入試の下見

「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

関東では、埼玉県、千葉県を皮切りいよいよ始まる中学入試。わが子が実力を存分に発揮できるよう、保護者にできるアクシデント対策とは…?

1.交通手段のシミュレーション

入試当日は、さまざまなアクシデントが起こります。

 

とくに移動時は要注意です。ラッシュにもまれて子どもが乗り物酔いする、渋滞でバスが遅れる、道に迷う…。

 

午後入試も利用する場合、次の学校へ向かうのにタクシーを使いたいが思うようにつかまらない、学校近くの店が混んでいて昼食場所が確保できない、といったハプニングも。

 

こうした事態の多くは、綿密な下調べや下見である程度は防げます。

 

ネットの路線検索を利用するだけでなく、同じ曜日の同じ時間帯に実際にそのルートを利用してみて、わが子が少しでも快適に移動できる方法を考えましょう。そのうえで当日は集合時間30分前に到着するようにスケジュールを組みましょう。

2.スケジュールの確認

試験を受ける一方で、他校の合格発表や入学手続きの締め切りもどんどんやって来ます。

 

合格が出れば入学金の振り込みをするのか見送るのか、不合格なら予定していた他校の受験を取りやめ、より合格可能性の高い学校へ切り替えるのか…などという判断を1日のうちにすることもあるわけです。

 

各学校の受験スケジュールをしっかり確認して、あらゆる事態を想定しましょう。このあたりはミスの許されない保護者の重大な仕事です。

 

入学手続きの方法と期限の確認はくれぐれも念入りにしてください。

3.寒さ・悪天候への対策

入試が実施される1月、2月は朝の冷え込みが特に厳しい。防寒対策をしっかりしつつ、会場の空調に子どもがスムーズに対応できるよう脱ぎ着しやすい重ね着をさせましょう。カイロを持たせておけば、かじかんだ指先をあたためるのに便利です。

 

関東地方は晴天が多いのですが、何年かに一度は大雪になります。そういうときはバスやタクシーもあてになりません。自宅や試験会場が駅から遠い場合、積もった雪の中を歩くこともありうるわけです。

 

長時間の歩きが予想される家庭では、スノーシューズまたは長靴、雨合羽などを、念のため用意しておいたほうがいいでしょう。

4.ネット手続きならではの注意点

出願も合格発表も入学金の送金も、ネットでできる学校が多くなっています。コロナ禍はその傾向に拍車をかけました。自宅や出先でたいていの手続きができて便利なのですが、「ネットだからすぐできる」と油断して、ミスをしてしまうこともあるようです。

 

出先でスマホを使って済ませるつもりが、ギガが足りなくて慌てた…といった話も聞きます。

 

ネット手続きの場合は、自分で受験票などを紙にプリントアウトしなくてはならない場合もありますから、自宅でプリントアウトするのかコンビニ等でできるのか等も確認しておく必要があります。

5.子どものテンションを下げない工夫

意外とあるのが、志望校に向かう途中、付き添いの保護者と子どもが険悪な雰囲気になってしまうケース。干渉し過ぎてイライラさせたり、受験生の状況をろくに知らず的外れな激励をしたり…。

 

あらかじめ子どもに、保護者の誰に付き添ってもらいたいか本音を聞いておいておくことをおすすめします。仕事などの都合もあるでしょうから、少なくとも行きは受験生本人の希望をかなえ、迎えや昼食場所の確保はもう片方の保護者が担当するなど、上手に役割分担できるといいですね。

 

保護者は早めにタイムスケジュールを組んで、有休を申請するなど準備をしておきましょう。

 

入試は、子どもだけでなく、保護者も想像以上に疲れます。とくに午後入試も受ける場合は、晩御飯の支度をどうするかということまで含め、考えておきましょう。

6.よその家庭の情報は遮断

当日は他家族、ママ友とは一緒に行動しないことをおすすめします。

 

おしゃべりに花を咲かせてリラックス、あるいはリフレッシュしたいかもしれませんが、「Aさんはどこどこに受かったんだって」「今日の問題は簡単だったよね~」といった情報が入ってきて、保護者自身はもちろん子どものプレッシャーになって、いいことなどひとつもありません。

 

中学受験の正体_matome1

移動中のアクシデントや保護者のミスで実力を発揮できないのはあまりにももったいないこと。事前のシミュレーションや下見は念入りに行い、早めの行動を心がけましょう。

 

よその家庭との接触も慎重に、子どもが実力を発揮できるようサポートしてあげてください。

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