事実婚や夫婦別姓など、結婚のあり方が多様化している時代。それは結婚に限らず離婚も同様です。

 

子育てが終わった段階でパートナーを解消する「熟年離婚」、子どもが小さいうちに離婚して、子育ては元夫と協力しながらも「新たな人生を歩むタイプ」、再婚して新しい家族を築く「ステップファミリー」など、さまざまなパターンがあります。

 

家族社会学が専門の山田昌弘さんに、離婚する夫婦の現状、今後増えそうな離婚のパターンについてお話を伺いました。

経済的理由で離婚できない中間層

── 離婚の現状を、山田さんはどうご覧になっていますか。

 

山田さん:

多くの女性は「いまの生活よりも経済的によくなる結婚でなければしたくない」と考えています。離婚も同じで、いまの生活よりも経済的に悪くなる離婚はしたくないと考える人は多いです。

 

いわゆる年収500万円程度の中間層世帯の女性は、離婚すると経済基盤を失うため、離婚したくてもできないというのが実情です。子どもがいればなおさら、子どものために我慢しようと考える人が多いでしょう。

 

もちろん離婚にはさまざまな個別の理由が存在します。ですが、いざ離婚となったとき、やはりお金の問題は無視できません。離婚は、富裕層と貧困層に多いのが現状です。

 

富裕層は、夫に経済力があるから多額の慰謝料をもらえるし、妻に経済力があるケースもある。経済的にダウンする心配がないから、離婚しても困りません。一方貧困層は、そもそも結婚が経済的基盤になっていないので、その点での躊躇はありません。

 

中間層で離婚するのは、深刻なDVやモラハラ、性格の不一致などがあり、経済基盤を失っても婚姻生活を解消したいという人が多いです。

 

国や企業のひとり親支援制度が充実することで、経済基盤がなくても離婚に踏み切れる人も増えています。かつては、実家の支援がなければ経済的に困窮してしまっていたことを踏まえれば、前向きな変化といえるでしょう。

在宅時間増加で露呈した価値観の重要性

── コロナ禍による結婚や離婚への影響はあるでしょうか。

 

山田さん:

結婚率は下がりましたよね。経済的に安定している人が減ったので、当然の結果といえます。東日本大震災のあと「絆婚」が増えたなどといわれましたが、実際には結婚相談所に登録する人が増えただけで、結婚率が上がったわけではありません。

 

既に結婚している夫婦の場合は、価値観が合うか、共通の趣味があるかどうかで明暗が分かれた印象です。

 

在宅時間が増え一日中顔を突き合わせていれば、価値観の違いも露呈します。たとえば、「夫がトイレのあとに手を洗わないことに初めて気づいた、それが許せない」という人もいる。

 

結婚の条件として、これまでも「価値観」は大切だとされていましたが「経済」「愛情」を越えるものではありませんでした。ところがコロナ禍で生活様式が変わり、結婚に対する意識も変化しました。今後は「価値観」がより結婚の条件として大きなウェイトを占めることになるでしょう。

60代70代の離婚と再婚が増える!?

── 今後は、どのような離婚パターンが増えるとお考えですか。

 

山田さん:

子育てが終わった世代の離婚、再婚は、今後も増えると思います。恋愛結婚が当たり前になった世代が、いま60代、70代を迎えています。

 

若い世代は恋愛への関心を失っている人も増えています。30代、40代の子育て世代は、子どものために愛情がなくなっても我慢して夫婦関係を続けている。むしろそれより上の世代のほうが「また恋愛したい」という意欲をもっています。

 

カップル文化がもともとなく、家を重視してきた日本では、子育て後に初めて「ロマンス」を経験するという人たちが現れてくるのではと予想しています。

 

── 3組に1組が離婚する時代、有名人の離婚も増えていますし、離婚に対する世間のネガティブな見方は変化しているように感じます。

 

山田さん:

たしかに、離婚そのものに対する偏見は薄れたかもしれません。

 

しかし「経済的にまともな生活ができない」ことへの世間体を気にして、離婚に踏み切れない人はまだまだ多いのが実情です。

 

ひとり親に育てられた子どもへのインタビューでも「両親が揃っていないことよりも、経済的に恵まれなかったことのほうがつらかった」という声が多いんです。

 

いまの子どもたちが大人になる頃、男女関係なく経済基盤をもつようになり、ひとり親への支援制度がさらに充実すれば、私たちは結婚や離婚に対してもっと柔軟に考えられるようになるのかもしれません。

 

PROFILE 山田昌弘さん

中央大学文学部教授。専門は家族社会学。著書に『結婚不要社会』(朝日新書)、『パラサイトシングルの時代』(筑摩書房)ほか。「婚活」「格差社会」などの言葉を浸透させた。

取材・文/林優子