在宅で仕事ができる、時間の融通が利くなど、子育てと両立がしやすいというイメージがある「フリーランス」という働き方。実際はどうなのでしょうか。

 

9歳の男の子を育てながらフリーランスとして活躍している漫画イラストレーターのカワグチマサミさんに自身の体験をもとにお話を聞きました。 

働く時間も場所も自由!子育てフリーランスの最大の強み

── カワグチさんは子育てフリーランスとして活動していますが、特にどんなメリットを感じますか?

 

カワグチさん:

一番は好きな時間に好きな場所で働けることです。仕事の調整がしやすいことも大きいですね。この時期は休む、今は仕事をセーブする、という具合に、自分でスケジュールを組み立てやすいんです。

 

育児をしているとつねに「何が起こるかわからない状態」なんですよね。夜泣きや授乳のせいで眠りたいのに眠れなかったり。

 

会社員だと、ほとんど寝ていなくても翌朝は決まった時間に出社しなければならない場合が多い。すごく疲れていても周囲に話すことすらはばかられるかもしれません。フリーランスの場合、そういったストレスから解放されるのは大きいです。

 

子どもの成長に合わせて、仕事もスケジュールやボリュームを調整して成長させていけるのもいいところです。 

働く母ちゃんの姿を全部見せたい

── フリーランスだと、昼間子どもの用事で出かけても、別の時間帯で仕事を調整できますよね。

 

カワグチさん:

そうですよね。あと、もうひとつの大きなメリットは、基本的に在宅で仕事をしているので、子どもが私の仕事を身近に感じてくれることです。

 

私の場合、母が専業主婦で父は会社員だったのですが、父が日中何をしているのかまったく知らなくて。きっと辛さや楽しさもあったと思うけれど、その中身を知らないから「仕事=お金を稼ぐため」としか思っていなかった気がします。そうすると感謝も半減しますよね。

 

── お金を稼ぐこと以外にも、仕事には学びや成長もあって、もしかしたらお父さんは楽しく仕事していたかもしれないですよね。

 

カワグチさん:

そうなんですよ。フリーランスの場合は基本的に「好きな仕事」のはずだから、その楽しさを子どもに伝えやすいと思います。

 

逆に、仕事の締め切りに追われてパニックになっている姿も見せているので、私がゴロゴロ寝転がっていたら、「ママ、仕事終わったの?」なんて声をかけてくれたり。仕事をする私の隣で「僕もここで宿題するね」と声をかけてくれると、一緒に頑張れます。一種の“社会科見学”が自宅でできているんじゃないかな。

経済的なリスクは夫婦で役割分担を 

── 逆にデメリットは何でしょうか?

 

カワグチさん:

フリーランスを始めたばかりのころなどは、仕事のボリュームも収入も安定しないので、経済的な面で不安に感じることがあると思います。

 

共働きの場合は、パートナーが働いているので、経済的なリスクは比較的少ないですよね。まだ子どもから目が離せない時期は、特にパートナーの収入で生活基盤をつくりつつ、少しずつ仕事を始めて増やしていくといいと思います。わが家の場合は、復職したばかりの頃は自分の収入は貯蓄に回し、夫の収入を生活費に当てていました。

 

子どもの成長に合わせて稼げるようになると、少しずつ生活水準も上がっていきます。そうなると、家族ももっと応援してくれるようになるんです。

 

── わかります。うちは娘がいるのですが、小さいころは「どうしてママはお仕事するの?」と言っていたのに、いつからか「もっと稼いで」と言われるようになりました(笑)。そのほかにデメリットはありますか?

