平野ノラさん
「片づけは未来への投資だと思っている」と話すノラさん

80年代を彷彿とさせる「バブルキャラ」でブレイクした、お笑い芸人の平野ノラさん。今年3月に42歳で第一子を出産し、仕事に育児にと奮闘中の日々を送っています。じつは、お片づけ好きとしても知られるノラさん。片づけたことで人生が開けたと感じたのがハマったきっかけだと言います。今回は、夫や子どもがいながらも片づけ上手でいるコツをお聞きしました。

家族でも、頭ごなしに「捨てろ」はNG

── YouTubeで片づけ術の投稿をしていることから、片づけに関する悩みも多く寄せられるそうですね。ものが捨てられない人は、どうすれば捨てられますか?

 

ノラさん:片づけは、生きているあいだは一生続くこと。だから一気にやろうとはせずに、身の回りの「明らかなゴミ」から捨てはじめるといいと思います。そのスペースがなくなるだけで、爽快感があるので、その気持ちよさをまず感じることが大事ですね。

 

つねに部屋がごちゃごちゃしていると、この爽快感がわからないんですよ。私もひとり暮らしをしていたとき、玄関にビニール傘が12本ぐらい放置されていたけど、当時はたいして気にならなかったですから(笑)。

 

片づけたいけど、どこから手をつけたらいいかわからない…と悩む人に、おすすめしたい場所は玄関です。家に帰ってきて「片づいているって気持ちいいな」と感じやすい場所だと思うので。運気の入り口とも言われますし、履けない靴を捨てることから始めてみましょう。

 

平野ノラさん
「そういう私も物欲はありまくりです。大事なのは“循環させること”」

── 夫や子どもとの共同生活だと、自分の思うように整理整頓できないこともありますよね。物の管理はどうしていますか?

 

ノラさん:夫はもともと所有物が少ないタイプなので、片づけが原因で喧嘩になることはありませんが、唯一多いのが本。最近、引っ越しのタイミングで部屋に本をぜんぶ並べて、いまこれだけの本があるね、と一緒に確認しました。

 

「新しい本を読んでるならいいけれど、前回の引越しから入れ替わってなくない?つまり思考は停止してるんだぞ!その古い思考を、新しい家に持ち込みますか?」っていう問いを立てて(笑)。「もう一度読みたくなった本は買うことにして、ネクストステージに連れて行きたいものだけ選び抜こう」と説得して、一緒に処分したんです。

 

いくら家族でも、頭ごなしに「捨てろ」と強制するのはダメ。それでは喧嘩になるだけなので、「捨てると、こういういいことがあるよ」と提案するようにしています。

 

ノラさんの指導のもと、「いる・いらない」を見極めるパートナー

── なるほど、一緒に見極めるんですね。たまりやすい衣類はどうしていますか?

 

ノラさん:うちの夫は「英国紳士か!」とツッコミたくなるくらいアーガイル柄が好きで、セーターも靴下もアーガイル柄のものばかり持っていたんですよ。これには「私がコーディネートするからアーガイル捨てよう!生まれ変わろう!」と説得をして、シンプルな服を買って着せて「めちゃくちゃかっこいいじゃん!」とおだてる作戦で。

 

いまはアーガイルを卒業して、いちばんオシャレなのは筋肉だと唱えています。 高い服だろうが安い服だろうが、イケてる身体のラインが出ていればそれがいちばんのオシャレだぞ!って価値観を植えつけました。いまはシンプルな服ばかりで…あれ、私が洗脳しているみたいですか(笑)?

片づけは1日15分。モチベーションを翌日に残す

── コーチと生徒のような夫婦ですね(笑)。子育て中だと、子どものグッズもどんどん増えていきませんか?

