会社の提案資料や報告書など、さまざまな場面で活躍するパワーポイント。そんなパワポを使って昔話を説明する資料をTwitterで公開し、「パワポ芸人」を名乗って8万人近いフォロワーを獲得したトヨマネさんに、「伝わるパワポ資料」の作り方を聞きました。
パワポを作るのは、あくまで目的を達成するため
パワポ資料の作り方に入る前に、まずはちょっとだけ「なぜパワポ資料を作るのか」を考えてみましょう。なぜ、私たちは手間暇かけてスライド(パワポのページのこと)を作成するのでしょうか。
それは、何かしらの目的を達成するためですよね。
自社商品を顧客に買ってもらったり、チームに自分の意見を伝えて動いてもらったりするためには、「相手に納得して、行動してもらうこと」が必要です。その手段のひとつがスライドなのです。
では、スライドの強みは何かといえば、それは「ビジュアル」です。いくら口頭で説明を受けても分からなかったのに、ホワイトボードに図を描いてもらったらすぐに理解できた、という経験はありませんか。
ビジュアルで示すことは、文字にはない強力なパワーを持っています。そのパワーを存分に生かすためのツールが、パワポなのです。
メッセージを考えるときは紙とペンで
パワポ資料の目的を理解したところで、いよいよスライド作りに入りましょう。でも、パソコンの前に座るのはちょっと待ってください。
パワポ講座なのに、こんなことを言うと驚かれるかもしれませんが、私はパワポ資料を作るとき、いきなりパソコンでパワポの操作を始めることは、おすすめしていません。
繰り返しになりますが、スライドを作る目的は、「相手に納得して、行動してもらうこと」。
そのためには、「相手に伝える必要があるメッセージを整理して」「文字や写真、グラフなど適切な要素に置き換えて相手に伝える」流れが必要です。これを図で表すと、以下のようになります。
この3つにあえて優先順位をつけるとすれば、最も大切なのは一番左の「納得&行動」。次に「メッセージ」。スライドの写真や図解といった「見た目」は、あくまでメッセージを届けるための手段に過ぎません。
では、実際にメッセージを作っていきましょう。ここで必要なのは、パワポではなく、紙とペンです。紙とペンで手書きすると、頭の中にある考えを直感的に表現できます。
たとえば、「ここにピラミッド構造の図を入れよう」と思っても、パワポだと三角形をいくつも挿入して位置をそろえるなどの操作が必要ですよね。
でも、手書きならササッと数秒で描けます。「考える」という文脈においては、紙とペンに勝る道具はない、と私は考えています。
メッセージは、伝えたい相手への「プレゼント」
相手に伝えるべきメッセージを考えることを、私は「プレゼントを決める」と呼んでいます。プレゼンテーションは、いわば「プレゼント」だと考えているからです。
誰かにプレゼントを渡すとき、ラッピングや渡す場所をいちばんに考える人はいないでしょう。最も大切なのは「何を渡すか」です。それはプレゼンテーションも同様。
「要するに、相手に何をしてもらいたいの?」というプレゼンテーションの目的を、まずはっきりさせる必要があります。
プレゼントの中身が決まったら、次に頭のなかで思い描いたことをすべて紙に書き出しましょう。これは料理を作るときに材料をすべて目の前に並べるのと同じこと。
このタイミングでは書き出す内容の「質」はまったく気にする必要はありません。ひたすら材料になりそうなことを吐き出すのが大切です。
すべてを紙の上に吐き出すことができたら、章立てを作ります。世の中には、プレゼンの目的に応じていくつかのパターンがあります。
資料作成がうまい先輩のまねをしてもいいですし、「プレゼン 流れ」といったキーワードでGoogle検索してみるのもいいでしょう。
例えば、提案資料なら、「結論」>「問題提起」>「解決策」>「安心・信頼」>「行動」といった流れがいいと思います。
以下は、私のパワポ芸人活動の原点とも言えるパワポ作品「もし桃太郎がイヌ・サル・キジにお供になってくれるようプレゼンしたら」の章立てです。
- 結論:サービスに登録してほしい
- 問題提起:人手が足りない、餌が減少
- 解決策:きびだんご給付サービスへの登録
- 安心・信頼:高品質、シナジー送出
- 行動:この場で登録してください
章立てができたら、さらに具体的なメッセージに落とし込んでいきます。基本的には、それぞれの章の「要するに」を説明するためには何が必要か、を考えていきます。
章立てをそのまま落とし込むと、あまりにも事前情報をすっ飛ばした乱暴なスライドになりがちです。そこで、必要な要素を補足して、丁寧なメッセージに分解していくのです。
先ほどの「桃太郎」のスライドに必要な情報を差し込んでいくと、さらに分解可能です。例えば「解決策」であれば、
- サービスのコンセプトはこの通りである
- サービスはこのようなシステムになっている
- 登録すると動物たちの生活のあり方が変わる
というようにかみ砕いて説明できます。この箇条書きの一つひとつが、相手に伝えたいメッセージになっています。
この箇条書きは、いわば物語の「あらすじ」ですから、これを読めば何を伝えたいかがある程度想像できるようになっているのが理想です。
あらすじの完成度をチェックするために、この段階で一度壁に向かってプレゼンしてみるのがおすすめです。スライドなしでも言葉がスラスラと出てくればOK。
逆にどこかで引っかかるようであれば、完成度がたりないのかもしれません。もう一度ステップをさかのぼり、箇条書きを作り直してみましょう。
PROFILE 豊間根青地さん
パワポ芸人。1994年東京生まれ。飲料メーカーで通販事業のCRMや広告などを担当する傍ら、趣味のPowerPointで作成したスライドがTwitterで大きな反響を呼ぶ。アカウント(@toyomane)は1年間で5万人以上のフォロワーを集める。「くだらないけど、ためになる」をモットーに、スライド作成のノウハウや、あまり役立たないネタ画像などを各種SNSで発信中。
取材・文/出雲井亨 資料提供/豊間根青地