SNSで、みずからのスキンヘッド姿やウィッグネタを、交際相手とユーモラスに発信するハゲカノさん(26)。ハゲカレこと彼氏とのコンビ「ハゲップル」として発信しているTikTokには、740万以上再生された動画もあります。そんなハゲカノさんが頭を剃りあげているのは、脱毛症がきっかけでした。
最近は、会社も立ち上げるなど活躍する彼女に、その原動力やコンセプトを聞いてみました。
ハゲていても楽しくやっている
「私は長年、ウィッグを使ってきて、Instagramでウィッグのレビュー(評価)もしてきました。結果、ウィッグは3、40個持っていますが、投稿に自分のハゲている姿を載せることには抵抗がありました。
そんなときにハゲカレと出会い、私がハゲていても、ふたりで楽しくやっていることを発信できたらと思い、TikTokを始めました。ちなみに彼はハゲていません(笑)」
“ウィッグあるある”や、ハゲカノさんがスキンヘッドになる動画は、インパクト充分。思わず笑ってしまうものばかりですが、ここに至るまではさまざまな葛藤がありました─。
脱毛症がひどくなったのは高2
ホルモンの乱れやダイエット、不規則な生活などが原因ともいわれる女性の脱毛症ですが、ハゲカノさんは原因不明のまま、10代のころから悩まされてきました。
「元々、髪質が細くて毛量が少なかったのですが、本格的な脱毛症が始まったのは、高2のころでした。皮膚科で飲み薬や塗り薬を処方してもらいましたが、どんどん抜け落ちるので、大学病院にも通いましたが、改善しませんでした」
多感な思春期に、髪の毛を失っていくことは、さぞつらい経験だったに違いありません。
「当時はロングヘアだったので、ヘアピース(部分的なウィッグ)をすると層ができて、髪型に違和感が出るので、ベリーショートにしました。髪の毛を洗っているときや、ドライヤーをしているときに、手にぎっしり髪の毛がついているのを見ると絶望して、自信もなくしました。
汗や風でウイッグがずれたり、生え際が見えたりすることが怖くて、自転車通学をバスに変更しました。それでも抜け落ちて、フルウィッグにするしかないと思ったときはショックで、泣きましたね…」
ウイッグに振り回されたくない!
ハゲカノさんは、百貨店のウイッグコーナーに駆け込みました。
「このときが、私が自分でウィッグをつくろうと思った原点ですかね。納得のいかない髪型なのに、10万円以上もしたので、親にも申し訳なかったです。
当時はウィッグについての情報もなかったので、仕方のないことでしたが、いつもウィッグをうまくセットできず大変でした」
そんな困難がありながらも、ハゲカノさんが学校を休むことはなかったそうです。
「脱毛症になって1年ほどたった高3のころには、“ウィッグに振り回されたくない!”という気持ちが芽生えました。
高2では見学していた体育祭に出席して、やりたかったチアダンスも挑戦しました。TikTokでネタにしていますが、体育のマット運動では頭をつくことがあるのでウィッグがずれる恐怖感がありますが、ヘアピンでウィッグを強く固定して参加していました。プールや海にも無理やり行って、ウィッグのまま潜ることもありました(笑)。
私が脱毛症であることは、限られた友人にしか伝えていませんでしたが、すぐに理解してくれたので、そこは救われたかなと思います」
自分でウィッグをつくりたい気持ちが…
高校卒業後は専門学校に進学し、理学療法士になったハゲカノさん。
職場では染髪が禁止されていたこともあり、ほぼひとつのウィッグを使い続けていたそうです。
その後、友人の勧めで始めたライブ配信アプリ「17LIVE」で配信をする「ライバー」としての活動が増え、理学療法士を辞め上京したハゲカノさん。
「このころにファッションウィッグの存在を知り、さまざまな色や長さのものを試してみることになりました。
ライバーを始めて2年間は、脱毛症のことを公表していませんでしたが、NHKの番組に出演したことがきっかけで、脱毛症であることを伝えることができました。それと同時に、自分でウィッグをつくりたい気持ちが強くなっていきました」
脱毛症の人から前向きな反応が
そのころに出会ったのが、ハゲカレさんでした。
「元々、自分のハゲ姿を発信したらSNSでウケるのではないかと思いましたが、裸を見せるようなもので、さすがに踏ん切りがつきませんでした。
でも、彼がスキンヘッドに剃ってくれたり、一緒に面白がってくれて動画を投稿することができています。
脱毛症の人からも前向きな声や相談、どうしたらそんなに明るく振る舞えるのか、というポジティブな反応がありますね。ハゲカレの前でもウィッグを脱ぐことに抵抗はありましたが、時間が解決してくれました」
ウィッグをファッションのひとつに
そして、昨年、ハゲカノさんはウィッグを取り扱う株式会社NEJIKO(ネジコ)を設立しました。
「私自身、安価な人工毛から高価な人毛まで、あらゆる種類のウィッグを試してきました。その結果、“こういうウィッグがあったらいい”という考えができたので、新しいことに挑戦しています!
まだ、ウィッグを仕入れている段階ですが、私なりの仕掛けや工夫をして、ウィッグをファッションとして広めていきたいです。
いずれは、ウィッグを医療用としてではなく、帽子やバッグなどアクセサリーのひとつとして、ショップやサイトに並ぶようにしたいです。今までのウィッグはどうしても、私のような人が使う医療的なイメージが強いものでした。
だから、髪の毛がある人でも気軽に楽しめるファッションの一部として広まれば、かつての私のように選択肢に困る人も減るはずです」
若くしてコンプレックスを「売り」や「笑い」に変えることができたハゲカノさん。これからの活躍ぶりが楽しみですね。
PROFILE ハゲカノさん
1995年、福岡県生まれ。高校卒業後、専門学校をへて理学療法士に。ライバーとして活動後、「ハゲップル」としてTikTokやInstagramで活躍。株式会社NEJIKO代表。
文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/ハゲップル