モンテッソーリを取り入れたピンクの部屋
モンテッソーリの「子どもが輝く部屋づくり」の一例

「藤井聡太さんはモンテッソーリ教育で重要な『人的環境(=母親)』と『物的環境(=部屋)』がそろっていた」と、話すのはAMI国際モンテッソーリ教師で、保育士でもある仲宗根さん。この2つの環境を親が自分で整えていくための方法について、話を聞きました。

家庭で取り入れるモンテッソーリ教育に必要な2つの環境

数々の家庭のお部屋づくりのサポートをしてきた仲宗根さんは、モンテッソーリ教育でいうところの2つの環境「人的環境(=母)」と「物的環境(=部屋)」が大事だと繰り返します。

 

「2つのうち、『人的環境』とよばれる母親(や先生)が最も重要だと考えています。大人でさえ周りにいる人の影響で、生活は大きく変わります。

 

だから、身近な大人(とくに一番接するだろう母親)が子ども一人ひとりを理解し、あれこれと口出しせず信じて見守ることが大切です。手を出さないということがいちばん難しいですよね」

 

“子どもには自分を育てる力が備わっている”という「自己教育力」の存在が根底にある、モンテッソーリ教育を家庭で取り入れる際は、「人的環境」として、まず母親が子どもを信じ、見守ることが最も重要だそうです。

 

安心して子どもを見守るために、「物的環境(=部屋)」を整えることで、直接教育を受けられる園に入れなくても、家庭でモンテッソーリ教育のメソッドを取り入れることが可能になるようです。

モンテッソーリを取り入れた白いラグの部屋
モンテッソーリの「子どもが輝く部屋づくり」の例

家庭は子どもの生活の土台となる場所

「たとえば、4歳の息子さんが『思い通りにいかないと癇癪を起こす』ことに悩まれていたご家庭では、部屋中が子どものもので溢れていました。高齢出産で一人っ子だったこともあり、お子さまのためにいろいろしてあげたのでしょう。でも、ものが多すぎてかえって情報過多な状態でした。

 

そこで、『本当に子どもが必要としているもの』だけを部屋の見えるところに残すようにしたところ、癇癪がいっさいなくなったと、後日ご連絡をいただきました」

 

モンテッソーリ教育を取り入れている多くの園では「お仕事」とよばれる活動(※)を、集中して行うことができる環境が用意されています。

(※)モンテッソーリ教育を取り入れている園では、モンテッソーリの教具などを使った遊びや勉強の時間を「お仕事」と表現する

 

「環境が子どもの発達に合っていないと、子どもは自分のことができず混乱しイライラしたり、癇癪を起こしやすくなります。

 

家庭は子どもの生活の土台となる場所。そこが子どもにとって魅力的で、生き生きと自発的に行動できる場であること。それは子どもの発達にとって、非常に大切なことです」

 

我が子が何に興味があり、何をしている時に集中力を発揮しているのかを正しく見極めて環境を用意することで「癇癪がなくなる、集中力が増す、落ち着く、自立する、創造力が向上する」などの効果が期待できるそうです。

 

モンテッソーリを取り入れたブラウンの部屋
モンテッソーリの「子どもが輝く部屋づくり」の例

モンテッソーリ教育で培う思いやり

「また別のご家庭では、小学生の姉妹が髪を引っ張り合うような喧嘩を毎日することに悩まれていました。原因は自宅内で姉妹のスペースが明確に分かれていないことにあると思い、姉妹の棚を別々に設け、カーペットで各自のスペースを明示しました。

 

そうしたら喧嘩がなくなったのです。これはまさに、モンテッソーリのお部屋づくりで『物的環境(=部屋)』を整えた効果だと思いました」

 

姉妹の領域を分けることにより、姉妹がそれぞれの場所「物的環境(=部屋)」の目的や用途を理解し、各自のスペースを持てたことに満足し、欲求が満たされ、お互いを思いやることができた結果だとのこと。

 

わたしたち大人も同じですが、自分の心が満たされて初めて相手を尊重する気持ちを持てるようになりますよね。モンテッソーリ教育は、相手を思いやり尊重する気持ちを育むことから平和教育ともいわれているそうです。

 

PROFILE 仲宗根 晶さん

モンテッソーリ講師プロフィール写真
AMI国際モンテッソーリ教師。保育士。日本全国だけでなく海外のご家庭に「モンテッソーリの子どもが輝くお部屋づくりアドバイス」を行う。 

取材・文/清宮あやこ
参考文献/相良敦子著『お母さんの「敏感期」 モンテッソーリ教育は子を育てる、親を育てる』(文春文庫​​)