 

ノラさん:子どものものは自分のものより客観的に見られるので、サイズアウトしたり使わなくなったりしたものは、どんどん循環させています。ほしいという人がいたら定期的に譲っているし、逆にお下がりをもらうこともありますよ。

 

最近、子育て中の女芸人も多いので、育児グッズがいろいろと回っています。子どもは成長も早いし、お金もかかる。お下がりが嫌という人じゃなければ、循環できることはすごくいいことだと私は思います。

 

サイズアウトしたバブ子ちゃんのウェア

── 循環させて、物を家にためないのが片づけのコツですか?

 

ノラさん:あとでまとめてやろうとすると、どんどんたまるので、私は115分と決めて片づけています。毎日できなくても、いいんです。たとえば子ども服なら、とりあえず入れる一時的なボックスを用意しておいて、「これはもう、うちの子には小さいな」「今年の夏服は、来年はもう着られないだろう」など、それらを仕分けするだけで15分。

 

片づけスイッチが入って「もうちょっとやりたいな」と途中で思っても、モチベーションを翌日(または次回)に残すために、そこで終えるのがコツです。もちろん徹底的にやってもいいんですけど、やらなくてもいいぐらいの心持ちでいると苦になりません。

「汚部屋の人がうらやましい」…その理由は?

── YouTubeでは、君島十和子さんやキンタローさんの自宅の片づけをお手伝いされていましたね。ノラさんのように一緒に片づけてくれる人がいるのはうらやましいです。

 

ノラさん:人のおうちの片づけもすごく楽しくて、好きなんです。ひとりだと考え込んだり、思い出を振り返ったりしてしまうので、誰かと一緒に「捨て活」するのはいいですよね。

 

私、汚部屋の人がうらやましくてしょうがないんですよ。だって、片づけたら運気はいまより上がること間違いなしですから。「アンタ、この先どんな人生が待ってんのよ!ヒューヒューだよ!」ってワクワクして、うらやましくなっちゃいます。

 

自分が「これを片づけたら、いいことがある」という思考なので、“片づけたいけど片づけられない人の家”に行って、一緒に楽しく、その人の人生を考えながら片づけをするのは、未来に投資する感じがするんですよね。今後も片づけ企画は続けたいです。

 

平野ノラさん
「片づけには終わりがないから、楽しみながら続けたい」とノラさん

── YouTubeを拝見して、相手にイヤな指摘をせず、捨てさせるのがお上手だと感じました。

 

ノラさん:それはうれしいです。人に「捨てろ」と言うのは、基本的には大きなお世話だと思ってますから。でも、「こんな2軍ばかり置いていたら、1軍が入ってくる隙間なんてないよ! 未来への投資と考えて、1軍に出会うために捨てよう」ということは伝えたいです。「捨て活」は必ずハッピーになるし、レッスンみたいなものだからコツを掴めば上手くなるんです。

 

ちなみに、うちの母親も捨てられない人。私の衣装も縫ってくれたことがあるほど裁縫が得意で、裁縫道具や生地をたくさん集めています。

 

だけどそれに対して家族が、一概に「もう捨てなよ!」と言うのは、ちょっと違うなと思うんです。それが彼女の生きがいかもしれないし、「クリエイトしたい」という気持ちまで、無理に止める必要はない。むしろ、その原動力は忘れて欲しくないですし。

 

母の気持ちを尊重してあげたいから、「作品をかっこよく飾ってみようよ」「道具を整理したら、もっと快適に作業できるかもよ」というように促してあげたい。それが「未来への投資」なんじゃないかと思っています。

 

PROFILE 平野ノラ

1978年生まれ。東京都出身。ソバージュ、太眉、肩パッド入りスーツの出で立ちで、大きな携帯電話を片手に「しもしも〜?」と言うバブリーネタでブレイク。2017年に一般人男性と結婚し、2021年3月に長女を出産。最近では片づけのスキルを生かし、公式YouTubeチャンネルで芸能人の自宅の片づけなどを行っている。

取材・文/大野麻里 撮影/佐久間ナオヒト