遠藤まめたさん

多様性が多く語られるようになった昨今。わが子がもし同性愛について悩んでいたら、どう接したらいいでしょうか。LGBTQに悩む子どもと若者を支援している「にじーず」の代表・遠藤まめたさんに話を聞きました。

「同性が好き」という子には…

── LGBTQ当事者である子どもの悩みには、出生時に割り当てられた性別と性自認が異なる「トランスジェンダー」や、同性を好きになる「同性愛」などが挙げられます。子どもが「自分は同性が好きかも」と思うのはいつごろからでしょうか?

 

遠藤さん:

男女間の初恋の年齢が人によって異なるのと同じように、人がいつ同性を好きになるかは個人差が大きいんです。幼稚園の年齢でわかっていたという人もいれば、大人になって初めて気づく人もいます。

 

宝塚大学看護学部の日高庸晴教授がゲイ・バイセクシュアル男性を対象にした調査(有効回答数1,025人)によれば、平均して13歳ごろ「同性が好きかも」となんとなく思い始め、はっきり自覚するのは17歳と調査結果で示されています。

 

思春期には自分が同性を好きであることを受け入れられず、「頑張れば異性を好きになれるんじゃないか」「自分は普通じゃないのかも」と悩み、異性と付き合ってみたりする子もいます。

 

女性が同性を好きになる平均年齢は、まだはっきりとは調査で明らかにされていません。日本の性的指向に関する調査が、ゲイ・バイセクシュアルにフォーカスしたものが多いという背景があるからです。

遠藤まめたさん
「トランスジェンダーと同性愛は違うことをまずは知ってほしい」と遠藤さん

── そのことに気づいたら、家族はどう向き合えばいいですか?

 

遠藤さん:

同性を好きになることはおかしいと周囲の人が言っていたり、いじめやからかいを見聞きしたりしていると、自分が同性愛者かもしれないと気づいたとき、不安やネガティブな感情を抱きやすくなるでしょう。とくに親が同性愛者に対して否定的だと、子どもは「自分はダメだ」「本当の姿を知られたら家族も離れてしまう」と感じるし、なかには「自分の人生おしまいなんじゃないか」と思ってしまった人もいます。

 

そうならないためにも、わが子がLGBTQの当事者であってもなくても、「自分の家族は大丈夫なんだ」と安心できるような態度で接してあげてほしいです。

LGBTQに悩む子が、危険な目に遭わないために

── 遠藤さんは10代〜23歳までを対象に支援団体「にじーず」を主宰していますね。立ち上げたきっかけは?

 

遠藤さん:

いまはインターネット上にLGBTQの情報はあふれています。ただ、ネットしか情報源がないのも問題で…。子どもたちは自分と似たような悩みをもつ人を見たことがないから寂しさを感じるし、悩みを聞いてほしい。けれどもネット上には、子どものそういった感情を利用して、性的搾取を目的に接近してくる悪い大人がたくさんいるのも現状です。

 

遠藤まめたさん

遠藤さん:

その状況を危惧して、「似た境遇の友達がほしい」「誰かに話を聞いてほしい」と思っている子の居場所をつくるために「にじーず」を立ち上げました。

 

10代は友達や仲間との関係がすごく大切。子どもたちも、年齢の離れた私たちと恋バナをしたいとは思っていません。中高生が、同じような年齢の子たちとわいわい盛り上がっていて、スタッフも様子をみながら、あえて会話の中には入っていかないこともあります。そういう経験が大事だと思っています。

 

学校生活や家族との関係に悩んでいる子や、不登校の子も多いです。半分ぐらいの子はここに来ていることは家族にも秘密。基本的には自由に過ごせる場なので、遊びたい人は遊ぶ、話したい人は話すという感じですが、仲間を見つけた子どもたちの変化はすごく、最初は自信のなさそうだった子が先生に「自分はズボンで登校したい」と言えるように変わっていったりしています。

 

LGBTやそうかもしれないと悩む子は、ぜひそうした団体を頼ってほしいなと思います。

 

PROFILE 遠藤まめたさん

1987年埼玉県生まれ。トランスジェンダーとしての自らの体験をきっかけに、10代後半よりLGBTの子ども・若者支援等を主なテーマとして取り組む。2016年、10代から23歳までのLGBT(かもしれない人を含む)のための居場所「にじーず」を設立。著書に『みんな自分らしくいるための はじめてのLGBT』(ちくまプリマー新書)など。

取材・文/大野麻里 撮影/野口祐一