「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は受験シーズンが始まる1月に、6年生が学校を休むことについて。「基本は登校を続けるのをおすすめしていますが、オミクロン株の広がりが心配な今回は判断に悩むのでは」と富永さんは保護者を案じます。
基本的には登校を続ける
中学受験本番を控えた1月、学校を休ませるかどうか悩む保護者は多いですね。少しでも多く勉強させたほうがいいのではないか、感染症が怖いなど、思いはいろいろあるでしょう。
実際、コロナ禍の前でも、1月すべて休む家庭が2割、1月20日以降休む家庭が4割、まばらに休んだり行ったりする家庭が2割、最後まで登校する家庭が2割という印象でした。6年生の1月になって、欠席の多さに驚いたという保護者からの声もよく聞きます。
僕自身は塾講師として、基本的には学校は休まないほうがいいと考えています。
子どもが家にこもって勉強しても、大人が考えるほど効果は上がらないからです。長期休みのように塾で講習があって日々課題が出されるならともかく、家で子どもが長時間自立して勉強するのは難しいもの。
日中は学校で友人たちと学び、夕方以降は受験のための勉強に集中して取り組む。1日家に閉じこもっているよりは、そうしたメリハリをつけたほうが、はかどる子がほとんどです。
感染症流行の状況を注視しつつ、子どもの意向を尊重
ただ、今年の入試は、新型コロナウイルスのオミクロン株の影響が読めない点が、これまでとまったく違います。
感染者もしくは濃厚接触者になったら、その時点で受験はできなくなってしまいます。本番で感染した受験生のために追試を実施する学校もありますが、すべてではありません。
受験することさえできない…、これは受験生にとってつらく残念なことですよね。実際、昨年は、例年なら1月20日から休むところを15日から休むなど、休む日数を長めにとる家庭は多かったです。
ただ、こうした状況に対して、萩生田前文科相は21年4月に「義務教育の在り方として望ましくない」という見解を示しました。同年10月、文科省では、感染経路不明の患者が急増している、同居家族に高齢者や基礎疾患のある者がいるなど合理的な理由がない場合の自主休校は「出席停止」ではなく「欠席」扱いにするという指針を出しました。
保護者には子どもを小学校、中学校に就学させる義務がある、ということを文科省が改めて示した形です。
これにより、従来よりも自主休校しづらい雰囲気になる可能性はあります。
とはいえ、近隣で感染者が出るなどすれば、やむを得ず「休む」という選択をする家庭が出てくるのは致し方ないでしょう。
休むかどうかの判断を下す際、尊重してほしいのが受験生本人の気持ちです。
本人の意向を無視して休ませたり、逆に多くのクラスメイトが休んで動揺しているのに無理に登校させたりすると、ストレスのもとになってしまいます。
それぞれの家庭でしっかり話し合って、どうするか判断しましょう。
休む場合は家庭学習の管理をしっかり
感染の拡大で学校が臨時休校になる、あるいは自主休校することになれば、日中の勉強やその見守りをどうするか考える必要があります。
何をどのくらい勉強したらいいのか、ここでご紹介できればいいのですが、残念ながらそれはできません。
「とにかく過去問をやる」「テキストの苦手分野をやる」など、受験生の学力と志望校の問題傾向によってやるべきことはまったく違うからです。本人と志望校のことをよく知っている塾の先生に相談するのがいちばんです。
また、やるべき内容がわかっても、課題をそのまま子どもに丸投げするのは酷です。保護者が、日中どう過ごすか、時間割を作ってあげましょう。
そのうえで、子どもをひとりきりにしない工夫をしたいところです。学校を休んだ子どもが家でひとりになって、1日遊んでしまったり寝てしまったりすることはよくあるからです。
共働きで保護者が見守ることが難しい場合は、午前中だけでも家庭教師や個別指導を利用するのもひとつの手でしょう。
それも難しいなら、保護者が職場から休憩時間を利用して連絡を入れるといった方法も検討してください。
「1日たっぷり勉強できる!」と保護者がはりきりすぎないことも大切です。適度に遊んだり体を動かしたりする時間も確保しながら、心身共に健康で過ごせるよう心掛けてください。
受験を目前に控えた1月。基本的には、通常通り登校したほうが生活リズムや気持ちにメリハリがついて、勉強もはかどります。
ただ、感染症予防の観点などから休ませる選択肢もありえます。本人の意思を確認したうえで、各家庭で判断しましょう。