「経済指標」と聞くとどのような印象を持ちますか?「なんだか難しそう」とか、「自分には関係ない」と思う方が多いかもしれません。
しかし、経済指標は私たちが買い物などの経済活動をした結果がデータとして表れたもの。何も難しいものではありません。私たちが日常生活の中でなんとなく感じていることがデータとして裏づけされるのです。
カクテルなどのお酒代が大幅アップした背景
経済指標といってもたくさんあるのですが、今回は総務省統計局が毎月1回発表する「家計調査」という経済指標を見てみましょう。
経済指標は調査から発表まで時間がかかるため、最新の結果は11月5日に発表された9月分のデータになります。二人以上の世帯が今年の9月に消費した金額は昨年の同じ月と比較して1.9%少ない結果となりました。
しかし、昨年の9月は既にコロナ禍にあるため、更にもう1年前の2019年9月と比較してみるとどうでしょう。なんと、11.6%も減っている結果になります。つまり、コロナ前とコロナ禍では使うお金の量が10%以上も少なくなったわけです。
それでは、具体的に何にお金を使わなくなったのかを見ていきましょう。
2年前と比較して大きく支出が減っているものが「飲酒代」で、2年前の9月との比較では、92.2%も減っています。
たしかに、コロナ禍において飲み会をする機会は激減。ただ、“飲み会をしなくなった”というよりは、そもそも“居酒屋が開いてなかった”理由が大きいことには注意しましょう。
実際、「チューハイ・カクテル」への支出は17.5%増えていますから、お酒を飲まなくなったのではなく、飲む場所が居酒屋から自宅に変わったと考えた方がよさそうです。このように、私たちの行動様式が変化したことがデータによって裏づけられるのです。
企業の決算書から最新の動向が見えてくる
その他に支出が減った品目を見てみましょう。筆者は化粧をしないので実感がないのですが、ファンデーションへの支出は60.5%、口紅への支出は65.1%と大きく減っています。リモートワークの普及で外出する機会が少なくなり、外出したとしてもマスクをするので、それほどしっかりと化粧をしなくてもいいと考える女性が増えたということなのでしょうか。
経済指標で「もしかして、こういうことかな?」と仮説ができた場合は、実際にその商品を売っている企業の決算説明会資料を確認すると答え合わせができます。たとえば、ある化粧品メーカーの決算説明会資料を見てみます。
資料はホームページから確認することが可能で、見てみると、やはり化粧品市場は縮小してしまったことが分かります。
しかし、マスクをつけて外出する女性のために、マスクを着用した場合、目の周りがどのように見えるかをネット上でシミュレーションするサービスや、AR(拡張現実)機能を使って最適な眉の書き方を表示するサービスを提供することで、化粧品の売り上げを維持しようと工夫しています。
どうですか?経済指標を読み解く習慣が身につくと、自分には関係のないことでも、どのような変化が生じているかを知ることができるのです。
経済指標を読み解けるようになると、普段の仕事にも活きてくる可能性もありますから、新聞やネットで情報を見るだけでなく、実際に各省庁のホームページでデータまで見てみると、意外なことがわかってくるかもしれません。
こうした知っていると役立つ経済情報を、今後もご紹介していきたいと思います。
文/森永康平
参考/総務省統計局「家計調査」 https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/index.html