生理が始まったばかりの子どもが、生理痛に苦しんでいたら、あなたはどうしますか。なかには早い時期から生理痛が重い子どももいるようです。

 

生理痛がある子どもに鎮痛剤は飲ませてもいいのでしょうか。最近生理痛対策として普及してきている「低用量ピル」は?産婦人科医の高橋怜奈先生に聞きました。

小学生でも鎮痛剤は飲んでいい

「生理痛くらい我慢しなくちゃ」と、鎮痛剤を飲まない人もいますが、薬を飲んで痛みをコントロールすることはとても大切です。大人はもちろん、子どもであっても、です。

 

子どもに鎮痛剤を飲ませることに抵抗がある保護者もいるかもしれませんが、毎月の生理で飲む程度では、薬の飲み過ぎにはなりません。それよりも、毎回鎮痛剤が必要なほどの生理痛があることのほうが問題です。

 

生理痛はあって当たり前というものではありません。重大な病気が隠れていたり、その前段階である可能性もあります。初潮から間もないのにひどい生理痛があり、調べてみて子宮内膜症がわかったケースもあります。

 

鎮痛剤が必要な生理痛が続くようなら、産婦人科で相談してみましょう。決して我慢してやり過ごさないようにしてください。

鎮痛剤は子どもの体重で選ぶ

子どもの生理痛の鎮痛剤は、ドラッグストアの鎮痛薬コーナーで購入できます。用途に生理痛と書かれてあれば、基本的にどれを選んでもかまいません。

 

小学生の場合は、まず「小児用」を選ぶのが基本ですが、薬の用量は「体重」によって変わるため、体格のいいお子さんの場合は、一概に年齢だけで小児用を選ばないようにしてください。どの鎮痛薬を選んだらいいかわからない場合は、薬剤師のいる薬局に行って相談してみるといいでしょう。

 

当然ですが、飲む際には、用法・用量を守りましょう。薬が効くまでには時間がかかるため、飲むタイミングは痛くなる前、あるいは痛くなりそうなのがわかったら飲むようにすると、生理期間中も快適に過ごせます。

初潮がきていればピルなどのホルモン治療が可能

鎮痛剤を飲んでも生理痛がおさまらない、学校に行けないほどのひどい生理痛の場合は産婦人科受診を。月経困難症として治療の対象になります。

 

月経困難症と診断された場合は、医師が処方するピルなどのホルモン治療が効果的です。

 

たとえばピルは、11回の服用を続けることによって、排卵を止める薬です。生理のときに剥がれ落ちる子宮内膜を薄くする作用があるので生理が軽くなり、痛みも軽減します。最近は生理の回数を減らせるピルや、ピルがリスクのために服用できない方には黄体ホルモン療法や子宮内黄体ホルモン放出システムなど、さまざまな治療法があります。

 

親世代にとっては、ピル=避妊の薬というイメージがあるかもしれませんが、ピルは、生理痛や婦人科系疾患の治療におけるスタンダードとなっています。

 

たとえば子宮内膜症。子宮内膜もしくはそれに類似した組織が、子宮外にできてしまう病気ですが、これは生理のときに一般的に起きる、経血の腹腔内への逆流が一つの原因とされています。そのため、生理を繰り返すごとに、生理痛などの症状は悪化し、子宮内膜症も進行してしまうのです。

 

かつてより、女性は妊娠・出産の回数が減り、生涯の生理回数は増えています。そして、そのことが子宮内膜症の発症につながるのです。ホルモン治療で生理を軽くしたり、生理の回数を減らしたりすることが、子宮内膜症の発症予防になります。

 

また、ホルモン治療には、部活動やテストなどで忙しい思春期に、生理をコントロールできるというメリットもあります。

 

世界保健機関(WHO)では、初潮がきていれば、ピルを服用して問題ないとしています。

 

日本は海外に比べて、ホルモン治療が普及していないので誤解も多いのですが、生理をコントロールするメリットを知り、選択肢のひとつにしてほしいと思います。

 

ホルモン治療には、低用量ピル、超低用量ピル、黄体ホルモン療法、子宮内黄体ホルモン放出システムなどさまざまな選択肢があるので、お子さん自身に合った治療法を医師と相談して決めていけるといいですね。生理を我慢せず、快適に過ごしていきましょう。

 

 

PROFILE 高橋怜奈(たかはし・れな)さん

2009年東邦大学医学部卒業。産婦人科専門医、医学博士。東邦大学医療センター大橋病院産婦人科勤務、四ツ谷レディスクリニック非常勤医師スタッフ。「産婦人科医You Tuber」としても活躍。監修に『おとなも子どもも知っておきたい新常識 生理のはなし』(主婦と生活社刊)がある。

取材・文/樋口由夏