「最近、胸がふくらんできたから、そろそろ生理が始まるのかも…」「近頃の子どもは発育がいいから、自分の初潮より時期が早いかもしれない」
そんなふうに、わが子の初潮に対して心構えをしている人もいるかもしれません。
産婦人科医の高橋怜奈先生に、子どもの生理が始まるタイミングと、女の子の体におきる変化について伺いました。
初潮のサインは胸のふくらみと陰毛
初潮を迎える年齢は10〜14歳の間が多いといわれています。でもこれはあくまで年齢で考えたもの。実際には個人差があります。
初潮を迎える前には、いくつかのサインがあります。代表的なものが、「胸がふくらむ」「陰毛が生えてくる」こと。この2つのうち、どちらのサインも見られないまま初潮がくることはあまりありません。これに加えて遺伝も関係してくるので、母親自身の初潮年齢もひとつの目安になります。
さらに、かかわってくるのが体脂肪。よく体重と誤解している人がいますが、初潮を迎えるためには、17%以上の体脂肪率が必要とされています。身長が高く体重があるお子さんでも、やせていて体脂肪が少ないと、初潮は遅い可能性があります。
初潮前後・女の子の体におきる変化
女の子は、初潮を迎える前に、身長が伸び、体が女性らしくなります。これは成長ホルモンによるもので、この時期は身長だけでなく、当然骨も伸び、骨密度も増えます。
生理は、女性ホルモンのエストロゲンが分泌されることによって起こりますが、このエストロゲンには成長ホルモンの働きを弱める作用があります。初潮がきた、すなわち成長が止まるというわけではありませんが、やはりそれまでに比べると、身長の伸びは緩やかになります。初潮後、身長が伸びる平均は4〜6cmと言われています。
早すぎる初潮は低身長・低骨密度のリスク
初潮が10歳前など、あまりにも早い時期に来てしまうと、エストロゲンが成長ホルモンの働きを弱めてしまい、低身長になる、骨密度が増えないなどの問題が出てきます。
10歳6か月よりも前に月経が発来する、8歳より前に陰毛が生えてくる、7歳6か月より前に乳房がふくらみ始める場合には、「思春期早発症」の可能性が。先に挙げた低身長や骨密度が増えないという症状のほかに、早くに女性化が進むことで、周囲が違和感を覚えたり、本人が恥ずかしがったり精神的負担を感じる懸念があります。
ホルモンの異常が隠れている可能性もあるため、小児科や内分泌科医で相談すると安心です。
一方、15歳を過ぎても初潮が来ないことを初経遅延といいます。女性ホルモンの分泌量が少なかったり、子宮や卵巣などの臓器に異常があったりする可能性もあるので、体に不調がなくても、産婦人科を受診して精査をしてもらいましょう。
PROFILE 高橋怜奈(たかはし・れな)さん
2009年東邦大学医学部卒業。産婦人科専門医、医学博士。東邦大学医療センター大橋病院産婦人科勤務、四ツ谷レディスクリニック非常勤医師スタッフ。「産婦人科医You Tuber」としても活躍。監修に『おとなも子どもも知っておきたい新常識 生理のはなし』(主婦と生活社刊)がある。
取材・文/樋口由夏