塾帰りコンビニに立ち寄る子どもたち

「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。

 

今回は、いったん始めた中学受験をやめるときの判断について。

 

「安易な撤退は子どものためにならない」と言う富永さんに、その真意を聞きました。

「幼い」「かわいそう」が理由の撤退は慎重に

いったん始めた中学受験をやめさせることが、その子のためになるのかどうか。これは判断に悩むところです。

 

よくあるのが、「うちの子は、成績も伸びず、受験させるにはまだ幼かったようだから撤退したい」という相談です。

 

保護者の言う通り、もしかしたらその子は他の子に比べて幼いのかもしれません。ただ、そうした子が数年後、高校受験を前にして、他の子より精神的に大人になっている保証はどこにもありません。

 

身内に不幸があったとか、人生において衝撃的なことがあった場合は、一気に変わるかもしれませんが、そうした状況になる可能性もそう高くはないでしょう。

 

中学受験は、日常で競争にさらされることのない普通の子どもたちにとって、負荷に他なりません。でも、この負荷こそが僕は子どもを成長させると思っています。撤退せずにやりきることで、子どもは精神的に大きく成長する可能性がありますし、やりきったからこそ親子で見える景色もあります。

 

中学受験で撤退しても、高校受験をするなら結局、勉強は必要になります。厳しい言い方になりますが、勉強から逃げることはできないわけですよね。

 

中学受験から撤退し負荷を取り除くのか、負荷をコントロールしながら続けるのか。家庭の判断にはなりますが、保護者は「かわいそう」「大変だから」という理由で撤退する際は、子どものその先の人生も見据え、慎重になって欲しいと思います。

サボりは逃げではなく息抜き

保護者のみなさんが「このまま続けるのが苦しい」と思うのは、わが子のサボりを目撃したときによくあります。

 

塾の出席手続きを済ませてから抜け出して、ゲームセンターに行ってしまう。塾から帰宅しないと思っていたら、友だちとダラダラおしゃべりしていたり、なぜか書店や文具店で長時間過ごしている。勉強しているふりをして、こっそりYouTubeを見ていたり、ゲームをしていることもよくあります。

 

知って欲しいのは、これらは子どもにとって「息抜き」であって「逃げ」ではないということです。実際、本人に聞いてみると「受験はしたい」と答えるのではないでしょうか。

 

こうした子どもの様子は「中学受験あるあるだ」と冷静に受け止めてください。カッとなって「塾代ももったいないし、真剣になれないならやめる!」とわが子の選択肢をつぶすことのないよう気をつけましょう。

進路が定まっているなら撤退はアリ

スポーツや芸術など、勉強以外の進路が定まっている場合は、撤退はアリだと思います。

 

サッカーのクラブチームに入っていてユースの試験に合格した、週6回サッカーの練習がある。

 

ピアノコンクールに挑戦するから、1日に何時間も練習をする必要がある。将来は音大進学しか考えていない。

 

 

そういう子どもは、受験勉強にさく一分一秒が惜しいでしょうから、その道に専念すればいいと思います。

英語力があれば高校受験に絞っても

高い英語力がある子どもも、撤退はアリです。

 

高校入試は英語の配点が高いですし、民間の英語検定で一定水準をクリアしていると「英語の得点を一定の割合で保証する」「加点する」といった優遇を受けられる学校も多いからです。また、グローバルコースなどを設け、帰国子女や英語検定で一定レベルを取っている生徒を多く募集している学校もあります。

 

最低でも英検®2級

(※1)、できれば準1級あれば、高校受験において英語でアドバンテージを取れるでしょう。

 

 

帰国子女入試や英語入試をやっている中学校(とくに難関校)はまだ限られていますから、そのなかで行きたい中学が見つからないなら、高校受験で勝負したほうがより有利に進学できる可能性があります。

 

中学受験撤退は、「高校受験でアドバンテージを取れるものがあるかどうか」が判断のポイントになるでしょう。

 

中学受験の正体_matome1

多くの子どもにとって、勉強は必ずどこかでがんばらなくてはいけないもの。

 

「かわいそう」「大変だから」という理由での撤退は、慎重にする必要があります。保護者は「ここががんばりどき」と覚悟を決め、冷静に子どもを応援したいところです。

中学受験の正体バナー
監修/富永雄輔 取材・構成/鷺島鈴香 イラスト/サヌキナオヤ (※1)英検®は、公益財団法人 日本英語検定協会の登録商標です。