件を探す人が徐々に増えるため、春のピークから秋の間が閑散期にあたり、家賃や引っ越し料金の値下げ交渉をしやすい時期だと言われています。

 

この時期に空いている物件のなかには、春までに借り手がつかなかったものも。「家賃を少し下げてでも借りてもらえれば嬉しい」と考える大家さんは多いようです。

 

次におすすめなのが元旦です。この時期に引っ越す人の多くは、できれば年内に引っ越しを終えて、新年はゆっくり新居で暮らしたいと考える方が多いよう。そのため年末は引っ越し料金が上がり、逆に元旦から数日は値段が下がる傾向があります。

 

物件については春の新生活に向けてまた競争が始まる時期にあたりますが、引っ越し業者を選ぶにはいい時期と言えるでしょう。

初月は「家賃無料」物件に潜む落とし穴

 おすすめ時期の物件選びで、いくつか気をつけたいことがあります。

 

まずこの時期に空いている物件のすべてが、人気というわけではないということです。もちろん人気の物件がたまたま空いているということもありますが、春や秋に借りられなかった理由がそれなりにある場合も。

 

「駅から遠い」「間取りが一般的ではない」など、現在空いている理由を不動産屋さんに聞いたり検証して、自分に合っているのか考えるといいでしょう。

また一定期間、家賃が無料になるフリーレント物件も注意が必要。例えば最初の1か月は家賃が無料で、その後から通常の家賃を支払うことになる契約です。初期費用は安くなるため飛びつきがちですが、実は1か月無料よりも家賃を下げてもらったほうが良い場合もあります。

 

大家さんは最初の数か月の家賃を無料にしてでも入居が決まれば、空き物件がなくなり、しばらくは家賃が入るので安心です。また家賃自体は変わらないので、次の人に貸すときも相場が変わらず値段を下げずに済むかもしれません。

 

しかし7万円の物件の最初1か月をフリーレントにした場合と、家賃交渉で1か月3,000円安くしてもらった場合を考えてみましょう。2年間住むと、3,000×24か月=72,000円で、家賃を値下げしてもらったほうが得となります。フリーレントにすぐに飛びつかず、家賃の値下げ交渉も視野に入れて、自分にとってお得な物件を選ぶと良いでしょう。

荷物量と引っ越し日も交渉材料に

引っ越し費用を安くしたい場合も、押さえるべきポイントがいくつかあります。

 

まずは引っ越し前に荷物を処分すること。引っ越し業者を利用する場合、特にファミリーの場合は手配するトラックの台数やサイズに影響するので、荷物を減らすことで安くなることがあります。

 

日程についても融通が利くのであれば安くなる日を、一度聞いてみるのが良いでしょう。平日や日曜の午後など、人が避けたいと思う日程はやはり安くなる傾向があります。自動的に安くなるわけではないので、見積もりをとる際にどうすれば安くなるか聞いて交渉することが大事です。

 

長距離の引っ越しの場合は、1台のトラックに複数の依頼者からの荷物を載せる「混載便」を使うのもおすすめ。リーズナブルに利用できるので、単身赴任での移動や荷物の少ないファミリー層にはいいかもしれません。

 

ただし、人気の時期の引っ越しは、家賃交渉や引っ越し費用の値下げ交渉がとても難しいです。安さばかりにこだわると、本当に住みたいところを逃してしまいます。時期によってこだわる部分(金額なのか物件の内容なのか等)を判断して、新居を決めるのが良いですね。

 

PROFILE 風呂内亜矢さん

ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢先生
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。「つみたてNISAの教科書(ナツメ社)」など約20冊の書籍のほか、テレビ、ラジオ、雑誌などのメディアで「お金に関する情報」を発信している。YouTubeチャンネル「FUROUCHI vlog」では日常の記録にお金のTipsを交えた動画を更新。

取材・文/酒井明子