中学受験の合否が出る季節。受かる子もいれば、落ちてショックを受ける子も。自分で受験を選択した子は、自分で選んで挑戦しているため、結果の責任を引き受けやすいそう。けれど、受験に納得しておらず、親に「受験させられた」と思っている子は結果を引き受けられず、苦しくなるケースもあると、子育ての専門家である東京成徳大学教授の田村節子先生は話します。
受験させられていると結果責任を子供は取らない
「親が受験させた子は、うまくいこうが、いくまいが、子供は結果を引き受けません」と話す田村先生。うまく行っても、別の選択の方が良かったと思ったり、失敗した場合は、親のせいにして親を責めたりしがちだと言います。
「させられた、と思って自分で結果の責任を取れない子は辛くなりますね。自分で決めてやった場合は、自分の責任だけど、親にさせられて失敗したんだから親のせいだとなったとき、引きずってしまう」
自暴自棄になり、子供が自分のことを大切に思えない危機が訪れます。そのとき、親はどうしたら良いのでしょうか。
「承認が必要です。あなたがいてくれさえいれば良い、という存在承認をしてあげてください」と田村先生。親の希望で受験させられて落ちた場合、親の希望を自分はまっとうできなかったと子供は自分を責めてしまうようです。
「親は『受験だけがすべてではない』と伝え、まだまだ人生の先はこんなにあると0から100歳の年齢の目盛のある線などを書いて『今はここ』と示してあげてほしい」と言います。
子供が目の前の受験結果しか考えられないとき、視野を広げてあげることが、親の重要な役割になります。親御さんが存在の承認を含めて黙って抱きしめてあげるのがいちばんだとも指摘します。
正論を言ってはいけない
親が間違っても、かけてはいけない言葉は「正論」。
「もっと早くやっていれば合格したかもしれないね」などの言葉かけは子供をより追い込んでしまいます。子供自身が「ああしておけば良かった」と思っているので、そこに追い討ちをかけるようなことを言っても、ショックが大きくなるだけです。
まだ受験日が残っている場合は特に親の対応で子供の調子が変わるとも。
「気持ちが落ち込んでるときと、前向きなときでは結果が違いますよね。後ろ向きだと絶対上手くいきません。スポーツでよく言われますが、勉強も同じことです。上手くいくと信じて、リラックスしてのぞむことが大切です」
子供も落ちた経験から、緊張すると次の試験でもパフォーマンスを出せなくなってしまいがち。親は子供がリラックスできるように「あなたが家族の一員で嬉しい」といった穏やかな対応で迎えると良いそうです。
PROFILE 田村節子さん
取材・文/天野佳代子 撮影/木村彩