料理教室で仕込みをする菅野さん
鎌倉にある料理教室は室内が明るい色調で道路に面した壁もガラス張りで開放感たっぷり


自身の母とともに立ち上げた「オーガニック料理教室ワクワクワーク」の代表を務める菅野のなさん。オンラインを通して、さまざまな取り組みを行う菅野さん自身の生き方や人生観に迫りました。 

食事を変えれば日々の生活も変わってくると実感

── 2007年に、管理栄養士であるお母さまと一緒に、料理教室(ワクワクワーク)を立ち上げられたと聞きました。そのきっかけは何だったのでしょうか?


菅野さん:

立ち上げる前は、IT企業でwebディレクターとして働いていました。それが大変な激務で。不規則な生活サイクルになりがちでしたが、私自身は忙しくても食生活が乱れないようにしていました。

 

ただ、多くの社員は、夜中にデスクで揚げものを食べるといったことが日常化。食生活の乱れを目の当たりにしたんです。私のなかでは、脂ものよりも「栄養価が高いものを選ぶ」感覚が普通でしたが、みなさんにとっては違うのかなと。

 

幼いころから管理栄養士の母との生活で、家庭菜園や自然療法を身近に感じて育ってきたので、私自身が思う“食の大切さ”を発信していくことが、社会の役に立てることなんじゃないかって思うようになりました。

 

そこで思い切って、料理教室の運営に転身したのがきっかけです。

 

もともと個人で料理教室を開いていた母は「やりたいことがやれていない」思いをずっと抱いていたようで、二人で「一緒に新しい教室をやろう!」という話になり、立ち上げを決めました。

 

野菜を切る

料理教室の近くには鎌倉野菜発祥の地と言われる直売所があり、新鮮な野菜がひしめいていた 

 

── オーガニックを掲げていらっしゃいますが、それは幼いころのお母さまがつくられた食事によるところが大きいですか?


菅野さん:

母がつくるオーガニック食材を使った料理は、私にとって日常でした。母は私が(母の)おなかにいるときから、オーガニックについて学んだり野菜を取り寄せたりしていたみたいです。

 

オーガニックは体にもいいし、負担がかからないし、何よりおいしい。自然なことであるからオーガニックはいいのですが、みんながいきなり実践する必要はないと思っていて。

 

できるところ、やれることでいいと思っています。それよりは「毎日食べているものを大事にする」「何を食べているかをきちんと把握する」といった基本的なことを伝えていきたいです。

 

ワクワクワークの外観
外から見るとまるでカフェのような佇まいのワクワクワークの外観

 

── 「誰かのために」の精神で続けられているオンライン料理教室。ここに来るまでにさまざまな苦労もあったと思います。


菅野さん:

オンラインでどこまでできるか、最初は試行錯誤でした。(受け手は)どんなふうに画面が見えているか、私たちは何人体制でどのような準備をすると、わかりやすく伝わるかといったことをずっと考えてきて。

 

やっていくうちに、参加者の仕上げた料理を画面に出して見せてもらえれば、「火が通りすぎ」といったアドバイスも的確にできることがわかりました。メンバーとともに今も創意工夫しています。

 

また、講師の育成に関しては「食のことを突きつめて伝えていきたい」と思った方の希望が叶うように、カリキュラムが終了したら終わりにならないようにしています。

 

食や料理に関する知識やスキルを、将来どうしていきたいかを一緒に考えて「講師として人の前に立つ」などその先がちゃんと見えるようにしてあげたい。そういった支援のための努力は惜しみません。

「炊き込みごはん」で食のバランスは整えられる

── 精力的に活動を続ける一方で、菅野さんは2児の母でもありますよね。「料理×家族の存在」として思うことはありますか?


菅野さん:

娘には「食の大切さ」をムリなく伝えていけたらと思っています。ずっと傍らで私のことを見ていたので、小学生ではありますが自然な流れでしっかりごはんづくりを覚えました。

 

そういう意味では自立のサポートができているかなと思います。娘自身、「三代目になる」と意気込んでいたときもありましたけど(笑)、将来はやりたいことをやってほしいですね。

 

「オーガニック料理教室ワクワクワーク」をともに運営している母に関しては、70代ですが本当にイキイキしています!「もっとこんなことをやりたい」と、アイデアが湧き出てくるようで、心から尊敬しています。

 

今、あらゆる世代がずっと元気でやっていく方法を、母と一緒にまとめていて。「食」を通して親子で大切にしたい価値観を共有し、目的に向かって邁進していけることはこの上なく幸せだなと感じます。

 

母は「自分ができる精一杯」をずっとやってきた人。だからこそ、私もそうしていきたいです。

 

店内の撮影に臨む菅野さん
多数の取材を受ける菅野さんも「このアングルからの撮影は初めてです!」

  

── 忙しく働く世のママたちは疲れて何もしたくない日も…。料理とはどう向き合えばいいですか?


菅野さん:

ごはんとみそ汁があれば、それでいい!忙しいママさんは、炊き込みごはんのアレンジをを覚えるとすごくいいですよ。(家族に)食べてほしいものをいろいろ入れ込むだけでOKなので、簡単にバランスごはんができちゃいます。

 

それに具だくさんのみそ汁をたせば、かなり補えるので。おかずたっぷりじゃなくてもいいし、豪華な食事を毎日つくる必要もない。

 

ほっとする食卓がいちばんです。ごはんを毎日大切にするのは長生きするためでもあるので、1食でもいいから大事にしてみてください!

  

PROFILE 菅野のなさん

2007年、管理栄養士である自身の母とともに、「オーガニック料理教室ワクワクワーク」を設立、代表を務める。教室運営、講師の育成、イベントやワークショップの開催など「毎日のごはんから私の幸せを見つける」をモットーに活躍。2児の母。

取材・文/aiko 撮影/伊藤智美