「ポスターを見たら、何だか見下されてバカにされているような気がして…」
都内で働く40代の女性がそう複雑な心境を話すのは、東急田園都市線の二子玉川駅の構内に貼ってあるポスターのことです。
頑張っているのはテレワーカーも同じ
《東急電鉄 二子玉川駅一同》からとして、
《エッセンシャルワーカーの皆様へ 毎日ありがとうございます》
というメッセージが、東急線キャラクター『のるるん』の《新型コロナウイルスが早く収束しますように…》という吹き出しとともに書かれています。
いまだ猛威をふるうコロナ禍で、医療従事者や公務員、鉄道職員など、社会インフラ維持のためにテレワークができない職業の人たちを励ます内容だと思いますが、この女性は別の意味を感じとってしまったようです。
「頑張っているのは、テレワーカーや学生などすべての人たちです。
それをことさらエッセンシャルワーカーだけを区別して強調するのは、分断を生むことになるのではないでしょうか。
これが別の路線の別の駅ならそこまでは思わなかったかもしれませんが…」
"ニコタマ"へのコンプレックスも…
女性のモヤモヤが晴れないのは、今回のポスターが二子玉川という場所に貼られていたということもあるようです。
ニコタマの愛称で親しまれる二子玉川は東京・世田谷区の多摩川沿いの街で、近年は大型のショッピングモールやタワーマンションが建ち並び、人気タウンになっています。
同じく有名な、自由が丘を走る東急大井町線も乗り入れている二子玉川駅という象徴的な場所で、女性は“格差”を感じてしまったのかもしれません。
「私も毎日、出社しなくてはならない身なので、そんな労働者のひがみやコンプレックスかもしれませんが、残念な気持ちになりました…」
批判的な意見はない
そこで、今回のポスターを作成した意図や反響を東急電鉄株式会社の広報部に聞いてみました。
──ポスターを作成した目的、過程。内容の真意を教えてください。
同じエッセンシャルワーカーの立場から、二子玉川駅の駅係員が発案し、エッセンシャルワーカーの皆様に対し日頃の感謝を込めて作成いたしました。
──このポスターが貼られているのは、二子玉川駅だけですか?
こちらのポスターは、二子玉川駅のみで掲出しています。駅係員がアイデアを出して作成した、ほかの駅にもメッセージが掲出されています。
──このポスターに関する意見や賛否は寄せられていますか?
撤去要望等の批判的なご意見はいただいておりません。
──ポスターをネガティブにとらえた人がいたとしたら、どのように説明しますか?
趣旨としては、最初でご回答させていただいた通りですが、表現方法や内容については、検討した上で引き続き、このような取り組みを継続していこうと考えております。何卒、ご理解いただきますようお願い致します。
駅員さんの発案だということなら…
女性に改めて聞いてみると、
「私と同じ現場のエッセンシャルワーカーである駅員さんの発案ということでしたら、他意はないようなので、納得することはできました」
この女性は、コロナ禍で心がささくれ立っていたこともあるようです。これからも二子玉川駅を利用するつもりだそうです。
文/CHANTO WEB NEWS 写真/女性読者(ポスター)