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こんにちは。メンズカウンセラーの中村カズノリです。

 

夫婦関係に問題を感じている読者の悩みの解決方法を探っていく本連載。前回は実兄との距離が近すぎる夫に戸惑うDさんのお話を紹介しました。今回のお悩みはいくつかの問題が複雑に絡み合っているようです。それぞれを切り分けて見ていくことにしましょう。

異常なまで実兄に頼る夫に耐える妻…いちばん深刻な問題は

Dさんが抱える問題は、大きく3点に分けられると思います。

 

1つ目は、義兄家族との交流が頻繁にあることによる、物理的な負担。

 

2つ目は、感覚の違う人たちに囲まれていることで、「自分がおかしいのかな」とつい感じてしまう辛さ。

 

この2点、言い出しやすさには明確に差があるんですよね。どちらが言いやすいかと言えば最初のほう。なぜなら2つ目は「あなたたちのほうが変だ」という気持ちの裏返しでもあるからです。

 

ですが、どちらの感覚もその人にとっての「普通」であって、無理に相手に合わせるものではありません。

 

悪い人でなくても、結局夫婦は他人ですから、どうしても合わなくて疲れてしまうときがあり、それは当たり前のことです。この事実を受け入れたうえで、「自分はどうしたいか」という希望を伝えていけるといいと思います。

 

「たまには家族水入らずで旅行やレジャーに行きたい」と、予算の許す範囲でプランを立ててみるのもアリかもしれません。

「家族に頼りにされていない」と感じるのは何よりシンドい

そして3つ目、パートナーに義兄よりも「妻である自分を頼ってほしい」という気持ち。これがなかなか複雑です。

 

パートナーは何か困ったことがあると毎回義兄のところに出かけてしまう、という現実があり、Dさんはそれを見て「自分の立場って何なんだろう」と悲しくなってしまうんですね。

 

よく「相手の行動は変えられないので、自分の受け止め方を変えましょう」というアドバイスがなされますが、今回はそれだけでは不十分ではないかという気がします。

 

妻子は「守るべき存在」なので、相談を受けることはあっても自分の悩みを打ち明けることはない、という夫は今の令和の世でも一定数います。

 

他に頼れる友人や先輩がいればそれでもいいのでしょうが、Dさんのパートナーはもともと友達づき合いが少ないタイプ。そのぶん、気心の知れた兄に頼ってしまうのでしょう。でも、「頼る先」は複数あったほうが安心です。

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パートナーは若干気分に波があり、メンタルが落ちているときに子どもに癇癪を起こしたりすると、大人げなく口喧嘩をして泣かせてしまうこともあるそう。

 

普段は許せるようなワガママでも、なぜか必要以上に怒ってしまう、というのは僕も経験があります。これはあとになってから落ち込むんですよね。

 

そこでパートナーは、どういうときにイライラしやすいか、自己分析を始めたそうです。疲れや季節の変わり目、仕事で嫌なことがあったなど、怒りのトリガー(きっかけ)が、実は全然別のところにあるということは少なくありません。

 

そのあたりを自分で探れるのはとても良いことです。Dさんも真似してみてもよいかもしれません。

 

自分の感情は自分で処理するべき、という人も多いですが、「なんだかイライラする、これこれのせいかも」というのを人に聞いてもらうと、たいていの場合ちょっと楽になるんですよね。お互いにそういう話ができると、夫婦間の「話しやすさ」も変わってきます。

気づかないうちに口にしている「批判」に要注意!

そのうえで、パートナーに義兄との関係を見つめ直してもらうには「批判的にならないことが何より大事」とお伝えしました。

 

ラーメンが好きで食べ歩きを趣味にしている人に、ラーメンが嫌いな人が「よくそんな体に悪いものばっかり食べるよね」なんて言ったら、ラーメン好きな人はムッとして、それ以上話したくなくなりますよね。

つまり「自分はラーメンが苦手だけど、ラーメンをすごく美味しそうに食べるあなたのことは好きだよ」と伝えて、「でもたまには一緒に外食を楽しみたいから、別のお店に行く機会を作ってくれない?」とお願いしてみる。このほうがずっと要望は通りやすくなります。

 

「家族仲がいいのはいいことだよね」「男兄弟で成人してからもそこまで仲良しなのは珍しいよ」というスタンスで、パートナーと話せるといいですね。

 

ただ、これはあくまでDさんに余裕があるときに限ります。余裕のないときはイヤミっぽく聞こえて逆効果になりうるので、無理のない範囲で試してほしいと思います。

 

人間は不思議なもので、禁止されると我慢できなくなり、「いつでも好きなときに会えば?」と言われたら逆に頻度が減るなんていうこともあります。

 

Dさんとパートナーがそれぞれ、義兄(兄)とのほど良い距離感で過ごせるようになることを願っています。

文/中村カズノリ イラスト/竹田匡志