三つ子が生まれる可能性は、0.0116%
(注1)と言われています。会社員のmaeda873さんが一卵性の三つ子を妊娠したのは、妊活をやめた2か月後のこと。ほとんどの人が知らない“三つ子の世界”とは──。出産を諦めかけた、2か月後に驚きの事実
不妊専門の産婦人科へ通っていたmaeda873さん。妊娠する難しさを感じ、1年半ほどで治療をやめてしまいました。
「それなのに通院をやめた翌々月に自然妊娠したんです。奇跡かと嬉しくて、妊娠検査薬に表示された薄い線を何度も見直しました」
8週目の外来診察で驚いたのは、一卵性の三つ子と判明したから。想像もしていない事態に、“実はドッキリなのでは!?”と疑うほどでした。
「まさか自分が三つ子を妊娠?と、とまどうばかりでした。診察室を出てから、待合室で呆然としていました」
無事に産める?育てられる?そんな不安が消えた瞬間
予想外の妊娠に、心配になる点が3つあったといいます。
1つ目は流産や死産の可能性の高さ。多胎妊娠は母体への負担が大きく、ハイリスクになります。
2つ目は、高齢出産。妊娠当時、maeda873さんは42歳。出産のリスクが高いことに加え、子どもたちが成人した時には、彼女も夫も62歳。子どもたちに何かあった時のサポートは難しくなるかもしれません。
3つ目は、経済的な不安。三つ子を育てるとなると、それだけ教育費もかかります。しかも、入学なども3人同時のため、負担が同時期に重なることになります。
「不安が多く、障がいの有無を確認する羊水検査だけでも受けようか、少しでも流産や死産のリスクを減らすため、胎児の数を減らす減胎手術をするべきか、夫とは何度も話し合いました。でも、命に関わる難しい問題です。自分たちだけでは答えは出せませんでした」
ハイリスクな妊娠のため、車で1時間ほどかかる大きな総合病院に転院。検診の際、医師におそるおそる、羊水検査や減胎手術ができるのかを質問してみました。
「すると、その病院では羊水検査や減胎手術はしない方針との話でした。それを聞いたとき、私は“三つ子を産む運命なんだな”と、抱えていた迷いがすうっと消えて、腹がくくれました。診察室を出たときのすがすがしさは、今でも鮮明に覚えています」
覚悟を決めたmaeda873さん。けれど今振り返っても、もしあの当時、何か別のきっかけがあったら、異なる決断を下していたかもしれないと感じます。
「娘たちは無事に出産でき、すくすくと元気に育っています。でも、妊娠判明時はどんな未来が待っているかわかりませんでした。リスクも高く、どうするべきか本当に悩みました。もしかしたら、今とは異なる現実を生きていた可能性もあったかもしれません」
ひどいつわりもなく、産休直前までフルタイム勤務
「元気な三つ子を産む」と決意したmaeda873さん。出産まで担当の医師と小さな目標を立て、一緒に1つひとつクリアしていきました。
「最初の目標は、流産と早産の境目の妊娠22週を乗りきること。次の目標は万が一早産しても、医学的に“生存率100%・後遺症なし95%”と言われる28週を目指すこと。最終目標は36週。満産期に到達する時期です」
不安の多い日々でしたが、名前を考えるときだけは、不思議と前向きで幸せな気持ちになれたといいます。
「これまでの人生で、三つ子を見たことさえありません。人生初が、自分の子どもたちなんて、どんな感じなのかなと思いをめぐらせました」
幸いなことにひどいつわりもなく、順調な妊婦生活。産休に入るギリギリまでフルタイム勤務しました。
妊娠24週6日まで働いて産休取得。産休前の腹囲は97センチ。単胎妊娠の臨月並みの大きさでした。25週目に入ってから2か月半、管理入院します。
あっという間の出産。感動よりも安堵が大きい
「入院したフロアにいたのは、気の合う妊婦さんばかり。いつも和気あいあいで、入院中は楽しく過ごせました。毎日励まし合えて心強かったです。24時間一緒に過ごした彼女たちは特別な存在。強い絆が生まれ、出産後も交流が続いています」
両親や夫、友人たちも次々とお見舞いに来る中、おなかの子たちは順調に育っていきました。そして、最終目標にしていた28週をクリア!
「このまま36週までもてば、予定帝王切開すると診断してもらいました。“ようやくここまできた”と、ほっとしました。管理入院して2か月経った頃にはお腹はさらに重くなり、数分あおむけになるだけで苦しいほど。眠る前に横を向くと寝返りが打てませんでした」
ところが、予定日の1か月前。35週5日目に陣痛がやってきます。予定帝王切開の2日前でした。すぐに緊急帝王切開で出産することになります。
「人生で初めての手術でしたが、事前にオペ室を見学できたこともあり、意外と落ち着いていました。帝王切開により、子どもたちは1分違いでスムーズに生まれてくれました」
事前に提出していたバースプランで希望していたのは“カンガルーケア”です。出産直後に赤ちゃんを胸元に抱き、スキンシップをとります。どの子も順番に、数秒だけ胸の上に置いてもらえました。
「スムーズな出産だったせいか実感がわかず、感動の涙などはとくにありませんでした。それよりも、子どもたちが想像以上に大きくて“どうやっておなかの中にいたの?”と、のんきに思っていました。どの子も2000グラム前後で、合計6110グラム。妊娠中、おなかが重くて当たり前ですよね」
想像もしなかった三つ子妊娠。さまざまなリスクを乗り越え無事に出産。maeda873さんは、ようやく娘たちに出会えたのです。
maeda873さん(ブログ https://ameblo.jp/maeda-873/)
文/齋田多恵 画像提供/maeda873さん ※上記は、maeda873さん個人の経験談・感想です。
(注1)日本多胎支援協会「三つ子や四つ子の出生確率について」https://jamba.or.jp/to_family/futago-knowledge/stats_and_facts_general1/