携帯を見ている女性

「赤ちゃんが産まれました」「うちの夫の給料が減って」と発信しただけなのに。ふとしたことから、嫉妬や誹謗中傷の対象になりかねないSNS。そんなSNSトラブルに詳しい弁護士の清水陽平さんに、事例や注意点について話を聞きました。

何げない投稿がマウントしていると思われることも

—— 個人でSNSを使う際、炎上や誹謗中傷などトラブルにつながりやすいような文脈はありますか?

 

清水さん:

個人のSNSでは、炎上レベルまでいくものはほとんど見ません。ただ、SNS上で喧嘩している人たちはよく見かけます。たとえばジェンダー問題や、同人ネタ、ボーイズラブ的な話題については対立関係を生みやすいようです。

 

ジェンダー関係は、なかには偏った意見を語る人もいます。女性を性的搾取していると言いながら、言っていることに矛盾がある。不公平だと反感を買うケースですね。

 

また、同人ネタ、ボーイズラブ的なものに関しては、個人の好き嫌いがはっきりしているパターンも多いです。この漫画は「好き」「嫌い」とカテゴリーが明確。そのなかで、誰かにとって気に食わない発言をすると、自分とは違うカテゴリーの人から総攻撃を受けてしまう。

 

または、同じアニメが好きでも、推しのキャラクター違いで喧嘩が発生する。特に3040代くらいの女性層で、アニメにはまっている人にトラブルが多い印象はあります。

 

あとは、炎上のなかに誹謗中傷が含まれます。こちらもときどき、トラブルになっているケースがあります。

 

—— たとえばどんな事例で発生しますか?

 

清水さん:

誹謗中傷に明確なパターンはないものの、差別に関する話題は読む人によっては敏感です。または、無意識にマウントを取った、取られた。何げない言動が嫉妬を生んでいた。そんなパターンはあるようです。

 

たとえばある人が、「子どもが産まれました!」とか「うちの赤ちゃん可愛いでしょ」とSNSに投稿したとします。ほとんどが「可愛いですね」と返すくらいでしょう。でも、不妊治療中の人が見たら、苦痛や妬み、嫌がらせだと受け取るかもしれません。

 

—— その人の立場によって、受け止め方が違うと。

 

清水さん:

他にも、「うちの旦那の給料が少なくて」といった内容を投稿するとします。しかし、その夫は上場企業勤務。そうなると、「何言ってるんだ!他の人に比べていい暮らししているくせに。贅沢だ!」と反感を買ってしまう。

 

そうやって、無意識にマウントを取られたと感じる人もいるでしょう。嫉妬は攻撃を生みやすくなります。もちろん、不満と言ってもいろいろな不満があるので一概には言えません。でも、人を不快にさせるような投稿内容には気をつけたほうがいいでしょう。

 

—— グチや不満を投稿する際も、注意が必要なんですね。

 

清水さん:

「旦那が不倫をしてます」といった内容なら、たぶん同情を集めても批判はされにくいかもしれません。ただ、普段の投稿で、派手な交友関係を披露したり、男友達と遊んでいる投稿ばかりだと、「それはあなたが悪いんじゃない?」となるわけです。発信する人によって背景が違ってきますね。

子どもの写真を投稿するときに注意したいこと

—— なるほど。では、個人でSNSをする際に気をつけておくことはありますか?

 

清水さん:

何かされたら基本は無視するか、ブロックしましょう。そして相手が嫌がる発言をしないことが望ましいですね。

 

予防策としては、個人情報は載せない。特に、子どもの写真を載せるときは注意が必要です。学校や制服、電柱が映っていて、名前や地域が推測できそうなものは、気をつけたほうがいいですね。

 

何か炎上したときにいろいろと特定されてしまうんです。この人はこのあたりに住んでいます。名前はこうです。家族構成はこんな感じです…という具合に。

 

場合によっては「まとめサイト」に掲載されるケースもあります。そうなってくると情報がさらに拡散されるリスクが大きく、今後の生活をする上でも危険です。だからこそ、ふだんの何げない投稿にも注意が必要です。

 

PROFILE 清水陽平さん

1982年岩手県出身。2004年早稲田大学法学部卒業。東京弁護士会所属。2010年法律事務所アルシエンを開設。インターネットの誹謗中傷に詳しい弁護士として、多くのメディアに出演。

取材・文/松永怜