長引くコロナ禍、現在、2020年の一斉休校時ほどではないものの、子供たちが自由に外で遊べる場所や時間は限られています。
令和元年(2019年)にスポーツ庁が発表した「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」では、小・中学生の男女ともに結果は低下しており、なかでも小学生男子は過去最低の数値だったとされています。
また、運動やスポーツが「嫌い」または「やや嫌い」と答えた小学生は、男子6.6%、女子12.3%と少ない割合ながらも一定数存在します。
運動が嫌いな子は、なぜ嫌いになってしまうのでしょうか。また一度運動嫌いになった子が、運動やスポーツを好きになる方法はあるのか考えてみました。
子供が運動嫌いになる要因は?
上記の調査では、中学生になると運動やスポーツが「嫌い」「やや嫌い」が男子は10.8%、女子では20.9%と大幅に増えています。
なぜ成長とともに運動嫌いな子が増えていくのでしょうか?それには次のような可能性が考えられます。
- ドッジボール・マット運動・水泳・武道などの種目に「痛い・怖い」といったイメージがある
- 持久走など、その子の生まれつきの体力や身体能力よりも高いレベルの結果を求められる
- 足が遅いことや、球技や体操などが周りと比べてうまくできないことが恥ずかしい
- 団体競技で「自分が下手なせいでチームが負けた」と引け目を感じたり責められたりする
ここで言えることは、小学生や中学生では、運動やスポーツそのものが嫌いというよりは、「体育の授業」が嫌いと感じている子が多いのではないかということ。
小さいときは単に「苦手」だった運動が、上記のようなマイナスの体験を重ねることで「嫌い」に変化してしまっている可能性があります。
運動やスポーツが嫌いな子へのおすすめの働きかけ
運動に限らず、計算が苦手な子、歌が苦手な子、それぞれ得意・不得意や好き嫌いはあって当然です。
ただ、大人になってからのスポーツ習慣は健康維持のためにとても大切。できれば、得意ではないにせよ、身体を動かすのが楽しい・気持ちいいという感覚を持って成長してほしいですよね。
公益財団法人日本レクリエーション協会が全国の小学校の先生たちに聞き取り調査した資料によれば、運動が苦手な子への働きかけで多かったのは次の3つでした。
- 運動が苦手でも楽しめる運動遊びを紹介する
- 他の子に、仲間に誘うよう促す
- 大人も運動が苦手な子と一緒に遊ぶ
家庭での場合は「運動遊び」でなくても、輪投げやけん玉などの室内遊びや犬の散歩などでも良いですね。
また、スポーツや外遊びに誘っても、苦手意識があって「やりたくない」と言う子に対しては、「やってみないと分からないよ」と明るく伝える、「まずは見てみようか」と上手な子のようすを見てヒントを見つけるなどの声がけをしている先生が多いようです。
運動が苦手・嫌いな子には、いきなり高い目標を設定せず、スモールステップで1つずつ取り組むことが重要といわれます。
もちろん、子供が失敗したり、うまくできないときに笑ったりするのは親子でも禁物。
少しでも前進したら「すごい!」「やったね!」と一緒に喜ぶことも欠かせません。
「自分はどうせできないんだから…」と思っている時には、上達するためのアドバイスもなかなか耳に入らないものですが、「できたね!すごい!」という言葉のあとなら比較的すんなりと聞いてくれるはずです。
おわりに
現在公開されている最新の調査結果はコロナ流行前の令和元(2019)年のものですが、その後の休校や外出自粛要請によって身体を動かす機会や時間が減ったため、次回の調査ではさらに低い数字が出るのではないかと予想されています。
ただ、一時的に子供たちの体力が下がっても、運動やスポーツを「楽しい」と思えるなら、また自由に運動できるようになった時には体力も回復するはず。
親や周りの大人は、子供の「苦手」を「嫌い」にしてしまわないよう、楽しみながら身体を動かす習慣作りをサポートしていきたいですね。
文/高谷みえこ
参考/令和元年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果:スポーツ庁 https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1411922_00001.html