「中学受験の正体」を“イロハ”から進学塾VAMOSの代表・富永雄輔さんに教えていただきます。
今回は、受験が迫り、焦る保護者の言動について。
「本気ならキレてもいい」という富永さんに、受験直前の保護者の気になる言動について聞きました。
親子がいよいよ本気になる時期
本番が迫ってきているのに、いつまでも本気にならない。
この時期、ダラダラしている子どもに、思わず「受験なんかやめちゃいなさい!」と怒鳴ってしまう保護者は本当に多いですね。
残り100日は、やはり受験の正念場。僕は、親子がぶつかり合いながら、走り抜ける時期だと思っています。怒鳴らずに済めばいいですがそうはいかないのが現実でしょう。
本気ならキレてもいいんじゃないでしょうか。保護者の本気は子どもに伝わります。
ただ、怒りに任せて「お前なんかどこも受かるわけがない」と子どもを全否定する言い方はダメです。この局面でも本気になれない、そんなわが子に向いた勉強の仕方、志望校を探るのが保護者の役割です。
毎日親子でバトルするのがつらいから、子どもがストレスでつらそうだから、と直前で受験から撤退するのもおすすめしません。厳しい局面を、諦めずに、工夫して乗り越えること自体が、今後の親子の糧になると僕は思います。
ストレスから体調不良を訴える場合は、1日の時間配分を見直すなどの対応をしてあげてください。
いずれにしても、保護者が悩みを抱え込まないこと。子どもの学力、性格を客観的に把握している塾の先生などに相談するのがおすすめです。
模試の結果は客観的に受け止めて
本番が迫ってくると気になるのが、模試の結果そっちのけで「うちの子は大丈夫」と思い込んでいる保護者です。
子どもに期待する気持ちはわかりますが、こうした根拠のない自信は、子どものメンタルを追いつめるだけで、なんのメリットもありません。
希望校のことしか考えていないので、安全校を受験せずに全落ちしてしまうことさえある。
そのときの保護者の落胆は、子どもの心を深く傷つけてしまいます。
2回連続A判定はまず褒める
逆に模試の結果を過小評価しすぎる保護者もいます。
四谷大塚などの分析では、合格者のうち、模試でA判定(合格可能性80%以上)を出していた受験生は半分程度、といわれています。これを持って「A判定でも油断できない」と心配するのです。
確かに当日体調を崩すことだってありますし、受験に100%はありません。
だからこそ保護者は心配になるわけですが、もし2回連続のA判定なら、やはり合格の可能性は高いでしょう。
そのときは、まず子ども本人の頑張りを褒めてあげてください。それから、自信をもってラストスパートをかければいいと思います。
子どもがA判定に慢心して受験勉強に身が入らないようなら、ちょっと難しめの学校の問題を解かせたりして、どんどん高みを目指すような形でねじを巻いてあげるといいですね。
保護者の根拠のない楽観論、過剰な不安は子どもにいい影響を与えません。模試の結果という客観的な数字を元に、冷静に事態を見極めるようにしましょう。
古い価値観で新興校を疑う
新興校の魅力を理解できない、もしくは疑っている保護者も気になります。
広尾学園、開智日本橋、三田国際、広尾学園小石川といった学校の提供している今どきのプログラム…たとえば企業コラボ型などは注目されていますよね。事実人気も上昇しています。
でも、その人気を理解できない保護者は毎年一定数います。
伝統的な名門校から名門大学に進み、一部上場企業に就職したような保護者は、その傾向が強いように感じます。
確かに、今どきの学習プログラムは、その新しさゆえ教育の効果を証明する実績は出ていません。現場の先生たちは試行錯誤している面もあるでしょう。
ですが、今は大学入試制度も、社会に出てからの働き方も、私たちが子どものころとは違っています。
昔ながらの名門校の教育よりも、新興校の新しい教育のほうが時代にマッチしている可能性がある。
本番が迫り、具体的な学校名が出る段階で、新興校をけなす発言は考えもの。わが子は受験しなくても、わが子の友人が進学するかもしれない。そうしたとき、子どもは何を思うのか、保護者は言動に気をつけて欲しいと思います。
本番まで100日を切れば、いよいよ親子がタッグを組んで受験に本気で向き合う時期です。
保護者の言動が、子どもに及ぼす影響は大きい。だからこそ最後まで諦めずに、わが子によりよい道を探っていきましょう。