 

カワグチさん:

すべて自分一人でいろいろな企業との仕事を進めなければならないので、責任がついて回りますよね。自分に依頼してくれているので、基本的に他の人には頼れません。

 

特にスケジュール調整はクライアントからの期待に応えて責任を果たすためにもとても需要なポイントです。私もこれまで、状況をみながら余裕をもってスケジュールを組んだり、納期までの日数を長めにできるか相談したりと、工夫しながら乗り越えてきました。

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── たしかにフリーランスは責任が大きいですが、やりがいも感じますよね。

 

カワグチさん:

でも、子どもが小さいときは、納期が厳しい仕事やボリュームが多い仕事は難しい場合もあると思います。どんなにやりたくても。仕事への思いが強いぶん、家事も育児も頑張らなければとすべて背負ってしまい、自分の首を絞めることにもなりかねせん。

 

私も、今でこそ書籍の仕事が増えましたが、そういった大きな仕事を受け始めたのは、保育園入園後です。産後すぐのころは、名刺に4コマ漫画や似顔絵を描く仕事が中心でしたね。でも、クライアントが名刺を配った相手が私の漫画や似顔絵を見てくれるので、意外と営業になるんです。

 

仕事を受ける際に特に気をつけているのは、クライアントには自分の家庭の状況を正直に話すこと。そうすると、「調整しましょう」「少しボリュームを減らしましょうか?」と無理しない方法を一緒に考えてくれるので、気持ちがラクになり、仕事に集中できます。 

自分だけの「子育てフリーランスの地図」を持って 

── 子育てフリーランスを選択肢の1つとして考えている方に、特に伝えたいことは?

 

カワグチさん:

「子育てとフリーランス」をテーマによく講演やセミナーをさせていただくのですが、「まず何から始めるといいのかわからない」という相談が一番多いんです。

 

もちろん、フリーランスには向き不向きもあります。お子さんがまだ小さいけれどフリーランスで働きたいという方は、最初は気楽に始めていいと思います。

 

最初から「やるぞ!」と気合いを入れるより、1度やってみて、自分に合っていると思ったら続ければいいし、違和感をもったらパートタイムや会社員など他の働き方に変えればいい。

 

メリットとデメリットを照らし合わせて、始めてみたら思っていたよりも向いていたということもあるし、やっぱり向いていなかったと思っても、違う働き方をすればいいだけ。あまり深く考えすぎず、やりたいと思う人にはぜひチャレンジしてほしいですね。

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── まずは始めてみるということですか?

 

カワグチさん:

はい。それでもし、フリーランスの仕事を続けたいと思ったら、働き方の具体的なイメージとなる「自分だけの地図」を持ってほしいです。

 

働きたいという思いはあっても、他の人と自分を比べて、心がポキッと折れてしまう人が多いんです。SNSで「この人頑張っているなあ」「フォロワーさんが多いなあ」と焦って、ストレスを感じてしまうのは本当にもったいないことです。

 

どんなに羨ましい状況にある人がいたとしても、その人のすべてをマネしたいとは思わないはずです。その人なりの生き方があって、働くための条件もバラバラなのだから、人と比べることはやめたほうがいい。

 

そのためにも、自分の「こうしたい」イメージを具現化する地図が役に立つと思います。

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── 「自分だけの地図」を作るときのポイントはありますか?

 

カワグチさん:

比べる必要はないけれど、やはりお手本をあったほうがやりやすいですよね。書籍でも雑誌でもSNSでもいいのですが、「この人素敵だな」「こんな働き方がしたいな」と思った人を3人以上見つけるといいと思います。1人の人だけを参考にすると、どうしても偏ってしまうので、「理想の働き方はこの人、理想の仕事はあの人」という感じで。

 

その次は、どうして「いいな」と思ったのか分析したり、マネをしたりしてみてください。いいとこどりをしながら、なりたい子育てフリーランスのイメージに近づけていくと、自分だけの地図が完成していくと思います。

 

個人で活動するフリーランスは「実験の最中」のような状態。私は、突っ走って失敗ばかりだったけれど、失敗しながら進んだぶん、考え方がどんどんシンプルになっているし、やりたいことに着実に近づいていると感じています。

 

PROFILE カワグチマサミさん

漫画イラストレーター。1984年、大阪生まれ。デザイン会社勤務後、2010年から漫画家・イラストレーターとして活動を始める。「スキあらばゴロゴロしながら、いい感じに働く」をモットーに漫画連載や講演など多方面で活躍中。9歳男児の母。著者に『子育てしながらフリーランス』(左右社)など。

取材・文/高梨真紀