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こんにちは。メンズカウンセラーの中村カズノリです。

 

夫婦関係に問題を感じている読者の悩みの解決方法を探っていく本連載。今回の相談者は、外国人のパートナーと未就学児2人の4人で暮らす、ワーキングマザーのBさんです。

 

Bさんの相談内容

夫は英語圏の出身で、日本で英語の先生をしています。正規雇用ですが今は期限つきの契約のため、仕事をしながら論文を書き、契約延長の資格を得ようと頑張っています。

 

ただ、今勤務している学校がどうも夫と合わないようです。「単位さえ取れればいいや」と主体的に学ぶ意欲が感じられない教え子が多く、もともとは大好きな仕事だったのに、やりがいを見失ってしまっているみたい…。

 

そのせいで夫はいつも機嫌が悪く、家庭内の空気がピリピリしがちです。私に何かできることはあるのでしょうか。

 

仕事でストレスを抱える夫が家でフキハラ…妻に何ができるのか

コロナ禍で、ある程度の行動の制限が求められる昨今。そのうえパートナーは、母国の友人とは時差の関係で頻繁に電話もできず、日々悶々としているそうです。

 

昨年秋からは、通常の仕事に加えて資格取得のためのオンライン授業も受け始め、時間的にも精神的にも余裕がなくなっていたところへ、とどめのように持病が悪化。体調不良も重なってイライラしてしまっているよう。

 

やんちゃ盛りの子どもたちの騒ぐ声、とりわけ兄弟喧嘩の声が気に障るようで、すぐ「いい加減にしろ!」と怒るパートナー。それで子どもたちは萎縮してしまい、「ママ、ママ」とBさんにまとわりつくことが増えました。

 

パートナーは「みんなママが好きだから」とふて腐れつつも寂しそう。Bさんにも1人ポツンとしているパートナーがかわいそうに思えてしまうと言います。

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子どもたちに「パパにハグしておいで」と促してみるものの、どうにもぎこちない空気になってしまい、うまくいかないと悩むBさん。つい「あなたが不機嫌だから子どもに避けられるんだよ」なんて指摘してしまい、パートナーをますます落ち込ませてしまうこともあったそうです。

 

これについては、「正論をぶつけて一時はスッキリしても、状況が改善しないのなら意味がないと思うんです」とBさん。それが見えているというのは立派なことだと思います。

 

この「あなたがこうだからこうなるんだ」という、相手の行動を責めるようなフレーズは、男女を問わずグサッと傷つく言い方なんですよね。

 

僕自身の経験でも、他人の悩みを横からぶん取って、その人が勝手にイメージしている形に切りとり、「これのせいで苦しいんだと納得しなさい」と押しつけ直してくる…そんなやりとりがけっこうしんどかったのです。

 

ですので、Bさんには「そういうときは“他人軸”でなく“自分軸”で話すといいですよ」と伝えました。

自分の思いを伝える“自分軸”で意思疎通を図るのが大事

「あの人は何を考えているかわからなくて怖い」ということって珍しくないですよね。精神的に不安定なときは、その感覚が信頼できるはずの家族にも発生してしまうんです。

 

「自分が不甲斐ないせいで嫌われているのではないか」という不安から、まるで子どもの“試し行動”のように、わざと相手を困らせる言動をしてしまうという人もいます。

 

そんなとき、「あなたが具合悪そうで心配だよ、生きがいがないみたいに言われると私は悲しいよ」という具合に自分自身の感情を自己開示することで、相手が何を考えているかが見えて安心できる、という面があるんです。

 

それによって相手も、自分の気持ちと向き合うきっかけをつかめたりします。

 

これはおそらく「ミラーリング」の一種。人間は好意を持っている相手の行動を無意識に真似るという説です。俗に「自分が変われば相手も変わる」なんて言われているのは、シンプルに言えば、こういうことなのかなと思います。

言葉の壁があってもカウンセリングを受ける道はある

お話を聞く限り、パートナーは心身とも相当に疲弊している様子です。どこかでゆっくり休めるといいのですが、Bさんは「忙しくしているうちに休み方を忘れてしまったようなんです」と話します。

 

少しでも隙間時間ができると「何かやることがあったはず」とやるべきことを探しているというパートナー。多忙な中でも家事をこなしそうとしてくれるのはありがたいものの、それよりも体をいたわってほしいと話すBさん。その気持ちはよくわかります。

 

僕としては、パートナーにもカウンセリングを受けてもらうのがいちばんではないかと思います。

 

ただ、そこで問題になるのが言葉の壁です。パートナーは日常会話くらいはこなせますが、普段の家庭内のコミュニケーションは英語とのこと。日本語で自分の今の状況や気持ちを伝えるのはハードルが高く、英語で話せるカウンセラーはなかなかいないということもあって、気軽に人に相談できない状況だったといいます。

 

その話を聞いて、オンラインのカウンセラーを当たってみたところ、英語対応が可能な人を2、3人見つけたので、情報を共有しました。Bさんは喜んでくださり、パートナーにも伝えますとおっしゃっていました。

「私が解決してあげなくちゃ」という思い込みが自分も相手も苦しめる

Bさん自身はもともと楽観的で、モヤモヤを溜め込まないタイプ。今回やりとりをするうちに、徐々に声に明るさが感じられるようになったのが印象的でした。そこで、「この前カウンセラーと話してみたら気持ちがラクになったから、あなたもどう?」と、自分の体験として話してみてはどうかと提案しました。

 

「それいいですね!」と明るく答えつつ、「“私が解決してあげなくちゃ”と思い込みすぎないほうがいいんですよね…」とつぶやくBさん。これがすごく鋭くて、本質を突いていると思いました。

 

パートナーの問題はパートナー自身が向き合うしかありません。周りの人はもどかしくても結局待つしかない、ということは多いんです。それは忘れないでほしいと思います。

 

僕から見れば、異国で働きながらキャリアアップのために勉強しているパートナーも、そのパートナーを支えながら子育てと仕事を両立しているBさんも、ものすごく頑張っていると思います。

 

今はパートナーの職場環境を変えるために、ふたりで転職先を探しているとのことでしたが、これもしんどいなかでもより良い道を求めて努力している証なわけで、誰にでもできることではありません。

 

自身ではなかなかその素晴らしさに気づけていない様子ですが、まずはそれを認められたらいいのではないかなと思います。お互い褒め合って、良い方向に向かっていってほしいと願っています。

文/中村カズノリ イラスト/竹田匡志