「伝わるパワポ資料」の作り方をパワポ芸人・トヨマネさんが解説する本連載。第4回は、具体的なデザインのテクニックです。要素を「削る」ことでノイズを減らし、理解しやすいスライドを作成できる、とトヨマネさんはいいます。
メッセージを削る
伝えたいメッセージを強調するためには、関係ない情報を極力そぎ落とす、つまり「ノイズを減らす」ことが重要です。ノイズを減らすときの基本的なアプローチは、「削る」です。
最初に削るのはメッセージです。まずはスライドのメッセージを改めて見直し、「要するに何が言いたいのか」を明確にしましょう。
ついつい、いろいろなことを言いたくなりますが、「1スライド1メッセージ」が大原則です。
色を削る
色を削ることも重要です。上手なデザイナーほど、スライドに使う色は最小限に抑え、本当に強調したいところだけに効果的に色を使います。
スライド上で使う色は、すべて意味を持っているべきだと考えましょう。
基本的な考え方は、「見てほしいところにだけ色を使い、残りはグレーにする」です。桃太郎のスライドを例に見てみましょう。4つの円が並べられています。これをすべて違う色にする必要はありません。
このスライドで伝えたいことは右端の「Peach boy」なので、色を付けるのはPeach boyだけでいいのです。
このように不要な色を削ることで、スライドのメッセージが明確になり、すっと理解できるようになります。
図形や線を削る
次に削るのは図形です。パワポには多種多様な図形がありますが、ほとんどの場合、必要な図形は円、四角形、三角形と数種類の矢印だけです。
ギザギザやリボンなど、複雑な形状の要素を配置すると必要以上に目立ち、大切な要素に集中しにくくなります。
同じ理由で、グラデーションや影のような装飾もおすすめしません。まずはシンプルな要素だけでスライドを作りきってみましょう。
線も削る対象です。図形の周囲を囲む線や文字の下線、グラフのけい線なども、実は不要な要素です。ノイズとなってしまうので、あえて使う理由がないときは使わないようにしましょう。
なお、図形は基本的に「塗るだけ」「線だけ」のどちらかにするのがおすすめです。
矢印は控えめに
図解を作るときに欠かせない要素が矢印です。でも、スライドを作る上で犯してしまいがちなミスが、「矢印を強調しすぎる」ことです。具体例で説明しましょう。
これは浦島太郎が乙姫との間で、お互いに価値を提供している図。この図のように、ついつい矢印を大きく描いてしまいがちですが、この図解において「主役は誰か」を考えてみましょう。
この図の趣旨は「2人の間に価値のやり取りが発生している」ことで、2人の間でモノが動くことを示す矢印は、あくまで脇役です。以下のように、矢印の存在感を薄めることで、主役のメッセージが伝わりやすくなります。
こうして「削る」テクニックを駆使することで、分かりやすいスライドをつくることができます。最後にビフォア・アフターの例を紹介します。
これを見れば、「削る」ことの威力が分かると思います。
BEFORE
AFTER
PROFILE 豊間根青地さん
パワポ芸人。1994年東京生まれ。飲料メーカーで通販事業のCRMや広告などを担当する傍ら、趣味のPowerPointで作成したスライドがTwitterで大きな反響を呼ぶ。アカウント(@toyomane)は1年間で5万人以上のフォロワーを集める。「くだらないけど、ためになる」をモットーに、スライド作成のノウハウや、あまり役立たないネタ画像などを各種SNSで発信中。
取材・文/出雲井亨 イメージ写真/PIXTA 資料提供/豊間根青地