4月の進級を前に、わが子にスマートフォンを持たせる人がふえる時期です。一方で「まだ早いのでは?」と心配する親も多いはず。特に最近事件の発端にもなっている「SNSトラブル」への不安は、誰しもが感じていることでしょう。

「知らない人と繋がれる」無料SNSサービスの落とし穴

そもそも、子どもにスマホを持たせる時期として一番多いのはいつごろなのでしょうか?

 

読者アンケートでは、「持たせている」と回答した人は23%で、持たせた時期として一番多かったのは「小学校卒業・中学校入学」(23%)でした。

「持たせていない」と回答した人に同じ質問をしたところ、同じく「小学校卒業・中学校入学」が46%と優勢でした。

 

ただし、子どもにスマホを持たせることについて、すでにスマホを持たせている・持たせていないにかかわらず、92%の人が「不安」に感じている、という結果に。

 

スマホを渡すタイミングで、ルールもきちんと設けたという声が多く聞かれたものの、「スマホのメリット・デメリットを理解し、それをお子さんに伝える自信がありますか?」という問いに対しては、32%が「あまり自信がない」と答えました。

 

子どもが危険な目に遭わないように対策をしたいけれど、「これで大丈夫なのか?」と手探り状態の人もが多いのかもしれません。アンケートでは実際、スマホにまつわるヒヤリとするエピソードも寄せられました。

「娘がLINEのオープンチャットを使って知らない人と交流。親が知らないところでこのようなやり取りが行われていたことにドキッとしました」Fさん(自営業・33歳)

人気のチャット機能がトラブルの元にも

「オープンチャット」とは、LINE上で「友だち登録」をしていない面識のない相手とも匿名で参加できるチャット機能。共通の趣味や話題について、不特定多数の人と盛り上がれるのが特徴です。

 

Fさん夫婦はどちらもフルタイム勤務のため、留守中に何かあったときのためにと小学5年生の長女にスマホを持たせていたそう。LINEを登録したのもそれがきっかけでした。

 

長女はこの「オープンチャット」機能を使って、「小学校5年生の女の子」限定のグループに参加。ところが、Fさんが確認したところでは、別学年の男性らしき人のコメントも混ざっており、「あなたはこのカテゴリーの人じゃないでしょ?」という指摘する声もあったといいます。

 

今回親子で話して、このサービスを使うとどのような危険が起こりうるかを伝え、注意したというFさん。「思春期でぶつかることも増えたけれど、セキュリティに頼りっぱなし、子どもに任せっきりにしないようにしなければ」と反省したそうです。

安全な活用方法を知らずに使うのが問題!

LINEの「オープンチャット」自体は、適切に活用すればさまざまな人とのコミュニケーションが楽しめる便利なツールです。問題なのは、仕組み自体を理解せずに利用する人が多いこと。

 

実際、近年「オープンチャット」のようなSNSやオンラインゲームを通じて知り合った面識のない人とのトラブルや犯罪が急増しています。このような危険からわが子を守るにはどうしたらいいのでしょうか?

 

元埼玉県警察本部刑事部捜査第一課の警部補であり、デジタル捜査班班長をつとめた佐々木成三さんに、犯罪に巻き込まれないための心得を伺いました。

テキストメッセージ型SNSに潜む「なりすまし」の恐怖

「まず、親子で知っている人・知らない人の定義にはズレがあることを認識しておく必要があります」と佐々木さんは指摘します。

 

「アナログ社会を経験してきた大人にとって、知っている人というのは顔と顔を合わせた付き合いのある人を指しますが、オンラインで繋がるのが日常になっている子どもたちにとっては『DMで何度もやりとりした』『オンラインゲームで何度も会話した』という人たちも立派な知り合いなんです」

 

特にテキストメッセージ型SNS(Twitterなど)は、簡単に別の人を装うことができるため注意が必要です。

 

「たとえば、私は45歳ですが、テキストメッセージ型SNSでは別の若い男性の写真を引用して20代男性のアカウントになりすますことができますし、10代の女の子にもなれるわけです」

 

このように誰でも別人格を装うことができるということを子どもたちは理解できていません。年齢差に関係なく誰とでも知り合うことができ、ゲームや趣味など、共通の話題から会話を始められるので、人を見極める力がたりない子どもたちはすぐ人を信用してしまうそう。佐々木さんは「それがSNSの最も危険なところ」だといいます。

 

警察庁が発表している「SNSに起因する事犯の被害児童数」によると、18歳未満の被害者は毎年増加傾向にあり、昨年は1811人、令和元年は2082人と2万人を超えました。

 

「この統計に反映されているのは警察に被害届が出されたものだけ。認知されていないものを含めるとこの倍以上になるでしょう。最近の犯罪者はつねにSNSでターゲットを探しているんですよ」

SNSがきっかけの性犯罪も増加傾向に

SNSで出会った異性から性犯罪の被害を受けるニュースもよく聞きますが、子どもたちはなぜ騙されてしまうのでしょう。

 

「彼らの巧みな話術に、子どもたちは騙されてしまいやすいんです。子どもの性被害状況は令和2年では2409人。被害児童の4割近くがみずから裸の写真を撮影し、相手に送っています。令和2年の被害児童者数は高校生が一番多く45.3%、次いで中学生が35.2%という結果が出ています」

 

過去にはこんな事件があったそう。62歳の男が若い男性になりすまし、女子中学生に接近。受験生だった女子中学生に男は「受験勉強頑張ってね」など優しい言葉をかけ、中学生と仲良くなっていきました。そして男は「裸の写真を送ってほしい」と中学生に要求。相手が自分と歳の近い男子だと勘違いし好意を寄せていた中学生は、みずから撮影した裸の写真を相手に送ってしまいます。

 

さらにその男は、今度は女子中学生になりすまし、50代の男性たちにその写真を売っていたといいます。驚くべきことに、男は小学校の元校長でした。

 

「すべての犯行は『なりすまし』により、顔を合わせることなく実行しています。このようなことがあることを子ども自身がしっかり把握しておかなければなりません。大人はこのような事例を集め、根気強く子どもに教えていかなければならないと思います」

 

PROFILE 佐々木成三さん

元・埼玉県警察本部刑事部捜査第一課警部補。デジタル捜査班班長として、埼玉県内の重要事件(捜査本部)において、携帯電話の精査、各種ログの解析を行った。現在はスクールポリス理事として、中高生を対象にデジタル危機管理の指導に尽力。4月には新著『マンガでわかる! 小学生のためのスマホ・SNS防犯ガイド』(主婦と生活社)が発刊予定。

取材・文/望月琴海
参考/警察庁「令和2年における少年非行、児童虐待及び子供の性被害の状況」https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/R2.pdf
©️CHANTO調べ 調査期間:2022年1月21日〜1月27日 調査対象:CHANTOモニター41人