「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、中学受験直後の過ごし方について。「進学中学が決まった2月から夏までの過ごし方が大学進学の成否を握る」と富永さんは話します。
中学校の名前で人生は決まらない
東京都では多くの私立校が2月11日の祝日もしくは2月第2週の土日を「招集日」(合格者説明会)としています。この説明会に参加することでようやく、「自分はここに進学するのだ」という実感が湧くのではないでしょうか。
一般的に、中学入試で第1志望校に合格できる受験生は3割と言われていますから、決まった進学先のことを複雑な気持ちで受け止めている家庭も多いでしょう。
しかし、ここから先は「偏差値表や志望順位は忘れる」ことをおすすめします。
偏差値の高低はあったとしても、どの学校も素晴らしい教育を行っています。進学する中学の名前が子どもの一生を決めるわけではありません。たいせつなのは、どんな中高生時代を過ごすか。その後どんな進路を選択し、社会に羽ばたいていくかです。
言い換えれば、受験終了後の過ごし方次第で、その後の進路は変わるということです。
数学と英語によって学力順位はシャッフルされる
進学先決定後は、中学からの学習準備を視野に入れて過ごすのがいいと思います。
中学からは数学・英語という新しい科目の学習がスタートします。しかも、それが重要科目になるため、それまでの学力順位はシャッフルされることになります。
中学受験の算数にはセンスが必要な面があります。しかし、中学進学後の数学に関しては訓練量、努力がものをいうようになります。
中1・中2で学ぶ数学の内容はその後の基礎です。正負の数、文字式、方程式、そのすべてが微分積分など、高校での学習につながっていきます。算数では苦手な単元を放っておいても別の単元が得意ならなんとか点が取れますが、数学は一つひとつをきっちり仕上げ、積み重ねていかなくてはなりません。
これは英語も同じこと。be動詞ができない人は高3の英文が読めません。
中高生を指導している経験からいうと、中2までの基礎固めが大学受験の成否を左右するという印象を受けています。そこからの逆転はかなり難しいのが現実です。
部活が忙しくなる夏までに数学・英語の予習を
では、具体的に今どうすればいいのか。
おすすめなのは、この2月から、部活が忙しくなる夏までに、数学と英語の予習をしておくことです。
できればちょっとがんばって、中学3年間分の内容を見ておくといいですね。
「3年分も!?」と驚くかもしれませんが、検定教科書を見ると、中学3年分で習うことってそんなに多くありません。内容も簡単だから塾に通うまでもない。
書店に行けば、中学用の教材は豊富にそろっていますから、そこで本人が気に入ったものを選ばせて今から取り組んでみましょう。
この先、授業で習う内容がざっくりとわかっていれば、戸惑わずスタートダッシュができます。最初に余裕をもって取り組めれば、自信がついてその後の勉強も楽しくなります。
過度にストレスをかける必要はありません。とにかく大事なのは、勉強する習慣を切らさないこと。それにつきます。
通塾は、「大学受験でリベンジしたいから通いたい!」「得意なこの科目を武器にしたいから」など、本人が自ら希望した場合ならいいでしょう。
大変だった受験生活がようやく終わり、のんびりさせてあげたいところですが、実はこれからが本番。
学習習慣を途切れさせることなく、その後の進路に向けたスタートを切りましょう。