3組に1組が離婚する時代とはいえ、離婚には相当なエネルギーがいるもの。

 

1年半の離婚調停の末に、ようやく自由になれたという松下みかさん(仮名・28歳)。

 

現在は新しい家族と穏やかな日々を送るみかさんに、結婚生活から離婚成立後の現在の暮らしについて聞きました。

夫に3時間説教される“普通じゃない”生活

── 前の夫はどんな人でしたか。

 

みかさん:

私は22歳、彼は20歳上で結婚したのですが、常に「おまえは何も知らないから教えてやる」というスタンスでしたね。

 

当時はモラハラという言葉も知らなかったし、価値観の違いかな、結婚したらどちらかが歩み寄らないといけないのかな、くらいに思っていました。

 

授かり婚だったので、私は仕事を辞めて家に入りました。

 

彼はマンションを経営していましたが、どれくらい収入があるかも教えてくれないし、生活費も渡してくれない。基本的には在宅で仕事をしていたので、家で一緒なのはもちろん、買い物も一緒に行っていましたね。

 

── 新婚のうちはいいかもしれませんが、ずっと一緒というのは息が詰まりそうです…。

 

みかさん:

常に一緒に過ごすのが当然という雰囲気で、家族や友人とはなんとなく疎遠になっていきました。

 

しかも当時の結婚生活は、どことなく人に話しづらくて。たとえば「引き出しに入れる箸の向きが違う」と、彼に3時間説教されて土下座して謝ったこととか…。おかしいですよね?これ話したら引かれるだろうな、普通じゃないよな、ということが多かったです。

 

彼はイクメンの集まりに参加するなど、表面的にはイクメン風でしたが、子どもが言うことを聞かないとキレて手を出すこともありました。

 

── 結婚当初は歩み寄りを意識していたみかさんが、そこから離婚に至ったきっかけってなんだったのでしょう。

 

みかさん:

地方から私の両親が来ることになったときに「会うな」と言われたことです。もともと彼は、私が家族や友人に会うことを邪魔する傾向にありましたが、本当に腹が立ってもめました。

 

そのときふっと気持ちが冷めて「離婚しよう」と思ったんです。長男が2歳のときでした。

 

離婚したいと告げましたが、彼は拒否。

 

らちが明かないので、私は長男を連れて実家に戻り、離婚調停を申し立てました。離婚調停は、調停委員や裁判官が間に入ってくれるので、彼と会わずに離婚を進められるのはいいのですが、時間がかかるんですよね。私の場合は、申し立てから離婚成立までに1年半かかりました。

弁護士費用を払えず自力で離婚調停

── 離婚調停は弁護士などを介さずひとりでされたそうですね。

 

みかさん:

ええ、弁護士費用を払うお金もなかったし、全部ネットで調べて自分でやりました。

 

前夫を説得して、私の住む地域の裁判所まで来てもらったので、私の交通費も発生せず費用はほとんどかかりませんでした。

 

調停が長引いたのは、前夫が途中から長男の親権を要求したからです。私も親権だけは譲りたくなかった。

 

結局、審判で私の親権が認められて、慰謝料や養育費はいっさいもらわないことにして、離婚を成立させました。

 

── 離婚調停中の1年半、どのような生活でしたか。

 

みかさん:

私は実家があったからまだよかったのですが、児童扶養手当などは正式に離婚してからでないと受給できないので、収入はゼロ。生活はきつかったですね。実家に戻って、まずはハローワークの学校に通って事務系の資格を取り、就職活動をしました。

 

でも、シングルマザーで子どもが小さくて経験もない…条件が悪すぎてなかなか決まらなくて。10社以上受けて、やっと正社員で採用されたのはいわゆるブラック企業でしたけど、そこでとにかくお金を貯めよう!と思ってがんばりました。

 

ただ、離婚が成立するまでのあいだ、彼の姓で生活するのはいやでしたね。離婚することが決まっているのだから、就職先や子どもの保育園で、離婚後の姓を認めてほしかったです。

── 現在は、新しいご家族と暮らしていらっしゃるのですね。

 

みかさん:

はい、今の夫とは、前に勤めていた会社で知り合いました。明るくて周囲の人に慕われていて、前の夫とは正反対(笑)。

 

昨年、娘が産まれてからも小学校1年生の長男のことはかわいがってくれて、親子というより兄弟みたいです。

 

離婚した方のなかには「結婚はもうこりごり」などという方もいますが、私はそうは思いませんでした。

 

前の夫とはうまくいかなかったけれど、結婚は幸せなもの、というイメージがあって。ただ、もう離婚したくないとは思っています(笑)。

 

── 離婚したいけれど、一歩が踏み出せないという読者もいるかもしれません。

 

みかさん:

私、迷っているうちは、離婚するべきじゃないと思うんです。

 

これは離婚経験のある友人たちも言っていますが「もうダメだ」と思ったら、離婚以外は考えられなくなります。

 

「離婚」の二文字がすっと降りてくる。そうなったら、不安はあるかもしれませんけど、離婚したほうがいいかなと思います。収入がなくても手に職がなくてもなんとかなります!離婚調停は大変でしたが、私は離婚して自由になれて、本当によかったと思っています。

 

 

誰にも頼らず、ひとりで離婚調停を申し立てたみかさん。離婚を経験したことで、経済的にも精神的にも自立されたのですね。「結婚は幸せなもの」という言葉が、印象に残りました。

取材・文/林優子 ※画像はイメージです