現在は、ビジネスコンサルタント、YouTuberとして活躍している矢内彩さん(33)。
東京大学を卒業して、有名銀行に入行するも、不動産投資の失敗から自己破産するなど挫折も経験しています。
そんなバリキャリ女子が、自身の経験から得た教訓を話してくれました。
女性にさまざまワークスタイルを提供
「現在は自分で起業した会社で、営業やビジネスのコンサルタント業をしていて、主に副業のサポートやコーチングをしています。
20代の女性が多いですが、女性はライフステージにより働き方が変わることが多いので、さまざまワークスタイルを提案するようにしています」
そうハキハキと話してくれる矢内さんですが、大学に入る前は内気な性格だったそうです。
東大入学も将来の目標は見えず
兵庫県姫路市の山と田んぼに囲まれた地域で育ったという矢内さん。
「高校時代は人見知りする性格で、女子バスケ部のマネジャーをしつつ勉強に励んでいました。
高1のときのテストで担任の先生から東大を目指してはという勧めもあり、志望することになりました。
母は私を東京に進学させるつもりはなく驚いたようでしたが、先生が説得してくれました」
勉強好きだった矢内さんは無事、東大に入学するもさっそく“壁”にぶち当たりました。
「大学に入ってからの目標がなかったので、やりたいことがなくて困りましたね。
バレーボールサークルに入り、アルバイトをして、海外旅行にも行きました。
海外での経験は、世界は広く自分の常識だけでは通用しないところがあることは学びましたが、将来的な目標はできませんでした」
一次面接にも進めず就職後も…
就職活動にも、その影響は出てしまったそうです。
「結局、やりたいことが見つからずあせってしまい、いろいろな業界を受け、一次面接にも進めないところが20社はありました。
周囲の友人が内定を出していくなか重圧もありましたが、みずほ銀行から内定もらうことができました。
銀行が第一志望というわけではありませんでしたが、いろいろな業界と関わることのできる業種で、東大生の就職先として“安パイ”だということもありましたね」
世間から見れば、エリート街道を着々と歩み始めた矢内さんですが、“挫折”を味わうことになります。
「銀行では、取引のある企業を相手にする法人営業の担当になりましたが、最初の3年は何もできませんでした。
失敗してはいけないという思いが強すぎて、先輩や上司にわからないことを聞くことすらできない状況だったのです。
受験勉強などでは失敗しないことが当たり前で、質問やミスを極度に恐れていたからだと思います」
新しく創りあげていく仕事が向いている
しかしその後、新規開拓を担当する部署に異動すると、矢内さんは一転。
「この部署はとにかく自分から動かないと仕事にならず、1日に何十件も営業電話をかけることもありましたが、とても楽しくなりました。
営業成績で全国上位に入る実績も残すこができたので、私は決められことをこなすより、新しく創りあげていく仕事が向いていることに気づきましたね。
後に副業や起業をするきっかけになりました」
その後、別企業に1年間出向する社内公募で、大手化粧品メーカーで働くことになった矢内さん。
「マーケティング部などに在籍して、いい経験となりました。
女性が多く女性に合わせた働き方が新鮮で、これまでの対企業目線での仕事が個人や消費者向けになり、とても勉強になりました」
キャリアは積めるがプライベートが…
銀行に戻った当時、27歳の矢内さんは中小企業担当になりましたが、ライフプランに頭を悩ませることになります。
「そのころは海外勤務を希望していて、30歳くらいで転勤できそうでした。
ただ、5年間海外で働いたとして、キャリアを積むことはできますが、家族や結婚などプライベートの幅が狭まってしまうのではと思い始めたのです。
転職も考えたのですが、組織に属すより自分で稼ぐ力をつけたほうが将来的にはプラスと考え、コンサルなどの副業を始めました。
不動産投資はそのなかのひとつで、投資事業で大きな利益を出そうとは思っていなかったのですが…」
8000万円で土地を購入し2000万円以上の負債を
矢内さんは、2018年に発覚したスルガ銀行の不正融資問題に巻き込まれてしまいます。
「知人からアパート経営の不動産投資を勧められ、スルガ銀行から1億5000万円の融資を受けられることになりました。
メガバンク勤務という信用力もあり、多額のローンを組むことができたのです。
実際には8000万円で土地を購入して区画整備が進み、いよいよ建築という段階で、不正融資問題が発覚して、建築業者が手を引いてしまいました。
そのときは独立していたので、アパートを建てるための残りの融資を受けることができず、計画は頓挫。
土地の実際の価格は6000万円だったので、2~3000万円の負債を抱えることになりました」
こんな簡単に借金ができてしまう
「人はこんな大きな失敗が簡単にできてしまうのか、というのが感想でしたね。
不動産投資の知識は持っているつもりでしたが、よく調べもせず、何も勉強していなかったということです」
メンタルに不調をきたしそうになった矢内さんは、ある決断をします。
「自己破産をすることにしました。社会的信用を失ってクレジットカードは使えなくなりますが、日常生活にそこまで変化はありません。
これをYouTubeなどで発表すると“借りたものは返せ”などと批判も受けましたが、金額が大きいときはやむを得ないと思います。
幸い私は破産後も、コンサルの仕事を続けることができているので、すべてが終わるわけではありません。
自己破産を推奨するわけではありませんが、すべてを清算して、前向きに経済活動を始めるためには必要な制度だと思います」
チャレンジを恐れる人の背中を押す
そのような挫折を乗り越えて矢内さんは、こう考えています。
「チャレンジを恐れている人の背中を押してあげたいです。
たとえ失敗しても、日本にはさまざまなセーフティネットがあり、私のように生きていくことができます。
挑戦をしたうえでの失敗は仕方ないことだと思うので、お金に執着しすぎない生き方を提示していきたいです。
さらに、“自分が生きている世界だけが、世界ではない”ということを知ってもらいたいですね。
私は東大卒でメガバンクに入り、世の中の仕組みはある程度、理解していたつもりでしたが、まったく無知だということがわかりました。
だからこそ、死ぬまでにずっと勉強が必要だということも伝えていきたいです」
PROFILE 矢内 彩さん
やない・あや。株式会社La-Reine 代表取締役。1988年、兵庫県生まれ。東京大学卒。みずほ銀行退職後、独立。YouTubeチャンネル「東大卒・元銀行員が贈る【新時代の生き方講座】」でも活躍。
文/CHANTO WEB NEWS 写真提供/矢内 彩