赤ちゃんや小さな子どものくしゃみ…実はアレルギー性鼻炎かもしれません。低年齢化が起こっている子どもの花粉症にも注意が必要です。
今回は、花粉症に関連する口腔アレルギー症候群や、最新治療である「舌下免疫療法」について、国立病院機構相模原病院臨床研究センターの海老澤元宏先生に教えてもらいました。
1歳から発症も。低年齢化する花粉症
スギやヒノキ花粉の飛ぶ季節の間だけ、外に出たときに顔が赤くなる、目のかゆみやくしゃみ、鼻水などの症状がみられたら、季節性アレルギー性鼻炎、つまり「花粉症」を疑ってよいでしょう。
花粉症とは、体内で異物として認識された花粉によってIgE抗体が作られ、再び体の中に侵入した花粉とIgE抗体が結びついたときに、化学伝達物質が分泌され、目や鼻の症状が現れます。
すでに、日本人の若い世代の半数がスギ花粉に対するIgE抗体を持っていますが、最近では、花粉症の子どもの増加と低年齢化が問題になっています。
最近は1歳から2歳の低年齢で花粉症を発症する子どもも多いです。まだ、一度か二度しか花粉の飛ぶ季節を経験していないのにも関わらずです。
では、花粉症の子どもはなぜ増え続けているのか。それは、戦後日本の林業政策が関係しています。
大量に植樹されたスギやヒノキが成長し、春になると空気中に大量の花粉が舞う。それを浴びたり吸い込んだ子どもたちが次々と花粉症を発症しているのです。
交差反応を起こす「花粉症と果物」の意外な関係
花粉症がある場合は、「口腔アレルギー症候群」にも注意が必要です。
「交差反応」で起こる口腔アレルギー症候群
意外に思うかもしれませんが、ある種の花粉に含まれるタンパク質の一部と、特定の食べ物に含まれるタンパク質の形が似ていることから、アレルギー反応が起こることがあります。
それまで何もなかったのに、生の果物や野菜を食べると、口の中がかゆくなり、ヒリヒリと痛みを感じるようになった方もいるのではないでしょうか。
「花粉」と「果物や野菜」の組み合わせによるアレルギーは、「口腔アレルギー症候群」あるいは「花粉・食物アレルギー症候群」と呼ばれ、主に唇や舌、口の中、のどに痛みやかゆみ、むくみが起こります。
このように、アレルギーには、組み合わせによる「交差反応」というものもあるのです。
たとえば、8月から11月に最盛期を迎えるブタクサ花粉は、メロンやスイカなどウリ科の果物と交差反応を起こすことがわかっています。
北海道に分布するシラカバ花粉や本州ではハンノキ花粉は、バラ科のリンゴ、モモ、サクランボ、ナシなどさまざまな美味しい果物に対して反応するケースも。
ハンノキ花粉と言われてもピンと来ないと思いますが、スギやヒノキの花粉の時期に重複して飛んでいる花粉です。
加熱調理によって安全に食べられる
とはいえ、アレルゲンとなる果物や野菜は熱や消化に弱いため、加熱調理をすれば症状を起こさず安全に食べられることがほとんどです。
口腔粘膜だけに症状が現れるのも、胃腸で消化されてアレルゲンが分解されてしまうからです。
豆乳以外を除き、他の臓器が痛くなったりかゆくなったりすることは、ほとんどないので安心してください。
子どもの花粉症治療法の選択肢「舌下免疫療法」
子どもも、大人も含め、一度花粉症になってしまうと、免疫力が落ちてIgE抗体が作られにくくなる高齢期までの長い間付き合っていかなければいけません。
症状を抑えるためには、できるだけ花粉を浴びないようにしながら、抗ヒスタミンの飲み薬や、点鼻ステロイド薬を使うことが一般的です。
薬物治療で症状が抑えられていれば、必要ない場合もありますが、最近注目されているのが、根治を目指す“舌下免疫療法”です。
この治療方法は、スギの成分を含んだ錠剤をあえて体内に入れることで、体を慣れさせ、アレルギー症状を緩和していく目的があります。
以前は12歳以上が対象でしたが、2018年からは低年齢の子ども(目安は5歳以上)でも保険適用で治療を受けられるようになりました。
スギ花粉症はスギ花粉の飛散する時期は治療できず、6月から11月初旬頃までが治療開始できる時期。治療期間は3~5年行います。
ちなみに「舌下免疫治療法」はスギ花粉以外に、ダニによるアレルギー性鼻炎にも対応していて、こちらは一年を通していつでも治療を始めることが可能です。
必要に応じてアレルギー専門医の受診を
花粉症の予防としては、原因となる草木の花粉をできるだけ体の中に入れないことがとても重要です。
花粉の飛ぶ時期は、家に入る前に衣服をよく払う、洗濯物や布団を外に干さない、窓を開けない、花粉が飛ぶ草木に近づかせないように注意するとよいでしょう。
万が一、お子さんが花粉症を発症した場合は、どう付き合っていくかということも考えて行かなければなりません。
日本アレルギー学会では、アレルギー疾患に関して詳しい知識と経験を持つアレルギー専門医を認定しています。
また、厚生労働省と日本アレルギー学会が運営するアレルギーポータル(https://allergyportal.jp/facility/)では、専門医のいる病院を一覧にしていますので、必要に応じて専門医を受診して下さい。
PROFILE 海老澤元宏
取材・構成/仲宗根奈緒美