「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、保護者が受験勉強から日々の生活まで、手取り足取りサポートすることの是非について。手厚くサポートして成功した話を聞くと、忙しい保護者は焦ってしまいますが、「学校は自立した生徒を求めている」と富永さんは話します。
「手取り足取り」には膨大な労力と知識が必要
志望校や、子どもの性格・学力に合った日々の学習計画を立て、教材を揃えて、勉強の妨げになるものは極力排除する…。
そういった手取り足取り型のサポートで、実際にわが子を難関校進学に導き、有名になる方はいつの時代にもいます。
それを見て、「あそこまでしっかりサポートしないといけないのか」「うちは忙しくてそこまではとても…」と焦る方は多いですね。
そうした方の方法論は、確かに塾側が「やってみたい」「できたらいいな」と考える理想的なサポートではあります。
ただ、そうしたメディアで取り上げられるような手取り足取り型のサポートは、膨大な労力と知識が必要で、忙しい一般の保護者にはまず真似できない。
理想にしばられて下手に真似をすると、保護者も子どもも潰れてしまうでしょう。きちんとコントロールしようとするあまり、双方とも息抜きできなくなり、心がパンクしてしまうケースは少なくありません。
「手取り足取り」やるなら短期集中で
手取り足取りを掲げる家庭学習のメソッドは、確かに効率的です。だから、受験学年のラスト100日という追い込み時期限定で、保護者のケアとして真似てみるのはアリだと思います。
追い込む時期だから過保護になれと言うわけではありません。本番を前にスパートをかける子どもを見ていると、多くの保護者はいろいろケアをしたくなるのが自然な気持ちだからです。だったら徹底的に手取り足取りしてみるのも、親子の思い出になると思います。
ただし、その際、保護者は自分が「やりたい」ケアをするのではなく、子どもが「やってほしい」ケアをするよう心がけてください。
子どもの要求を的確にくみ取るには、受験勉強スタート時からわが子をしっかり見守っていて、受験校に必要なこと、今の子どもの成績を知っておかなくてはなりません。
これは正直、忙しい今どきの保護者にはなかなか難しい。我が子を手取り足取りサポートしたい、と思ったとき、保護者はそのことを忘れないでください。
生活習慣から自立の準備を
僕は、基本的には保護者は子どもとは一定の距離を取ったほうがいいと考えています。
ずっと保護者に手取り足取りサポートされて効率よく知識を身に付けた子は、中学高校、そして大学に進学してからの伸びがいまひとつという印象があるからです。
大学入試で「自分で考える」ことが要求されるようになったこともあり、中学高校も自立して考えられる生徒を求めるようになっています。
大学入試の内容はさておき、結局のところ、高3になるまでに、どこかで「自分の頭で考えて」「自分で決めて」「自分で勉強する」習慣を身につけなくてはなりません。そうでないと本人のモチベーションが高まらず、勉強がはかどらないんです。
もちろん中学受験の本番までに保護者のサポートは必要ですが、その後をみすえて、小学生のうちからできる範囲で自立させていくことを心がけてください。
勉強の日々のタスクを決めるのはまだ無理でも、「自分で起きる」「学校のしたくをする」といったことからでいいので、少しずつ本人に任せていきましょう。
受験勉強のサポートに関しては、保護者は自分で抱え込まず、任せられるところは塾などの第三者に任せることがたいせつです。テクニカルな勉強と志望校対策は塾に任せ、メンタルケアや最終的な志望校選びを家庭でしっかり担うのがいいでしょう。
通塾前の子どもに関しては保護者がすべてサポートすることになるでしょうが、その場合は「勉強させなきゃ」と焦らないことです。受験や教育に関する情報を集めつつ、子どもが求めているものを観察しながら、子どもが勉強を「楽しい」と思えるような環境をつくっていくといいですね。
子どもはなかなか理想通りにはいきませんから、焦ることもあると思います。でも、それこそが成長であり、自立への一歩。保護者が忙しいことも、わが子の成長のチャンスと考えましょう。
手取り足取りサポートで効率よく勉強ができるのは確かです。
しかし、中学受験で合格したあとの人生を考えると、子どもを少しずつ自立させていったほうが本人を成長させることになります。