実家や配偶者などに頼れないワンオペ育児は、赤ちゃんが寝ても家事が待ち受けていて24時間気の休まるときがないですよね。

 

どんなに子供を愛して大切に思っていても、疲れやストレスが限界にくると、

 

「誰とも話す機会がなく、このままじゃ心を病んでしまいそう…」

 

「うまくいかないと大声で怒鳴ったり手をあげてしまいそうになる…」

 

そんな状況は誰に起こってもおかしくありません。

 

そんなとき、たとえ1~2時間でも、家事や育児を助けてくれるヘルパーさんに来てもらえたら本当に救われる!という人は多いのではないでしょうか。

 

実は現在、厚生労働省は自治体から家事育児支援ヘルパーを派遣する事業の開始を予定しています。

 

 

親の貧困や病気・ネグレクト(育児放棄)などのため18歳未満の子供が家事や介護・下の子の面倒をみる「ヤングケアラー」問題の解決も同時に目指すということです。

 

今回はこのヘルパー派遣事業の概要や疑問点などを解説します。

「虐待防止のためのヘルパー派遣事業」とは

今回の事業については、この記事を書いている11月26日現在、まだ厚生労働省から詳しい情報が開示されておらず、新聞などの報道で分かっているのは以下のような点です。

 

  • 国(厚生労働省)が、子供のいる家庭にヘルパーを派遣して家事や育児を手助けする事業を新設、2022年からスタートする
  • 各市町村に対しどのような支援を行うか計画作成を義務づける
  • 虐待の兆候がある家庭に対し育児支援ヘルパーを派遣し、保護者の相談に応じたり家事や育児を手伝ったりする

 

報道ではおおむね上記のような内容となっています。

 

各自治体に義務付けということなので、「うちの市では利用できないの?」という心配はなさそうです。

 

が、気になるのは「虐待の兆候がある家庭に対し」という部分ではないでしょうか。

 

この事業は基本的に、通常の子育て支援とは別に「虐待防止」の目的で実施されます。

 

ただ、従来のように家を訪問して事情を聞いたり危険な状態の子供を保護したり…という対応ではなく、孤立したまま家事育児に追われ虐待の一歩手前まで追い詰められている親を家事・育児の手助けや相談などで実際にサポートすることで、子供に害が及ばないようにするというもの。

 

また、18歳以下の子供が本来なら勉強したり友達と遊んだりするはずの時間に家事や家族の世話をしている「ヤングケアラー」の状態を発見・脱却するための支援も行うそうです。

「大人と話す」だけでも救われるときがある

世の中には、パートナーが非協力的で実家にも頼れない、親自身やお子さんに病気・障がいがある、多胎児(双子や三つ子)など子育ての負担が大きい家庭があります。

 

また、そうでなくても、ずっと家事と子育てをしていると「少しでいいから子供のことを安心できる誰かに見ていてもらって家事を片付けてしまいたい」ともどかしく思ったり、反対に「家事を誰かにお願いできたら、子供と向き合ってあげられるのに…」と後ろめたい思いをした経験のある人も多いのではないでしょうか。

 

もし、週に1回でもヘルパーさんが来てくれれば家事・育児はもちろん、時にはただ話すだけでも救われる人はきっと多いはず。

 

しかし個人でヘルパーさんやシッターさんを依頼すると、地域や業者にもよりますが、1時間で安くても1000円以上、相場は3000円程度といわれています。

 

週1回2時間ずつ来てもらえば月に1~3万円ほどかかりますが、その費用を捻出できる家庭ばかりではないでしょう。

 

この代金相当分が自治体から全額補助されるのか、一部になるのか、また誰でもサポートを受けられるのかはまだ明らかになっていませんが、孤立した子育て環境になりやすい現在の日本社会では、ぜひとも誰もがサポートを受けられるようになってほしいものです。

課題や疑問も…これからどうなる?

この事業の詳細は決定していない部分も多いようですが、現在子育て中のママたちに気になる点をたずねてみたところ、次のような疑問や要望が出てきました。

 

「すごくいい!と思うけど、”虐待の兆候がある家庭”って限定してしまうと、あそこヘルパーさんが来てるから虐待してるんだと思われそうで、来てほしくても断っちゃいそう。一応全員のところに来てくれて、ちょっと心配な家庭はそっと回数を増やしたり、専門家にバトンタッチするのはダメなの?」(Iさん・3歳児と1歳児のママ)

 

「私がまだ出産後の大変さを知らないからかもしれませんが、他人を家に入れるのに抵抗があります。ヘルパーさんに来てもらうためにしんどくても片付けや掃除するのは大変。外で預けるか、家に来てもらうか、選べると嬉しいな」(Mさん・妊娠7か月)

 

「以前、ベビーシッターによる虐待のニュースを聞きました。数多くの世帯に派遣するとなると、安心できるシッターさん・ヘルパーさんを十分に採用できるのでしょうか?しっかりと報酬を出さないとかなり難しいと思いますが…」(Eさん・5歳児と2歳児のママ)

 

今後は自治体ごとに支援計画を作成することになっているため、お住まいの地域の状況により、受けられるサポート内容も少しずつ異なることが予想されます。

 

自治体や地元の議員事務所には住民の要望を受け付ける窓口がありますので、上記のように「ぜひこうしてほしい!」という要望やアイデアがあれば、今のうちに送ってみるのも良い方法です。

おわりに

今回のヘルパー派遣事業の対象は「虐待の可能性のある家庭」ということですが、実のところ、すべての親、とくにメインで子供とかかわることが多い母親は「たまたま運がよかっただけで、いつ私も虐待していたか分かりません」と話す人は本当に多いもの。

 

世の中に「これだけで100%虐待がなくなる方法」というのはないかもしれません。

 

しかし、こと子供の命や安全にかかわることだけに、痛ましい虐待の何割かでも未然に防げるのであれば、予算をかけていくのは大変意義のあることだと思います。

文/高谷みえこ
参考/厚生労働省|子ども・子育て支援一覧 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/kosodate/index.html