鍋がおいしい季節になりました。思い切った外食がなかなかしにくいからこそ、今年の冬も家でおいしい鍋料理を作りたい!でも、いつもワンパターンの味では飽きてしまいます。
そこで、今年注目の鍋料理やトレンドを、鍋に詳しい料理研究家・安井レイコさんに聞きました。
濃厚ラーメンスープが食欲をそそる
コロナ禍でおうち鍋をする人が増えた今、鍋つゆ市場にはこれまでにないメーカーが参入し、活況を呈しています。
鍋つゆメーカーの先駆けといえば、エバラ食品や味の素などの複合調味料メーカーでした。そこから老舗の味噌蔵や醤油蔵、酒蔵に広がり、今や、レストランや料亭が監修の鍋つゆも登場しています。
そして今年の冬、満を持して市場に参入してきたのが、「ラーメンインスパイア系」の鍋つゆです。
「ラーメンインスパイア系」の鍋とは、その名前のとおり、ラーメンのようにパンチのある味つけのスープ、そしてラーメンのトッピングにありそうな具が特徴です。
みなさんご存知の煮込みラーメンは、文字通り鍋で煮込んでから食べるもの。だから煮込んでもコシがある麺になっています。一方の「ラーメンインスパイア系」の鍋はラーメンスープで具材を楽しんだあと、最後に麺を入れるもの。
この、ラーメン有名店とコラボした「ラーメンインスパイア系」商品が、日清食品や明星食品などの麺メーカーからこぞって発売されています。
これまでもラーメン有名店が監修する鍋つゆはありましたが、そこに“麺メーカー”が参入することで、より満足感が高い鍋になっているんです。
なかには麺までセットになっている商品もあるので、「普通のラーメンとどこが違うの?」と思う人もいるかもしれません。
ラーメンと「ラーメンインスパイア系」鍋の違いはなんと言っても麺の後入れ。
有名店の具沢山なラーメンはとてもおいしいのですが、「野菜や肉が多くて、なかなか肝心の麺までたどり着かない!」なんて思ったこと、ありませんか?
「ラーメンインスパイア系」鍋は、具材から先に楽しんで、〆に麺を入れるからそんなストレスとは無縁。みんなが大好きなラーメンスープで鍋をつくって、最後はおいしいラーメンを楽しめるのだから、大満足に決まっています!
有名ラーメン店監修のものがいろいろあるので、名店の味を自宅で楽しむ事ができますよ。
ご当地鍋注目は中京地方のケイちゃん
ラーメンインスパイア系以外で、今年私が注目しているのが、ケイちゃん(鶏ちゃん)の鍋つゆです。
ケイちゃんとは、岐阜県下呂市に伝わる郷土料理で、鶏肉をひと口大に切って味噌・醤油・香辛料などを調合したタレに漬けて味つけしたもの。
フライパンやホットプレートで、キャベツなどの野菜とともに炒めて食べるのが定番の食べ方です。地元では、煮込み料理としても食べられていましたが、全国的にはほとんど知られていませんでした。
「こんなに美味しいのだから、鍋にしたらもっと美味しいに違いない」「ケイちゃんをもっと多くの人に食べてほしい」そんな地元の人の思いから誕生した鍋つゆなんです。
調理法は、「ケイちゃんの鍋つゆ」に「ケイちゃん」と野菜を一緒に鍋に入れるだけ。秘伝のみそ味が食欲をそそります。いずれもインターネットで取り寄せが可能です。
なかなか旅行ができない今、家にいながらご当地の味を堪能できるのはうれしいですよね。
いろいろな業界が参入して、ますますにぎやかな鍋つゆ市場。好みのものを探して、おうち時間を楽しんでみてください。
PROFILE 安井レイコさん
取材・文/樋口由夏 イラスト/植田まほ子